旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
無理矢理ここまで連れてこられたことか。
今の今まで黙っていたことか。
手を離さないことか。
色々あるけれど、私は首を傾げて口を開いた。
「なにを?」
返事はない。
腕を握られた状況のまま、私は空を見上げた。
ヒル魔くんを直視するには距離が近すぎる気がしたから。
透き通る青、寒々しい風、重すぎる沈黙。
ただただ、ヒル魔くんの手だけが熱い。
私は一呼吸置いて口を開いた。
「ヒル魔くん、最京大に行くんでしょう」
視線が彷徨う。
「あんまりご飯ちゃんと食べてないんだってね」
言葉が上滑りする。
「前より人を威嚇しなくなったのはいいことだわ」
視界の中に、嫌でも入ってくる金色。
「授業中ももっと参加する姿勢を見せてくれたら嬉しいんだけど」
ヒル魔くんが今、どんな顔をしているのか、見られない。
ぽつぽつと続けていたら、腕を握る力が弱まった。
離れる。
手が。
慌てて視線をヒル魔くんに向けたら、なんだか凄く嬉しそうにニヤニヤ笑っている。
見慣れた顔だ。と、同時に苛立ちを覚える。
「・・・何、ッ!」
再び手に力が入る。ぎり、と音がしそうに。
自然に眉が寄る。じわりと涙が浮かんでくる。
低くヒル魔くんが笑う。楽しげに。人の気も知らないで。
「離せ、って言わねぇのか?」
痛い。痛い。痛い。離して欲しい。こんなこと、やめて欲しい。
でも。それでも言えない。
「負けず嫌いだなァ」
「違、う」
からかうような声にさえ、聞き逃さないように耳をそばだててしまう。
だって。この距離は、本当に―――久しぶりで。
部活は本当にすごいわ。
理由もなく側にいられたんだもの。
部活がなくなって、クラスも違って、話す機会なんてなくて。
でも、ムサシくんとも栗田くんとも雪光くんとも話せるの。
だからヒル魔くんのこと、結構知ることができた。
でもヒル魔くんとだけ、直接話せないの。
わざわざ話すようなこともないんだもの。
遠いの。凄く遠いわ、ヒル魔くん。
痛みとからかいから逃げようと、身体が無意識に後退る。
俯く私の頭上から、低い声がした。
近い。
「だが流石に行き過ぎだ」
「痛い! え、何」
ぐい、と腕を引かれて手を離される。
その代わりに目の前に緑のジャケット。
ヒル魔くんのガムの匂いがした。強烈なミント。冬には少し寒々しい。
というか、何でしょうこれは。なんで私、ヒル魔くんの腕の中にいるんでしょうか。
これ、抱きしめられているんでしょうか。
ナンデ。ドウシテ。
著しく思考能力が低下した私の頭はそんな単語がぐるぐる回っている。
とんでもない攻撃だ。私は為す術なく抱きしめられている。ああ、か弱い女の子のようだわ。
けれど、更にヒル魔くんは続けるのだ。
「好きだ」
「・・・・・・・・え」
今度こそ私は固まった。
フリーズって言うのよねこういうの。あの、パソコンがよくなるやつ。
私が触るとしょっちゅうそうなるのよね。繊細だから壊れやすいのよね。止まっちゃうのよね。
そうでもないと思っていたのだけれど、本当は繊細だったのかしら、私。
発見だわ。新しい私、素敵。いや素敵じゃないわ、今の状況。
落ち着いてよく考えましょう。
何にでも全力で挑むヒル魔くんのことだもの。
嫌がらせやからかいにも全力を出すに違いない。
そうに違いない。
「か、らかう・・・のは、やめて」
勝手に赤くなる顔も、震える声も隠しようがないから、どうにか堪えて言ってみたのだけれど。
「からかう?」
ヒル魔くんが訝しげな声を上げた。
この角度ではよく見えないけれど、きっと片眉を上げているに違いない。
じろ、と見下ろされた。
やだ、なにこの角度。今まで見たことないわ。
「意を決して告白した俺に対して随分な発言じゃねぇか」
「こ」
こくはく。ヒル魔くんが使うこくはくが『酷薄』なら納得できるけど、流れ的に違うわよね。
「返事は?」
「え?」
「Yesかはいで応えろ」
「それって否定がないじゃない! 何、当然の如く自分の要求が受け入れられると思ってる訳?!」
思わずまくし立てたら、ヒル魔くんはケケケとあの特徴的な笑い声を上げて私を更にきつく抱きしめた。
「・・・! ・・・!!」
顔が熱い。きっと私、真っ赤になってる。
けれどヒル魔くんはそれをからかうこともせず、ただ私をぎゅう、と強く抱きしめているのだ。
なにこれ。一体、なんなのこれ。
どうしてこんなことになってるの。
<続>
今の今まで黙っていたことか。
手を離さないことか。
色々あるけれど、私は首を傾げて口を開いた。
「なにを?」
返事はない。
腕を握られた状況のまま、私は空を見上げた。
ヒル魔くんを直視するには距離が近すぎる気がしたから。
透き通る青、寒々しい風、重すぎる沈黙。
ただただ、ヒル魔くんの手だけが熱い。
私は一呼吸置いて口を開いた。
「ヒル魔くん、最京大に行くんでしょう」
視線が彷徨う。
「あんまりご飯ちゃんと食べてないんだってね」
言葉が上滑りする。
「前より人を威嚇しなくなったのはいいことだわ」
視界の中に、嫌でも入ってくる金色。
「授業中ももっと参加する姿勢を見せてくれたら嬉しいんだけど」
ヒル魔くんが今、どんな顔をしているのか、見られない。
ぽつぽつと続けていたら、腕を握る力が弱まった。
離れる。
手が。
慌てて視線をヒル魔くんに向けたら、なんだか凄く嬉しそうにニヤニヤ笑っている。
見慣れた顔だ。と、同時に苛立ちを覚える。
「・・・何、ッ!」
再び手に力が入る。ぎり、と音がしそうに。
自然に眉が寄る。じわりと涙が浮かんでくる。
低くヒル魔くんが笑う。楽しげに。人の気も知らないで。
「離せ、って言わねぇのか?」
痛い。痛い。痛い。離して欲しい。こんなこと、やめて欲しい。
でも。それでも言えない。
「負けず嫌いだなァ」
「違、う」
からかうような声にさえ、聞き逃さないように耳をそばだててしまう。
だって。この距離は、本当に―――久しぶりで。
部活は本当にすごいわ。
理由もなく側にいられたんだもの。
部活がなくなって、クラスも違って、話す機会なんてなくて。
でも、ムサシくんとも栗田くんとも雪光くんとも話せるの。
だからヒル魔くんのこと、結構知ることができた。
でもヒル魔くんとだけ、直接話せないの。
わざわざ話すようなこともないんだもの。
遠いの。凄く遠いわ、ヒル魔くん。
痛みとからかいから逃げようと、身体が無意識に後退る。
俯く私の頭上から、低い声がした。
近い。
「だが流石に行き過ぎだ」
「痛い! え、何」
ぐい、と腕を引かれて手を離される。
その代わりに目の前に緑のジャケット。
ヒル魔くんのガムの匂いがした。強烈なミント。冬には少し寒々しい。
というか、何でしょうこれは。なんで私、ヒル魔くんの腕の中にいるんでしょうか。
これ、抱きしめられているんでしょうか。
ナンデ。ドウシテ。
著しく思考能力が低下した私の頭はそんな単語がぐるぐる回っている。
とんでもない攻撃だ。私は為す術なく抱きしめられている。ああ、か弱い女の子のようだわ。
けれど、更にヒル魔くんは続けるのだ。
「好きだ」
「・・・・・・・・え」
今度こそ私は固まった。
フリーズって言うのよねこういうの。あの、パソコンがよくなるやつ。
私が触るとしょっちゅうそうなるのよね。繊細だから壊れやすいのよね。止まっちゃうのよね。
そうでもないと思っていたのだけれど、本当は繊細だったのかしら、私。
発見だわ。新しい私、素敵。いや素敵じゃないわ、今の状況。
落ち着いてよく考えましょう。
何にでも全力で挑むヒル魔くんのことだもの。
嫌がらせやからかいにも全力を出すに違いない。
そうに違いない。
「か、らかう・・・のは、やめて」
勝手に赤くなる顔も、震える声も隠しようがないから、どうにか堪えて言ってみたのだけれど。
「からかう?」
ヒル魔くんが訝しげな声を上げた。
この角度ではよく見えないけれど、きっと片眉を上げているに違いない。
じろ、と見下ろされた。
やだ、なにこの角度。今まで見たことないわ。
「意を決して告白した俺に対して随分な発言じゃねぇか」
「こ」
こくはく。ヒル魔くんが使うこくはくが『酷薄』なら納得できるけど、流れ的に違うわよね。
「返事は?」
「え?」
「Yesかはいで応えろ」
「それって否定がないじゃない! 何、当然の如く自分の要求が受け入れられると思ってる訳?!」
思わずまくし立てたら、ヒル魔くんはケケケとあの特徴的な笑い声を上げて私を更にきつく抱きしめた。
「・・・! ・・・!!」
顔が熱い。きっと私、真っ赤になってる。
けれどヒル魔くんはそれをからかうこともせず、ただ私をぎゅう、と強く抱きしめているのだ。
なにこれ。一体、なんなのこれ。
どうしてこんなことになってるの。
<続>
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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