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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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さきどりcongratulations!

(ヒルまも)
※高校三年生の冬。
 


+ + + + + + + + + +
すっかり日の落ちた冬の夜。
寒い寒いと呟いて、まもりは白い息を吐きながら隣を歩くヒル魔を見上げた。
「ヒル魔くんは、いつ行くの? 金曜? 土曜?」
関西にある最京大。ヒル魔がそこを志望校としていると知ったのはつい先日の話。
てっきりアメリカにでも留学するものと決めつけていたが、彼にはそのつもりがないのだと直接聞かされた。
「木曜」
ヒル魔はちらりとまもりを一瞥してそう口にした。
「あ、早く行くんだ」
受験日は来週の日曜だ。まもりは土曜日に関西入りするつもりだった。
「色々とやることがあるからなァ」
まもりは眉を寄せる。それにヒル魔は口角を上げた。
「脅迫じゃねぇよ」
「どうだか!」
まもりは肩をすくめる。
彼がまもりの言いたいことを奪い取るのが癖なのは、もうこの二年弱でよくよく知っていた。
「テメェは土曜日の昼に行くんだったな」
「そうよ」
彼に直接いつ行くと言った覚えもないが、どこぞで早々に聞きつけたのだろう。
別に聞かれて困る話でもなし、まもりはあっさりと肯定する。
「午前中にしろ」
「なんで?」
「付き合え」
ばさりと彼の手で振られるのは最京大のパンフレット。まもりはそれを見て脳裏に予定を浮かべた。
土曜日の午後にしたのには、午前中に行ってもホテルにチェックインできる時間帯まで間があり、それまで一人で過ごすには現地に不案内だからという理由があった。試験前に会場をチェックしておくのも大事だし、何よりヒル魔が一緒なら暇をもてあますこともないだろう。
「わかったわ。新幹線のチケットが取れたらの話だけど」
「おら」
「・・・判ってるつもりでも、時々その早業が怖くなるわ」
まもりの目の前には土曜日午前の新幹線指定席。しかもグリーン車。
「ただの指定席でいいのに」
「現地に着いた後の疲れ具合が違うんだよ」
「そうなの? ・・・あ、じゃあ私の分のチケット払い戻さないと」
「そのチケットと引き替えにしておいた」
「え?」
チケットは母親が購入してくれる予定だったはずだ。
「うちの母に会ったの?」
「快く了承してもらったぞ」
にたあ、と笑う顔は策略に満ちた悪魔の顔で、まもりはさあっと青ざめる。
「えっ、ちょ、ちょっと、お母さんに何したの!?」
慌ててまもりが取り出した携帯電話を、ヒル魔は笑いながら取り上げる。
「ちょ、もう!!」
「今朝だって別に変わった様子でもなかっただろ」
「そ、うだけど・・・いつ会ったの?」
「先週」
「先週!? お母さん一言も言ってなかったけど!?」
「別に口止めもしちゃいねぇぞ。聞いてみろ」
おら、と携帯電話を返されてまもりはそれとヒル魔の顔とを何度か見比べたが、少し考えて携帯電話をしまった。
「どうした? かけねぇのか?」
「とりあえず、帰ってからでいいわ」
今、彼を隣にして冷静に話が出来るとも思えない。
隣で何かしらの口出しをされて、更に混乱させられるかも。
帰宅して顔を見て話をした方が、余計なことに気を取られなくて済むと判断した。
「ホー」
ヒル魔は不意にまもりの右手を取った。
「なんで今日に限って手袋してねぇんだ」
今日は今期一番の冷え込みだとテレビでも散々言っていた。
規則正しく生活するまもりが聞き逃すはずもなかったのだが。
「今日、鈴音ちゃんが転んで破っちゃった、って言ってたから、貸したの」
転んだときに手を突いてしまい、怪我はしなかったけれどニットのミトンが破れた、と彼女は呟いていた。
ハイスピードで凍結した路面を滑ってはいけないと注意しつつも、そのままでは寒かろうと彼女に貸したのだ。
呆れたようにヒル魔は片眉を上げる。
「で、テメェは指先赤くしてなにやってんだ」
「ポケットにホッカイロ入ってるもの」
「でも糞風紀委員長様としては、ポケットに手ェ突っ込んで歩くのは校則違反だからしません、と」
「校則云々以前に危ないから、そんなことしないわ」
ヒル魔のポケットに突っ込まれた右手を見てまもりはつん、とそっぽを向いて見せた。
「相変わらず融通の利かねぇ女だなァ」
ヒル魔の手のひらの上で、赤くなった指先もそのままに居心地悪そうな彼女の手。
まもりは彼の手の温かさにどこか無条件に安堵しそうになりつつも、自由を取り戻そうと手を引き戻した。
が、その前にヒル魔が手のひらを握りこみ、そうして強引に引き寄せる。
「あっ、何!?」
ポケットに引き込まれたのは、ヒル魔の左手と、まもりの右手。
「ななな・・・何!? ちょっと、危ない、でしょ!?」
衝撃に言葉を途切れさせながら訴えたが、ヒル魔はにやにやと笑って頓着しない。
「んもう、何なのよ!」
こんな事を戯れにでもする男ではなかったのに、とまもりは戸惑う。
けれど予想以上に暖かな彼の手に包まれて、その心地よさにほだされそうになるのも事実。
結局歩みは止めないまま、二人は進んでいく。
「ねえヒル魔くん、大学でもアメフトやるんでしょ?」
「ったりめーだ」
「私も、入ろうかな」
それにヒル魔は怪訝そうに眉を寄せた。
「な、何? ダメとか言う?」
そうじゃねぇ、とヒル魔は小さく舌打ちする。
「今更何言ってやがる。テメェが入るのは決定事項だ」
「その前に受からないと」
「最京大程度でそんな心配してんじゃねぇよ」
関西の最高学府を相手によくもまあ、と呆れながらまもりは思わず笑ってしまう。
「何笑ってやがる」
「うん? あんまりにもね、ヒル魔くんは私が隣にいるんだと当たり前に決めてるから」
私が嫌だとか行かないとか言ったらどうするのよ、と笑うがヒル魔はふんと鼻を鳴らす。
「テメェに余所見なんざさせねぇよ」
「あら随分言うじゃない」
「第一、今余裕かましてんのはテメェだろ」
「何が?」
ヒル魔はぴたりと足を止めた。
街灯を背に、その表情が逆光になる。
表情が見えなくなると途端に不安になるのは何故だろう、と思いながらもまもりは小首を傾げて彼を見上げた。
「何・・・」
重ねて問おうとしたのに。
不意に彼が近づいたと思った次の瞬間、唇に、キス。
「・・・・・・」
絶句し目を見開くまもりに彼はすぐさま離れ、にたりと笑った。
僅かに変わった角度に、彼の顔が再び照らされる。
「やっぱりな。まっっっったくこれっぽっちも気づいちゃいねぇ」
糞ニブニブにもほどがある、と言葉ほどには忌々しくなさそうに、彼はまもりの頭を撫でた。
「な、・・・」
その指先に。見たこともない表情に。何よりも、触れた唇に。
想定外の事に完全に思考をフリーズさせたまもりを、ヒル魔は180度方向転換させる。
目の前は見慣れた我が家の扉だ。
「風邪ひくんじゃねぇぞ」
そう一言耳元に囁き、ヒル魔が去っても、まもりはしばらくその場で立ち尽くしていた。


帰宅が遅いと心配していたまもりの母が、真っ赤な顔をして玄関先に立ち尽くす彼女を見つけて声を上げるまで、あと僅か。


***
バレンタインデーネタを・・・と思いましたが適当なのが浮かばなかったので、せめてものあがきで甘い話にしてみました!
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