旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
姉兄が泥門だったから。
教師陣は神龍寺への推薦書を用意していたのに、当人には全くそのつもりはないとあっさりそれらを振り払った。
蛭魔護、高校一年生。
悪魔のコーチが待つ校庭に、彼がやってくる。
妥当な線である小早川美佳はともかく、それ以外で麻黄中から持ち上がりで入学してきた面子は、泥門高校には学力的に勿体ないくらいの能力の持ち主が揃っていた。データを参照して、そんな入部希望者を見たヒル魔はその一団だけを部室に集めて、ぐるりとその顔を見渡した。
突如集められた面々は、まだ不格好な制服に身を包んで、恐怖に怯えたように纏まっている。
「誰かに脅されたか」
「・・・いいえ」
「・・・そんなことは」
すっぱりと尋ねれば、歯切れ悪く、けれど視線をそらす面々に小さく舌打ちする。
本人たちの意志があるならともかく、脅して集めた面子が使えないというのは嫌と言うほど知っているのだ。
あのバカ息子、とヒル魔は眉間に皺を寄せた。
それが連中に対し、これ以上ない威圧になっていると判っていても解けそうにない。
「無理矢理集められたんなら、今からでも希望校に編入試験が受けられるようにしてやる」
それに部員たちはちらちらと互いを見つめる。
「他人は気にするな。自分がどうしたいのか決めろ」
「・・・でも」
弱みを握られているのか、弱々しい声にヒル魔はもう一度舌打ちした。
「蛭魔護が怖いか」
「!」
固有名詞が出たことに全員びくりと肩を震わせる。
「あいつの影響なら心配するな」
一つ呼吸を置く。
「俺の名前は蛭魔妖一。蛭魔護の父親だ」
『・・・!!??』
全員が飛び上がらんばかりに驚き、まじまじと彼を見つめた。
「テメェらが出て行ったところで、あいつには何もできねぇ。出て行くなら今だ」
ヒル魔はそれだけ告げると、椅子に座ってパソコンを立ち上げた。
関知せず、というスタイルになった彼の前では生徒たちが顔を寄せ合ってひそひそと話し合っている。
「・・・あの、ヒル魔コーチ」
「ア?」
顔を上げれば、そこにはひょろりとのっぽの生徒が立っている。
眼鏡を掛けていかにも運動音痴そうな外見の彼は、確かこの中で一番勉強が出来たはずだ。
「僕、ヒル魔くんに脅されて来たわけではなくて、ヒル魔くんと一緒にプレーしたくて来たんです」
「あの、僕も」
おず、と手を挙げたのは中肉中背の取り立てて目立つ箇所のない生徒だ。けれど勉強はそこそこ出来たはず。
「一緒の高校に行けたら、もっと凄いプレーが出来るようになるんじゃないかって思ったんです」
それに同意を示し頷く生徒たち。怯えはどうやらヒル魔自身に対してか、と気づく。
髪の毛も立ててないのに怯えられるとは、と己の顔の造作を意識の外に置いてヒル魔は嘆息した。
「テメェらの意志で集まったことに間違いねぇんだな?」
「はい」
「そうです」
それでもどこか流れる視線。
引っかかりを感じたヒル魔は、その原因を探ろうとしたが判らずじまい。
一体何があったのか。
護に聞いても絶対に真っ当に答えるはずがないので、ヒル魔は早々にグラウンドを走り回る小早川美佳を呼び止めた。
「何? おじさん」
「グラウンドではコーチと呼べ」
「はーい。なんでしょうコーチ」
おどけた風なのは母親譲りらしい。それでも口調を改めた彼に問う。
「テメェら、護に脅されてねぇんなら何吹き込まれたんだ」
「え? 聞いてないんですか?」
きょとん、と美佳は瞬いた。
「泥門高校、今年随分綺麗な子ばっかり入ったじゃないですか。あの子たち目当てで来た奴も多いんですよ」
「・・・」
ヒル魔は手帳を取り出した。さすがに新入生で女生徒のデータは頭に入ってないのだ。
ただ先に用意しておいたインデックス、そこに並べた女生徒の顔写真は確かに整った顔が随分ある。
「護は女の子の扱いが上手いから、男連中はおこぼれを期待してんですよ。うまくいけばアメフト部を見に来た子もゲットできんじゃないか、って」
「・・・ホー」
ヒル魔は思わず額を抑えた。
確かに脅してないし、あからさまに釣ってる訳でもない。
そうではないが、女生徒たちに一体何を吹き込んだのかが恐ろしいところだ。
一体何股かけてやがる、あのバカ息子。
彼の内心を知らず、美佳は尋ねる。
「大体護が脅すってなんですか? 護はおじさんみたいな悪魔じゃないのに」
護の外面はまだこの幼なじみさえ謀っているようだ、とヒル魔は感心さえした。
美佳は決して愚鈍ではないのだ。言葉を飲み込んでヒル魔は手を振る。
「・・・そりゃおいおい判るだろうよ。もう行け」
「? はぁ。じゃあ走ってきまーす」
足の速さだけは天下一品の遺伝子を引き継いだだけある美佳の走りっぷりを見ながらも、ヒル魔の気分は晴れない。
今は剣道部をメインにし、主務業のみで顔を出すと言っていたあの腹黒バカ息子がこの先どうやってアメフト部を操るのか想像すると憂鬱になる。
コーチとして出来る限りの事はするが、奴は選手としてグラウンドを跋扈することも出来るのだ。
そうなった時にヒル魔であっても手出しは出来ない。
せめて彼に翻弄されすぎない程度に部員全員に実力はつけさせねぇとな、と半ば諦めに似た気分でヒル魔はマシンガンを持ち直したのだった。
***
そろそろヒルまも一家を先に展開させようとしたらずっと護のターンになってしまいました。
アヤは『魔女』妖介は『悪魔』護は『魔王』の名を持って泥門を席巻してしまうのです。
ここから泥門高校の『魔王』伝説が始まる!
実はあかりの方がもっと色々詳しく考えてるんですがね(笑)
教師陣は神龍寺への推薦書を用意していたのに、当人には全くそのつもりはないとあっさりそれらを振り払った。
蛭魔護、高校一年生。
悪魔のコーチが待つ校庭に、彼がやってくる。
妥当な線である小早川美佳はともかく、それ以外で麻黄中から持ち上がりで入学してきた面子は、泥門高校には学力的に勿体ないくらいの能力の持ち主が揃っていた。データを参照して、そんな入部希望者を見たヒル魔はその一団だけを部室に集めて、ぐるりとその顔を見渡した。
突如集められた面々は、まだ不格好な制服に身を包んで、恐怖に怯えたように纏まっている。
「誰かに脅されたか」
「・・・いいえ」
「・・・そんなことは」
すっぱりと尋ねれば、歯切れ悪く、けれど視線をそらす面々に小さく舌打ちする。
本人たちの意志があるならともかく、脅して集めた面子が使えないというのは嫌と言うほど知っているのだ。
あのバカ息子、とヒル魔は眉間に皺を寄せた。
それが連中に対し、これ以上ない威圧になっていると判っていても解けそうにない。
「無理矢理集められたんなら、今からでも希望校に編入試験が受けられるようにしてやる」
それに部員たちはちらちらと互いを見つめる。
「他人は気にするな。自分がどうしたいのか決めろ」
「・・・でも」
弱みを握られているのか、弱々しい声にヒル魔はもう一度舌打ちした。
「蛭魔護が怖いか」
「!」
固有名詞が出たことに全員びくりと肩を震わせる。
「あいつの影響なら心配するな」
一つ呼吸を置く。
「俺の名前は蛭魔妖一。蛭魔護の父親だ」
『・・・!!??』
全員が飛び上がらんばかりに驚き、まじまじと彼を見つめた。
「テメェらが出て行ったところで、あいつには何もできねぇ。出て行くなら今だ」
ヒル魔はそれだけ告げると、椅子に座ってパソコンを立ち上げた。
関知せず、というスタイルになった彼の前では生徒たちが顔を寄せ合ってひそひそと話し合っている。
「・・・あの、ヒル魔コーチ」
「ア?」
顔を上げれば、そこにはひょろりとのっぽの生徒が立っている。
眼鏡を掛けていかにも運動音痴そうな外見の彼は、確かこの中で一番勉強が出来たはずだ。
「僕、ヒル魔くんに脅されて来たわけではなくて、ヒル魔くんと一緒にプレーしたくて来たんです」
「あの、僕も」
おず、と手を挙げたのは中肉中背の取り立てて目立つ箇所のない生徒だ。けれど勉強はそこそこ出来たはず。
「一緒の高校に行けたら、もっと凄いプレーが出来るようになるんじゃないかって思ったんです」
それに同意を示し頷く生徒たち。怯えはどうやらヒル魔自身に対してか、と気づく。
髪の毛も立ててないのに怯えられるとは、と己の顔の造作を意識の外に置いてヒル魔は嘆息した。
「テメェらの意志で集まったことに間違いねぇんだな?」
「はい」
「そうです」
それでもどこか流れる視線。
引っかかりを感じたヒル魔は、その原因を探ろうとしたが判らずじまい。
一体何があったのか。
護に聞いても絶対に真っ当に答えるはずがないので、ヒル魔は早々にグラウンドを走り回る小早川美佳を呼び止めた。
「何? おじさん」
「グラウンドではコーチと呼べ」
「はーい。なんでしょうコーチ」
おどけた風なのは母親譲りらしい。それでも口調を改めた彼に問う。
「テメェら、護に脅されてねぇんなら何吹き込まれたんだ」
「え? 聞いてないんですか?」
きょとん、と美佳は瞬いた。
「泥門高校、今年随分綺麗な子ばっかり入ったじゃないですか。あの子たち目当てで来た奴も多いんですよ」
「・・・」
ヒル魔は手帳を取り出した。さすがに新入生で女生徒のデータは頭に入ってないのだ。
ただ先に用意しておいたインデックス、そこに並べた女生徒の顔写真は確かに整った顔が随分ある。
「護は女の子の扱いが上手いから、男連中はおこぼれを期待してんですよ。うまくいけばアメフト部を見に来た子もゲットできんじゃないか、って」
「・・・ホー」
ヒル魔は思わず額を抑えた。
確かに脅してないし、あからさまに釣ってる訳でもない。
そうではないが、女生徒たちに一体何を吹き込んだのかが恐ろしいところだ。
一体何股かけてやがる、あのバカ息子。
彼の内心を知らず、美佳は尋ねる。
「大体護が脅すってなんですか? 護はおじさんみたいな悪魔じゃないのに」
護の外面はまだこの幼なじみさえ謀っているようだ、とヒル魔は感心さえした。
美佳は決して愚鈍ではないのだ。言葉を飲み込んでヒル魔は手を振る。
「・・・そりゃおいおい判るだろうよ。もう行け」
「? はぁ。じゃあ走ってきまーす」
足の速さだけは天下一品の遺伝子を引き継いだだけある美佳の走りっぷりを見ながらも、ヒル魔の気分は晴れない。
今は剣道部をメインにし、主務業のみで顔を出すと言っていたあの腹黒バカ息子がこの先どうやってアメフト部を操るのか想像すると憂鬱になる。
コーチとして出来る限りの事はするが、奴は選手としてグラウンドを跋扈することも出来るのだ。
そうなった時にヒル魔であっても手出しは出来ない。
せめて彼に翻弄されすぎない程度に部員全員に実力はつけさせねぇとな、と半ば諦めに似た気分でヒル魔はマシンガンを持ち直したのだった。
***
そろそろヒルまも一家を先に展開させようとしたらずっと護のターンになってしまいました。
アヤは『魔女』妖介は『悪魔』護は『魔王』の名を持って泥門を席巻してしまうのです。
ここから泥門高校の『魔王』伝説が始まる!
実はあかりの方がもっと色々詳しく考えてるんですがね(笑)
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鳥(とり)
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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