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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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バッカナリア(上)

(ヒルまも一家)
※『憧れの色』あたり。
 


+ + + + + + + + + +
一週間ほど家を空けていたヒル魔は、玄関を開けた途端に漂ってきた甘い匂いにげんなりと眉を寄せた。
これなら、もう一日出張を伸ばせば良かったと思っても後の祭り。
「例年の事とはいえ・・・本当に糞な行事だ」
畜生、と一人毒づくも、この日だけはと滅多にないお強請りをされては強く言えない。
なんだかんだ言って弱いのだ、彼も、妻にだけは。
とはいえ、当事者である妻は自らが最強であることなどその小さな爪の先ほどにも気づいてないだろう。
もしかしたらもう子供は気づいているかもしれないが。
「お父さんおかえりなさーい」
「おかえりなさーい」
ととと、と軽い足音を立てて子供たちがリビングから出迎える。
その後ろからまもりも顔を出した。
「おかえりなさい」
差し出される手に上着を渡しつつ、ヒル魔は足下に纏わり付く妖介の頭を撫でた。
「随分甘ェ匂いがするが・・・何作ったんだ?」
「あのね、クッキー!」
「甘くてたいへんらの」
くぐもった鼻声。
ヒル魔はその声の方向を向いた。
マスクをしているのはアヤ。
風邪か、と問えば首を振る。まもりが笑って補足した。
「ほら、アヤもあなたと一緒で甘い物嫌いでしょ? そのままじゃ辛いからってマスクを出してきたの」
「れも甘いにおいがする」
ふがふがと喋るアヤをちらりと見てヒル魔はまもりに耳打ちする。
「ガスマスクならいいだろうが、ただのマスクじゃ気休めだろ」
「その前に鼻にティッシュ詰めてたわよ」
一応見られたくないという乙女心なのだろうか。ヒル魔は思わず口角を上げる。
「まだ小学生のくせに、一丁前になァ」
今、彼が思わず吹き出したのだと判るのはまもりくらいだろう。
「あら。そんなとこで笑ってていいのかしら?」
彼女はヒル魔の上着を片付けながらアヤに声を掛ける。
「アヤは誰にあげたか、お父さんに教えてあげたら?」
「え」
途端にアヤの頬がマスクの上からでも赤くなったのが判った。
ヒル魔は嫌な予感にまさか、とまもりを見る。
「・・・まさかとは思うが」
「アヤちゃんはムサシさんにあげたんだよー」
その場で一人、空気をまだ読めないのか妖介が声を上げる。
「っ! ダメっ!」
にっこりと笑う彼の口を、アヤが慌ててふさぐがもう遅い。
「・・・ホー」
低く応じたヒル魔がどこからともなく火炎放射器を出したのを見て、まもりは驚くことも怒ることもなく、呆れて肩をすくめる。
「残念ながら、アヤが選んだプレゼントは数日前に日本に発送いたしました」
「しましたー」
「ムサシくんから届いたっていう連絡も来ました」
今喋った内容が全部過去形だったの気づかなかったの? と言われてヒル魔は声を上げた。
「ア!? じゃあこの匂いは何なんだ!」
「これ! 僕が友達にあげるの焼いたの」
個別に包まれたクッキーを鞄にしまう妖介が声を上げた。
ここはアメリカ、風習としては男が女にプレゼントやサプライズパーティーを仕掛ける日である。
「でも日本では逆なのよ、ってアヤに教えたらやりたいって。でもほら、アメリカからじゃ手作りのものは送れないし、だから二人で選んだ物を送ったの」
換気扇を回しても追いつかないわ、とまもりは窓を全開にして空気を入れ換える。
寒いが、幾分マシになった。
早々に窓を閉め、まもりは暖房調節に夕食の準備にと慌ただしい。
「でね、お父さんには別にあるの」
こっちに来て、と招くアヤについていくと、冷蔵庫から箱を取り出し彼に差し出した。
アヤの小さな腕にはかなり大きなそれを支えてやる。
「これあげる」
「ホー? 何だ?」
「うふふ。いいから開けてみて!」
はしゃぐ娘に追い立てられるように箱を受け取り、胸元から取り出したナイフで包装紙を切る。
普段なら包装紙などバラバラに破って解くところだが、期待に満ちた娘の視線の前ではかなりやりづらい。
姿を現したのは、ワインボトルだった。

<続>
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同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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