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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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バッカナリア(下)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「ロゼ?」
赤でも白でもない。しかもかなり甘口と表示されている。
「うん」
アヤはこっくりと頷いた。
一人では当然酒など買えるはずもない。
間違いなくまもりと共に買いに行ったのだろうが、それにしては選択がおかしい気がする。
こんな甘い酒は飲まないのだと、まもりは重々知っているはずだ。
訝しげなヒル魔に気づいてアヤは手でしゃがむよう指示した。
どうやらキッチンで立ち回るまもりには聞かれたくない話なのだろう、と気づいて彼はアヤを抱き上げた。
形が違えど、内緒話が出来ればいいのだろうと促せば、その耳にアヤがこそりと話掛ける。
「あのね―――」
ヒル魔は少し目を瞠り、次いでにやりと笑った。


子供たちを寝かしつかせて、まもりはテーブルでパソコンをいじっているヒル魔の傍らに座る。
「出張お疲れ様!」
「おー」
彼はあっさりとパソコンをしまった。
「あら、もういいの?」
「もう終わった」
「ふうん。何か飲む?」
「アヤが寄越した奴、あれ出せ」
「え・・・もう飲むの?」
せっかくの娘からのバレンタインデープレゼントだろうに。
ワインにしたのは長く保管できるから、という理由もある。
「酒は酒だろ。さっさと飲むぞ」
「んもう、情緒のない!」
「飲まないで置いておく方がショック受けんぞ」
「・・・それも一理あるかも」
いいのかなぁ、と呟きながらまもりはワインボトルとグラスを持ってくる。
「ああ、テメェのグラスももってこい」
飲みきれねぇから付き合え、という言葉にまもりは素直に自らのグラスも取り出した。
ヒル魔はそれぞれのグラスにピンク色の液体を注いだ。
よく冷えたワインで満たされたグラスを軽く触れ合わせてまもりが笑う。
「アヤがね、この色がカワイイからこのワインがいい、って選んだのよ。あら美味しい」
「ホー」
口をつけると、やはりかなりの甘口だ。
舐めるように嚥下しながらちらりと伺えば、まもりの方はこの味が気に入ったようだった。
「珍しいわよね。アヤはあんまりピンクとか好きじゃないみたいなのに」
「そーか」
どちらかと言えば青とか黒とか、日本では昔から男の子用とされがちな色ばかり選ぶのだ。
だから今回の選択は母親として嬉しかった。
そうして、危惧していたがヒル魔も一応口をつけたし、と胸をなで下ろす。
そんな彼女のグラスに再びワインが注がれた。
「え? 私はもういいわよ・・・ヒル魔くんほとんど飲んでないんじゃない?」
「味見すりゃアヤには説明出来る。テメェが気に入ったんならもっと飲め」
「んもう!」
それでも言うほどに嫌がらず、まもりは注がれたワインに口をつけた。
「やっぱり子供だからお酒の味の意味も分かってないみたいで・・・ヒル魔くんが飲むなら辛口の方がいいわよって散々言ったの」
これじゃ私が飲んじゃうわね、と苦笑するまもりにヒル魔はにやりと口角をつり上げただけ。

『これなら、甘いからお母さんも飲むよね?』
ヒル魔が好むような酒を口にしないことを、アヤはちゃんと見抜いていたようだった。
晩酌に付き合わない理由はそればかりではないのだが、ごくごく希に酔った母親がヒル魔に殊の外甘えるようなそぶりだったのを記憶していたらしい。
『お母さんがこれ飲んだら、お父さんともっと仲良くしてくれるよね?』
そう囁いたアヤの瞳には純粋に期待があって。
今の段階でもう含みがあったら末恐ろしい―――そう思いつつも自らの少年時代を振り返ってヒル魔は低く喉の奥で笑う。

「? どうしたの」
段々ろれつが怪しくなってきた。相変わらずそうそう強くならねぇな、と内心呟きながらヒル魔はまもりの肩を抱き寄せる。
「アヤはやっぱり俺の娘だなぁと思ってな」
「ふうん?」
それからさも今思い出しました、という風情でヒル魔は声を上げる。
「ああ、出張先で土産買って来たぞ」
「ほんとう?!」
ぱ、と表情を明るくしたまもりに、ヒル魔はにやりと笑う。
「おー。ベッドの上に置いてある。見るか?」
「うん! え、なにーなにー?」
もはや足取りもおぼつかないまもりを自らにまといつかせて、ヒル魔は寝室の扉を開けた。


翌朝、目覚めたまもりは自らの格好のあまりの恥ずかしさに絶叫してヒル魔に散々笑われることになる。

***
バレンタインデー用のケーキをこれでもかと焼き続けていたら浮かんだ話。
毎年何かしら作るんです。今年はガトーショコラとオレンジケーキを作りました。
全て職場で配布するための物です。昔は生チョコとかも作ったけどねえ・・・。
別に義務じゃないんですが、人脈確保とか顔つなぎとかにはいいんですよ(大人の事情)。

バッカナリア:酒の神バックスを称える酒宴の踊りのこと(wiki参照)
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