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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ブラックボックス(上)

(ヒルまも)
※大学生時代。他の作品とはつながりはありません。

+ + + + + + + + + +
突然に連れて行かれた先はホテルのラウンジ。
半ば強引に着せられた振り袖の裾を踏まないようにするのが精一杯で。
「こんにちは」
優しい声に顔を上げれば、そこには見たことのない男性と、その母親とおぼしき女性と、世話好きの叔母の姿。
隣の母を見れば、申し訳なさそうな曖昧な笑顔。
(・・・嵌められた)
かあっと頬が赤くなったのは、相手に見ほれたからでも、喜んだからでもない。


近頃、大学の側で一人暮らしを満喫中のまもりに、ことあるごとに両親が結婚の話を振ってくるようになった。
まだ考えてもいないと返せばとうとう逆ギレした母に『お母さんがいつまでも元気だと思ったら大間違いなんだから!』と叫ばれたのは先日の話。
大体結婚って、まだこの春大学を卒業する身としては早い話題ではないだろうか、とまもりは感じている。
世間一般では極端に若いかある程度年齢を重ねてからかの結婚がこのところの主流らしいけれど、当人同士がしたければすればいいと思うのはまもりだけじゃない。
実際、ほとんど同棲状態のヒル魔にしても、どういう意図かは分からないが一緒にいるのは嫌ではないのだろう、と感じる程度でそれ以上もそれ以下でもない。今後の話をしたことはないが、このままなんとなく続くのではないかと思っている。
つまりは、かなり曖昧な関係のまま現在に至っている。
そうしてつい先日、卒業式に着る着物を買うか借りるかするための算段をしに実家に戻ってきたわけだが。


相手の男性は年齢的にも見た目にも問題のない、どうみてもお見合いが必要な感じではなかった。
ただ、聞けば職場が完全に男性ばかりで女性との縁がなく、学生時代も学部的に男性ばかりで知り合う切っ掛けがなかったとか。
聞いてもいないのに隣の叔母が立て板に水の如く話し続けている。
「まもりちゃんもねえ、どうにも前々から彼氏が出来ないって言ってたからこれは丁度いいと思って」
叔母の一言にまもりの笑顔が引きつる。
ちらりと隣の母を伺えば、目をそらしている。
まもりがヒル魔と付き合っていることを、母は勿論知っているわけだが。
(ヒル魔くんが相手じゃ結婚しないと思われたのね)
余計に腹立たしい、とまもりはやや乱暴な手つきでカップを持ち上げた。
着慣れない着物が息苦しくて仕方ない。
「ほら、少しお話したらどう?」
逆に少し黙ればいいのに、と舌打ちしたくなったまもりは慌てて打ち消した。
いけない、いけない。
とりあえず母や叔母には後で食ってかかるにしても、この目の前の青年やその母には罪がないのだ。
まもりは極力、感情が表に出ないように気をつけて口を開いた。

<続>
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