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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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雑談

(第三者語り)
※暗いです。

+ + + + + + + + + +
私の友人の話なんですがね。
この友人がねえ・・・また、悪魔のような男だったんですよ。
私にとってはかけがえのない友人でしたが、彼が身内だと認めていない人にとっては悪魔でしたでしょうねえ。
見事な金髪を逆立てて、つり上がった眸と尖った耳を持って、そこまで裂けた唇と―――ああ、作り話じゃないんですよ本当に。
そういう男がいたのです。見た目も恐ろしい、中身も恐ろしい、そんな風に思われていた男が。
さてもう一人、こちらは天使のような女性がおりました。
私が友人と、その彼女と出会ったのは高校生の時分でしたね。
彼女はアメリカ人の血が四分の一混じっている、なんでしたかね・・・そうそう、クォーターと言ってました。
よくご存じですねえ。常識? そうですか。
彼女は天使というのが一番適切な、綺麗な人でした。見た目も、内面も。
そんな二人が出会って、一つの目標に向かって共に手を取り合って突き進んでいたのです。
そうして、目的は果たされました。夢を叶えたのです。
あなたはアメリカンフットボールをご存じですか? 私はその選手だったんですよ。
私の話はさておいて、彼らはとても仲むつまじく見えました。
ごく一般的に言われる思い思われて、という関係ではなく、切磋琢磨して高め合う関係といいますか。
馴れ合いなど許されないような、ある意味修験をしているような生活にも見えました。
修験です。しゅげん。簡単に言えば修行ですよ。
判りづらかったですか? すみませんね。
さて私たちはその後大学に進み、彼らは同じ学校に入ったのです。
高校から大学へ、それから社会へ。
ごく一般的な流れですね。順当に進めばそういう風になるでしょう。
悪魔のような友人は、元から誰かに仕えるような性格ではなかったので、自力で事業を展開し、成功を収めていました。
一方で天使のような彼女は、自らの夢だった保育士になり、嬉々として日々仕事に取り組んでいました。
二人の関係は友人と呼ぶにはあまりに近く、自然と男女の関係に至りました。
どこにでもある話です。どこでも、誰にでも起こりうる話です。
ただ、二人は強すぎた。
どちらも自分の夢を追い、自分の目的を果たそうとする意志が強かった。
そうして、高めあうには性質の違う仕事と生活の軋轢が次第に二人の間に生まれていきました。
ただ、彼女は堪えることにも慣れていたのが災いしました。
少しずつ生まれた軋轢は、少しずつ心を痛めつけ、少し少しが降り積もって、それから心を守ろうとした身体が先に参ってしまったのです。
胃炎という病名がありますよね。ストレスなどで胃が荒れる病気です。
それが悪化すると炎症が潰瘍になります。潰瘍になると胃に穴が空いて血が噴き出します。
心に穴を開けないよう、身体に穴が空いてしまったんです。
とてもとても我慢強く、辛抱強かった彼女は、そうまでして抱え込んでいたことを誰にも相談できないまま吐血したんです。
また悪いことに、その時に彼女は貧血で意識を失い、倒れた際に頭を打ったんです。
悪魔のような友人が帰宅した時には、まるで地獄絵図のような状態だったことでしょう。
彼には直接は聞いていません。とても取り乱して聞ける状態ではなかったのです。
幸い発見が早かったので生命に別状はありませんでした。
けれど、彼女は最早限界でした。
先に身体が悲鳴を上げましたが、心ももう、いつ壊れてもおかしくない状態まで追い詰められていました。
生命の危機と言っても過言ではなかったのです。
きっと、それが原因だったのだと思います。

彼女は、悪魔のような友人のことだけ全て綺麗に忘れ去ってしまったのです。

本来であれば、忘れた記憶をどうにかして取り戻そうとするでしょう。事実、彼もそうしようとしました。
ですが、彼のことを忘れた彼女は、あっという間に健康を取り戻しました。
そうして、彼のことを非常に恐れたのです。
顔を見るだけで怯え、必死に逃げようとしました。
見た目に悪魔じみており、言動も行動もそれを裏切らない様子の彼は、何も知らない他人が見たら恐ろしいに違いありません。
事実彼女も高校入学当初に顔を合わせたばかりの頃は、外見通りの人間だと信じて疑わなかったのですから。
けれど彼はそれだけではないのだと、長い付き合いで知っている私たちには耐え難い状況でした。
けれどもしかしたら彼女は本能で、記憶を取り戻したが最後、今度こそ全てが壊れてしまうのだとどこかで悟っていたのかもしれません。
今となってはもうそれも判りません。
彼は嫌われたのなら好かれるように、恨まれたのなら許されるように、そうやって働きかけることも、最早顔を合わせることさえ出来なくなっていたのです。
彼女が記憶を失ってしばらくの後、彼が忽然と姿を消しました。
たまさか彼が失踪する直前に顔を合わせる機会があったのですが、あの時の彼の眸の昏さを忘れることが出来ません。
私は様々に苦しい場面を共にしたことがありましたが、そのどんな場面でもあんな絶望的な眸を見せたことはありませんでしたから。
愛憎は紙一重と申しますが、彼の場合もそうだったのかと振り返る度そう思います。
彼女の方ですか?
彼が姿を消してからしばらくして、彼女は別の男性と知り合い結婚し、幸せな生活を送っていました。
ある日突然、自宅マンションの屋上から飛び降るまでは。
彼女は遺書も言葉も残さず逝きました。
その原因が何であるか―――記憶を取り戻したかどうかは誰も知らないままです。


・・・そうそう、記憶を失った彼女のことを、あの時彼はこう呼んだのですよ。
『ひとごろし』と。


***
あえて誰が誰と喋っているかは明確にせず。
暗い話ブームただいま到来中。書くのはこういうのの方が好きです。
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