旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
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まもりがそわそわと落ち着きなく時計を見ている。
それが面白くなくて、ヒル魔は眸を眇めた。
空は快晴。ここのところずっとぐずついていた天気がやっと落ち着いて久々に見た太陽。
しかも連休の初日だし、こんな日は出かけたいと思うのが人の常。
実際、まもりの準備は万端だ。
上着を羽織って、ヒル魔の手のひらに収まるほどの小さな鞄を手にすればもう出られる。
ただし、ヒル魔を置いて。
国内を旅行しているという高校時代の親友の一人、咲蘭が今日こちらにやってくると言うのだ。
生憎この後また別に予定が入っているとかで泊まってもいかないが、久しぶりに会えばつもる話もあるというもの。
一日丸ごとというわけでもなし、たまにはいいでしょ? と上目遣いで強請られて彼は渋々、本当に渋々了承したのだ。
自分で了承したものの、浮き足だった様子でめかし込むのが他人のためだと思うと、相手がたとえ女友達でも面白くない。
そんな訳で、まもりの上機嫌と彼の不機嫌さは見事に反比例している。
「じゃあそろそろ出かけるね」
「おー」
「じゃあさっきも言ったけど、お布団だけはお願いね」
ヒル魔はまもりが再三口にしている外の布団をちらりと伺った。
久しぶりの晴れだから、とまもりは親の敵のように早朝からずっと洗濯物に勤しんでいた。
朝早くに干した洗濯物は風の強さも相まって先ほど乾いたのだが、布団は干し場のスペースが足りず洗濯物を取り込み終えた後に並べたばかり。
彼女が出る前に取り込むのは些か早いため、留守番のヒル魔が適当な時間を見計らって取り込むように、という指示を受けていた。
「ふかふかのお布団で眠れるわよ!」
「アー、ハイハイ」
ヒル魔が適当な返事をしたことに少しむくれたが、携帯の着信に気づいてぱっと笑顔になる。
「今隣の駅だって! じゃあ、行ってくるわ」
鼻歌交じりで鞄を手に軽やかに出て行くまもりを、ヒル魔はふんと鼻を鳴らして立ち上がりもせず見送った。
「ただいまー!」
まもりは上機嫌で帰宅した。
咲蘭と久しぶりに心置きなく喋って、甘い物を食べて。
時間はあっという間に過ぎた。
また今度、と手を振る咲蘭を見送り、ヒル魔のためのコーヒー豆を買って鼻歌交じりで帰ってきたのだ。
「オカエリ」
「ヒル魔くん、お布団は?」
「そこ」
ヒル魔が長い指で示す先にどさっと纏まった布団の山。
取り込んでくれたことに感謝し、畳んでないことには目を瞑るしかないか、と半ば諦めて近寄ったまもりは。
たたみ直そうと布団に手を触れ、眉を寄せた。
「・・・ヒル魔くん、私、しばらくしたら取り込んで、って言ったわよね?」
「だから取り込んだろ」
ヒル魔はまもりが買ってきたコーヒー豆を検分していたが。
「いつ取り込んだの?」
「ア?」
まもりの声が急降下したのを察知し、そちらへ視線を向ける。
「ついさっき」
「・・・ついさっき?」
まもりは窓の外を見た。日はとうに暮れて、空気はしっとりと冷たい。
そんな空気を孕んで、布団は湿って重いのだ。ふかふか暖かなものとはほど遠い。
「私、ふかふかのお布団楽しみにしてたのに! これじゃダメじゃない!」
「ア? 十分柔らけぇだろうが」
「違うの! 干したてのお布団はもっとふかふかで、あったかいの! こんなに冷たくならないの!」
布団を手にきゃんきゃんと吠えるまもりに、ヒル魔はぴんと片眉を上げて近寄る。
「そんなに冷てぇ訳ねぇだろうが、氷点下の外に干してた訳じゃねぇんだぞ」
「日がある間に取り込んでおくのが普通なの! 干しっぱなしじゃ湿気っちゃうのよ!」
ほら、と触れてもヒル魔には差が判らない。
大体寝具にそれほど思い入れがないので、まもりがそれほどに思いを馳せる『ふかふかお布団』とやらが興味をそそらないのだ。
「別に死にゃしねぇよ」
「だぁから! 冷たいお布団なんて私は嫌なの!!」
きー! とヒステリックに怒るまもりは顔を紅潮させ、涙を浮かべてヒル魔を睨み付けている。
きゃんきゃんと吠えているその様は怖いどころか、その対極にあって。
「ホー。冷たい布団は嫌、なんだな?」
その声にまもりはぴたりと動きを止める。
「言っておくけど、今から新しいお布団買いに行くとか布団乾燥機を買うとかそういうのは必要ないから!」
慌ててまくし立てるその内容に、ヒル魔はにやりと口角を上げた。
「そんな糞まどろっこしいことはしねぇよ」
「そう?」
穿ち過ぎか、と。どこか安堵したように小首を傾げたまもりの隙を突いて。
「・・・?!」
ヒル魔はまもりを先ほど散々に冷たいとわめいた布団の山に押し倒した。
「ちょ、ちょっと?! 何?!」
「冷たい布団は嫌なんだろ」
その表情が獲物を前にしたケダモノのようなもので。
まもりはそれの意味することを察知し、さあっと青ざめた。
「ゆ、夕飯まだ準備してないわ! ね、ヒル魔くんもお腹空いたでしょ!?」
「先にこっちがいい」
ぐい、とまもりを抱き込み、逃れられないようにその手を取って、ヒル魔は耳朶に吹き込んだ。
「今からは俺に付き合え」
幸い連休だしな? そう低く笑うヒル魔に貪られる気配に逃れようと藻掻いたが、敵うはずもなく。
翌朝、昨日あれだけ洗濯したのにも関わらず、二人のベランダではシーツがはためき、布団が並べて干される光景が見られたのだった。
***
某サイトマスター様と一緒に美術館巡りをして満喫してさあ帰ろうという段階で「布団干しっぱなしなんです」「何ですと!?」という会話をして出来た話。お布団は干したてふかふか暖かいのがいいのであって、冷たいのはダメですと力説した鳥に対し、某様は「いや十分柔らかいんですよ」と必死のフォロー。そこからまもりちゃんは絶対ふかふかがいいって泣き怒るよね、という話になっていくあたりに業の深さが伺えます(笑)
それが面白くなくて、ヒル魔は眸を眇めた。
空は快晴。ここのところずっとぐずついていた天気がやっと落ち着いて久々に見た太陽。
しかも連休の初日だし、こんな日は出かけたいと思うのが人の常。
実際、まもりの準備は万端だ。
上着を羽織って、ヒル魔の手のひらに収まるほどの小さな鞄を手にすればもう出られる。
ただし、ヒル魔を置いて。
国内を旅行しているという高校時代の親友の一人、咲蘭が今日こちらにやってくると言うのだ。
生憎この後また別に予定が入っているとかで泊まってもいかないが、久しぶりに会えばつもる話もあるというもの。
一日丸ごとというわけでもなし、たまにはいいでしょ? と上目遣いで強請られて彼は渋々、本当に渋々了承したのだ。
自分で了承したものの、浮き足だった様子でめかし込むのが他人のためだと思うと、相手がたとえ女友達でも面白くない。
そんな訳で、まもりの上機嫌と彼の不機嫌さは見事に反比例している。
「じゃあそろそろ出かけるね」
「おー」
「じゃあさっきも言ったけど、お布団だけはお願いね」
ヒル魔はまもりが再三口にしている外の布団をちらりと伺った。
久しぶりの晴れだから、とまもりは親の敵のように早朝からずっと洗濯物に勤しんでいた。
朝早くに干した洗濯物は風の強さも相まって先ほど乾いたのだが、布団は干し場のスペースが足りず洗濯物を取り込み終えた後に並べたばかり。
彼女が出る前に取り込むのは些か早いため、留守番のヒル魔が適当な時間を見計らって取り込むように、という指示を受けていた。
「ふかふかのお布団で眠れるわよ!」
「アー、ハイハイ」
ヒル魔が適当な返事をしたことに少しむくれたが、携帯の着信に気づいてぱっと笑顔になる。
「今隣の駅だって! じゃあ、行ってくるわ」
鼻歌交じりで鞄を手に軽やかに出て行くまもりを、ヒル魔はふんと鼻を鳴らして立ち上がりもせず見送った。
「ただいまー!」
まもりは上機嫌で帰宅した。
咲蘭と久しぶりに心置きなく喋って、甘い物を食べて。
時間はあっという間に過ぎた。
また今度、と手を振る咲蘭を見送り、ヒル魔のためのコーヒー豆を買って鼻歌交じりで帰ってきたのだ。
「オカエリ」
「ヒル魔くん、お布団は?」
「そこ」
ヒル魔が長い指で示す先にどさっと纏まった布団の山。
取り込んでくれたことに感謝し、畳んでないことには目を瞑るしかないか、と半ば諦めて近寄ったまもりは。
たたみ直そうと布団に手を触れ、眉を寄せた。
「・・・ヒル魔くん、私、しばらくしたら取り込んで、って言ったわよね?」
「だから取り込んだろ」
ヒル魔はまもりが買ってきたコーヒー豆を検分していたが。
「いつ取り込んだの?」
「ア?」
まもりの声が急降下したのを察知し、そちらへ視線を向ける。
「ついさっき」
「・・・ついさっき?」
まもりは窓の外を見た。日はとうに暮れて、空気はしっとりと冷たい。
そんな空気を孕んで、布団は湿って重いのだ。ふかふか暖かなものとはほど遠い。
「私、ふかふかのお布団楽しみにしてたのに! これじゃダメじゃない!」
「ア? 十分柔らけぇだろうが」
「違うの! 干したてのお布団はもっとふかふかで、あったかいの! こんなに冷たくならないの!」
布団を手にきゃんきゃんと吠えるまもりに、ヒル魔はぴんと片眉を上げて近寄る。
「そんなに冷てぇ訳ねぇだろうが、氷点下の外に干してた訳じゃねぇんだぞ」
「日がある間に取り込んでおくのが普通なの! 干しっぱなしじゃ湿気っちゃうのよ!」
ほら、と触れてもヒル魔には差が判らない。
大体寝具にそれほど思い入れがないので、まもりがそれほどに思いを馳せる『ふかふかお布団』とやらが興味をそそらないのだ。
「別に死にゃしねぇよ」
「だぁから! 冷たいお布団なんて私は嫌なの!!」
きー! とヒステリックに怒るまもりは顔を紅潮させ、涙を浮かべてヒル魔を睨み付けている。
きゃんきゃんと吠えているその様は怖いどころか、その対極にあって。
「ホー。冷たい布団は嫌、なんだな?」
その声にまもりはぴたりと動きを止める。
「言っておくけど、今から新しいお布団買いに行くとか布団乾燥機を買うとかそういうのは必要ないから!」
慌ててまくし立てるその内容に、ヒル魔はにやりと口角を上げた。
「そんな糞まどろっこしいことはしねぇよ」
「そう?」
穿ち過ぎか、と。どこか安堵したように小首を傾げたまもりの隙を突いて。
「・・・?!」
ヒル魔はまもりを先ほど散々に冷たいとわめいた布団の山に押し倒した。
「ちょ、ちょっと?! 何?!」
「冷たい布団は嫌なんだろ」
その表情が獲物を前にしたケダモノのようなもので。
まもりはそれの意味することを察知し、さあっと青ざめた。
「ゆ、夕飯まだ準備してないわ! ね、ヒル魔くんもお腹空いたでしょ!?」
「先にこっちがいい」
ぐい、とまもりを抱き込み、逃れられないようにその手を取って、ヒル魔は耳朶に吹き込んだ。
「今からは俺に付き合え」
幸い連休だしな? そう低く笑うヒル魔に貪られる気配に逃れようと藻掻いたが、敵うはずもなく。
翌朝、昨日あれだけ洗濯したのにも関わらず、二人のベランダではシーツがはためき、布団が並べて干される光景が見られたのだった。
***
某サイトマスター様と一緒に美術館巡りをして満喫してさあ帰ろうという段階で「布団干しっぱなしなんです」「何ですと!?」という会話をして出来た話。お布団は干したてふかふか暖かいのがいいのであって、冷たいのはダメですと力説した鳥に対し、某様は「いや十分柔らかいんですよ」と必死のフォロー。そこからまもりちゃんは絶対ふかふかがいいって泣き怒るよね、という話になっていくあたりに業の深さが伺えます(笑)
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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