旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ヒル魔はちらりと靴を見た。
「この靴は一生履ける」
「一生・・・」
「テメェのは履けても一年ってとこだろ」
「まあ、うん」
毎日の通学ですり切れたり、革が伸びたりして履けなくなることが多い。
特に通学に使っているローファーは傷みやすいのだ。
「その他に何足持ってる? テメェは女だ、靴なんざ10足はくだらねぇだろうなァ」
「そんなには・・・」
まもりは数えてみるが、ざっと数えたらそんなに履かない靴を含めたら10足を超えてしまう。
「・・・あるかも」
「一足がその靴と同じ値段として」
ヒル魔の指がまもりのローファーを指す。
「それ掛ける10足、それだけで結構な値段じゃねぇのか。それも一年しか保たない」
「・・・」
「しかもそこには管理するための経費も掛かるわけだ。スペース然り、手入れのためのコスト然り」
「そうね」
「それが後何年続くと思ってんだ? しかも流行なんざ追ったら履けなくなるもんも多いだろ」
言い負かされそうな予感に、まもりは矛先を替えようと質問を挟む。
「じゃあヒル魔くんはそれ履ききり雀なの?」
「この他にも同じ物を二足持ってる」
「じゃあ仮に互いに80歳まで生きるとして計算したら、ヒル魔くんと私のかかる経費って同じくらいじゃない?」
「オヤ糞風紀委員としては肝心な点をお見逃しではないでしょうかね」
「何よ」
「その間、履きつぶされた靴の処分経費だ。材質ごとの再利用率考えたらテメェの方が圧倒的に分が悪ィだろ」
環境にも悪いですね、と言われてまもりはきつく眉を寄せた。
・・・確かに言い返せない。鉛をそのあたりにぶちまける彼に言われるのは甚だ心外ではあるのだけれど。
「それに金の多寡じゃねぇんだよ」
ヒル魔は僅かに眸を細めた。その表情が意外で、まもりは眉を解いて彼の次の言葉を待つ。
「最初からの履き心地も桁違いだ。一度履いたら判る」
「へえ」
「下手に合わない靴履いて足おかしくすんなら、今のうちから金出していい靴履くのも選択肢の一つ、ってことだ」
「ヒル魔くんが真っ当なことを言うとなんだか変」
「言いやがるな糞マネ。将来外反母趾で泣いても知らねぇぞ」
「余計なお世話です」
つん、とそっぽを向いて見せながら、まもりは内心で彼の感覚に納得する部分も見つける。
価格だけ聞いてしまえばとんでもないけれど、生涯手を入れて愛用できる品物であればその価値は価格と見合ったものだと彼は思えるのだろう。
「気に入ったら長く使う派なのね、ヒル魔くんは」
「ちょっと違うなァ。長く付き合える物を気に入るんだ、俺は」
ケケケ、と笑う彼はコーヒーのおかわりを所望する。
まもりは空になったカップを受け取り、もしかしたら彼の身の回りにある物は、そうと知らないだけで結構な価格だったりして、と思い。
思わずカップの裏を確認しつつコーヒーメーカーの傍らへと歩く。
「それはただの備品だぞ」
「そうみたいね。今の言い分だと何か有名なメーカーのだったりするかと思ったけど」
「ここで使うもんは俺のじゃねぇだろ」
「好き勝手使ってる人とは思えない台詞ね」
軽口で応酬しながら新たなコーヒーを落とし始める。
「ああ、一つだけ例外があったな」
「え? 何かあった?」
まもりはぐるりと周囲を見渡す。彼女が知る限り、整理整頓されたその全てに、彼の私物は含まれない。
彼が日常持ち歩いているのはパソコンと銃くらいなもので、特に銃は到底備品とは呼べるべくもない。
「ねえ、何?」
「そのうち判るだろ」
「何が? んもう、勿体ぶっちゃって!」
まもりがむくれるのに彼は笑って言い添える。
「この中で一番使える奴だ」
「ふうん・・・?」
一体どれのことなのだろう、と小首を傾げるまもりからカップを受け取り、ヒル魔は口角を上げてコーヒーを嚥下した。
***
デス・マーチでも革靴って、と思ってていつか書こうと思った話でした。
鉤爪云々はノベルズで以前出てきた設定です。
「この靴は一生履ける」
「一生・・・」
「テメェのは履けても一年ってとこだろ」
「まあ、うん」
毎日の通学ですり切れたり、革が伸びたりして履けなくなることが多い。
特に通学に使っているローファーは傷みやすいのだ。
「その他に何足持ってる? テメェは女だ、靴なんざ10足はくだらねぇだろうなァ」
「そんなには・・・」
まもりは数えてみるが、ざっと数えたらそんなに履かない靴を含めたら10足を超えてしまう。
「・・・あるかも」
「一足がその靴と同じ値段として」
ヒル魔の指がまもりのローファーを指す。
「それ掛ける10足、それだけで結構な値段じゃねぇのか。それも一年しか保たない」
「・・・」
「しかもそこには管理するための経費も掛かるわけだ。スペース然り、手入れのためのコスト然り」
「そうね」
「それが後何年続くと思ってんだ? しかも流行なんざ追ったら履けなくなるもんも多いだろ」
言い負かされそうな予感に、まもりは矛先を替えようと質問を挟む。
「じゃあヒル魔くんはそれ履ききり雀なの?」
「この他にも同じ物を二足持ってる」
「じゃあ仮に互いに80歳まで生きるとして計算したら、ヒル魔くんと私のかかる経費って同じくらいじゃない?」
「オヤ糞風紀委員としては肝心な点をお見逃しではないでしょうかね」
「何よ」
「その間、履きつぶされた靴の処分経費だ。材質ごとの再利用率考えたらテメェの方が圧倒的に分が悪ィだろ」
環境にも悪いですね、と言われてまもりはきつく眉を寄せた。
・・・確かに言い返せない。鉛をそのあたりにぶちまける彼に言われるのは甚だ心外ではあるのだけれど。
「それに金の多寡じゃねぇんだよ」
ヒル魔は僅かに眸を細めた。その表情が意外で、まもりは眉を解いて彼の次の言葉を待つ。
「最初からの履き心地も桁違いだ。一度履いたら判る」
「へえ」
「下手に合わない靴履いて足おかしくすんなら、今のうちから金出していい靴履くのも選択肢の一つ、ってことだ」
「ヒル魔くんが真っ当なことを言うとなんだか変」
「言いやがるな糞マネ。将来外反母趾で泣いても知らねぇぞ」
「余計なお世話です」
つん、とそっぽを向いて見せながら、まもりは内心で彼の感覚に納得する部分も見つける。
価格だけ聞いてしまえばとんでもないけれど、生涯手を入れて愛用できる品物であればその価値は価格と見合ったものだと彼は思えるのだろう。
「気に入ったら長く使う派なのね、ヒル魔くんは」
「ちょっと違うなァ。長く付き合える物を気に入るんだ、俺は」
ケケケ、と笑う彼はコーヒーのおかわりを所望する。
まもりは空になったカップを受け取り、もしかしたら彼の身の回りにある物は、そうと知らないだけで結構な価格だったりして、と思い。
思わずカップの裏を確認しつつコーヒーメーカーの傍らへと歩く。
「それはただの備品だぞ」
「そうみたいね。今の言い分だと何か有名なメーカーのだったりするかと思ったけど」
「ここで使うもんは俺のじゃねぇだろ」
「好き勝手使ってる人とは思えない台詞ね」
軽口で応酬しながら新たなコーヒーを落とし始める。
「ああ、一つだけ例外があったな」
「え? 何かあった?」
まもりはぐるりと周囲を見渡す。彼女が知る限り、整理整頓されたその全てに、彼の私物は含まれない。
彼が日常持ち歩いているのはパソコンと銃くらいなもので、特に銃は到底備品とは呼べるべくもない。
「ねえ、何?」
「そのうち判るだろ」
「何が? んもう、勿体ぶっちゃって!」
まもりがむくれるのに彼は笑って言い添える。
「この中で一番使える奴だ」
「ふうん・・・?」
一体どれのことなのだろう、と小首を傾げるまもりからカップを受け取り、ヒル魔は口角を上げてコーヒーを嚥下した。
***
デス・マーチでも革靴って、と思ってていつか書こうと思った話でした。
鉤爪云々はノベルズで以前出てきた設定です。
PR
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カウンター
カテゴリー
プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
最古記事
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
アクセス解析
フリーエリア