旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
帰宅するなり、まもりは着物を全て脱ぎ捨てさっさと洋服に着替えると、母親に挨拶の一つもなく早々に一人暮らしの部屋へと戻った。
部屋の灯りが付いていてもおかしいことはない。
「ただいま!!」
「おー。・・・なんだその面」
ひょこりと顔を出したヒル魔が怒りに震えるまもりを見て瞬く。
「なんでもないっ!!」
どう見ても何かがあった顔に、ヒル魔はふんと鼻を鳴らすとケトルを火に掛けた。
頭を冷やそうとでもいうのか、凄い勢いで顔を洗って戻ってきたまもりにヒル魔は紅茶を差し出す。
そのままリビングの椅子に座らされる。
「見合い相手は申し分ない奴だったんだろ」
椅子に座りながら口を開いた彼に、まもりは瞠目する。
「なんで知ってるの!?」
金切り声を上げたまもりに、ヒル魔は眉を寄せた。
「煩ェ」
ひらりと振られたのは脅迫手帳。また誰とも知れない奴隷が彼に情報をもたらしたのだろう。
「高学歴、高身長、家柄もよく性格も穏やかで優しくて両親を大事にする理想的な男性だっつって聞いたぞ」
まもりはヒル魔の淹れてくれた紅茶に口をつけて低く応じた。
「・・・そうよ」
見合いの席だったけれど、その誠実で優しい性格はすぐ知れた。
極端に母親に依存する様子もなかったし、本当に優良物件なのだろうと思えた。
優しい、とても優しい、いい人。
きっと、あの人と結婚したらとても優しくされるのだろうと、思う。
「だが」
ヒル魔は、こちらは自分用のコーヒーに口をつけて口角を上げる。
「テメェは戻ってきた」
まもりはカップの水面を見た。
濃いめに淹れた紅茶に、蜂蜜とミルクをたっぷり入れた、甘い甘いミルクティ。
ヒル魔自身は絶対に口をつけない、彼女好みの優しい飲み物。
「私がお見合いするって知ってて、行かせたの? もし相手に心動いて、って思わなかったの?」
ましてや彼が言うとおりとてもいい人だったのだ。まもりが傾かないという保証はなかった。
「昔のセナセナ言ってたころのテメェならあり得ただろうが」
ヒル魔は立ち上がり、冷蔵庫を探る。
「今のテメェにはねぇな」
「何を根拠に言うの?」
返事の代わりに差し出されたのは、真っ黒なケーキボックス。
思わず受け取ったまもりに、ヒル魔は口を開く。
「物足りなかっただろ」
至極楽しげに。
「テメェはもう、この先平坦な道なんざあり得ねぇって知ってっからな」
知らずにいれば、判らないままでいれば、選んだかも知れないその道。
平凡に、穏やかに、波風もなくただ平坦に。
「そんなの、つまらないじゃない」
かつての自分だったら絶対に言わなかった言葉が、今はごく当然のようにこぼれ落ちる。
「YA-HA-! その通り、人生はサプライズに溢れている」
どこか芝居がかった口調でヒル魔はケーキボックスを開くよう促す。
そこにはどうやったのか真っ黒な皮のシュークリームが一つ。
「イカスミとか・・・焦げてるわけじゃない、よね?」
「ごしゃごしゃ言ってる暇があったら食え」
それを取り出しまじまじと見つめるまもりに、ヒル魔はにやりと笑う。
「ああ、思い切り噛むと欠けるぞ」
「何が」
「歯」
「は?」
恐る恐る口をつけたシュークリームに隠されていたのは、ある程度予想していた通り、指輪で。
にやにやと見守っていたヒル魔に、まもりは指輪をつまみ上げた。
そうして、ぐりんと彼の方を向く。
盛大に眉を寄せて。
「食べ物に悪戯しちゃだめよ!」
「ポイントはそこじゃねぇだろ!」
糞、とぼやくヒル魔の口角はそれでも上がっていた。
***
まもりはセナのネタバレ前までは平凡を好みそうだけど、その後はヒル魔色に染まってればいいと思いますw
部屋の灯りが付いていてもおかしいことはない。
「ただいま!!」
「おー。・・・なんだその面」
ひょこりと顔を出したヒル魔が怒りに震えるまもりを見て瞬く。
「なんでもないっ!!」
どう見ても何かがあった顔に、ヒル魔はふんと鼻を鳴らすとケトルを火に掛けた。
頭を冷やそうとでもいうのか、凄い勢いで顔を洗って戻ってきたまもりにヒル魔は紅茶を差し出す。
そのままリビングの椅子に座らされる。
「見合い相手は申し分ない奴だったんだろ」
椅子に座りながら口を開いた彼に、まもりは瞠目する。
「なんで知ってるの!?」
金切り声を上げたまもりに、ヒル魔は眉を寄せた。
「煩ェ」
ひらりと振られたのは脅迫手帳。また誰とも知れない奴隷が彼に情報をもたらしたのだろう。
「高学歴、高身長、家柄もよく性格も穏やかで優しくて両親を大事にする理想的な男性だっつって聞いたぞ」
まもりはヒル魔の淹れてくれた紅茶に口をつけて低く応じた。
「・・・そうよ」
見合いの席だったけれど、その誠実で優しい性格はすぐ知れた。
極端に母親に依存する様子もなかったし、本当に優良物件なのだろうと思えた。
優しい、とても優しい、いい人。
きっと、あの人と結婚したらとても優しくされるのだろうと、思う。
「だが」
ヒル魔は、こちらは自分用のコーヒーに口をつけて口角を上げる。
「テメェは戻ってきた」
まもりはカップの水面を見た。
濃いめに淹れた紅茶に、蜂蜜とミルクをたっぷり入れた、甘い甘いミルクティ。
ヒル魔自身は絶対に口をつけない、彼女好みの優しい飲み物。
「私がお見合いするって知ってて、行かせたの? もし相手に心動いて、って思わなかったの?」
ましてや彼が言うとおりとてもいい人だったのだ。まもりが傾かないという保証はなかった。
「昔のセナセナ言ってたころのテメェならあり得ただろうが」
ヒル魔は立ち上がり、冷蔵庫を探る。
「今のテメェにはねぇな」
「何を根拠に言うの?」
返事の代わりに差し出されたのは、真っ黒なケーキボックス。
思わず受け取ったまもりに、ヒル魔は口を開く。
「物足りなかっただろ」
至極楽しげに。
「テメェはもう、この先平坦な道なんざあり得ねぇって知ってっからな」
知らずにいれば、判らないままでいれば、選んだかも知れないその道。
平凡に、穏やかに、波風もなくただ平坦に。
「そんなの、つまらないじゃない」
かつての自分だったら絶対に言わなかった言葉が、今はごく当然のようにこぼれ落ちる。
「YA-HA-! その通り、人生はサプライズに溢れている」
どこか芝居がかった口調でヒル魔はケーキボックスを開くよう促す。
そこにはどうやったのか真っ黒な皮のシュークリームが一つ。
「イカスミとか・・・焦げてるわけじゃない、よね?」
「ごしゃごしゃ言ってる暇があったら食え」
それを取り出しまじまじと見つめるまもりに、ヒル魔はにやりと笑う。
「ああ、思い切り噛むと欠けるぞ」
「何が」
「歯」
「は?」
恐る恐る口をつけたシュークリームに隠されていたのは、ある程度予想していた通り、指輪で。
にやにやと見守っていたヒル魔に、まもりは指輪をつまみ上げた。
そうして、ぐりんと彼の方を向く。
盛大に眉を寄せて。
「食べ物に悪戯しちゃだめよ!」
「ポイントはそこじゃねぇだろ!」
糞、とぼやくヒル魔の口角はそれでも上がっていた。
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まもりはセナのネタバレ前までは平凡を好みそうだけど、その後はヒル魔色に染まってればいいと思いますw
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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