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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ラブリー・シュシュ

(ヒルまも)
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
とある休日。
自宅代わりのホテルの中でパソコンを覗き込んでいたヒル魔は、響いたドアホンに顔を上げた。
ここを訪れる人は数少ない。
身軽に立ち上がり扉を開けると、そこには大きな紙袋を下げたまもりがいた。
「こんにちは。ヒル魔くん、もうお昼食べた?」
「いや」
「そう思ってサンドイッチ買ってきたの。入ってもいい?」
笑顔でサンドイッチが入っているとおぼしき袋を持ち上げる彼女に、ヒル魔はするりと室内へ下がった。
無言で中にはいることを許可されたまもりが慣れた様子でその後に続く。
「お邪魔します」
ここには二人しかいないのだから挨拶の必要もないとヒル魔は常々考えているのだが、彼女はいつもそんな言葉を忘れない。
雑多な室内に相変わらずね、と呟きながら、定位置となっているベッドへと腰を下ろした。
「随分な大荷物じゃねぇか」
「うん。ちょっと友達と買い物行って来たの」
ルームサービスでコーヒーを注文したヒル魔がまもりの荷物を見てぴんと片眉を上げる。
サンドイッチの他に、あからさまに洋服とおぼしき大きな袋が二つ。
「カワイイワンピースがあってね、つい買っちゃった。あと、スカートとカットソーとカーディガンと・・・」
嬉々としてその品物を取り出すまもりに、ヒル魔はケッと小さく笑う。
「テメェの身体は一つなのに、随分と買い込みマシタネェ」
「いいじゃない、かわいかったんだもん」
ベッドに広げられるそれらはヒル魔の目には随分小さく映った。
「サイズが合わねぇんじゃねぇか?」
「え? ちゃんと試着したわよ」
「ホー? 最近この辺に随分肉が付いた気がしたんデスガ?」
ヒル魔が再び鳴ったドアホンに立ち上がる際、まもりの脇腹をつつく。
「ヒッ、ヒル魔くん! なによそれ!!」
かあっと頬を染めたまもりに高笑いを残しながら、ヒル魔は持ってこさせたコーヒーを受け取るべく扉を開ける。
上機嫌なヒル魔に対し、青ざめた顔のホテルマンは冷や汗を浮かべながらカップを差し出したのだった。

まもりの差し入れであるサンドイッチを食べ終えたヒル魔の姿をまじまじと見ていたまもりが嘆息する。
「ヒル魔くんは細いわよねー」
「ア?」
眉を寄せるヒル魔に、まもりはじろじろと彼の腰を見る。
「ウエストなんて私と同じくらいなんじゃないの? 全然肉ないし」
「アホか」
「失敬な!」
まもりはキッと視線を向ける。
「どっちがだ。男にそりゃねぇだろ」
心底呆れるヒル魔に、まもりは思いついて買ってきたばかりのスカートをぐいっと押しつけた。
「それだけ細ければ、絶対これ入るわよ! 穿いてみて!」
「入るわけねぇだろ!」
「穿いてみてから言って!」
唐突に勃発したくだらない言い合いに、ヒル魔は眉を寄せる。
「テメェの服だろ。着る前に壊してどーすんだ」
「もう! そのズボンの上からでいいから穿いてみてってば!」
ムキになるまもりに何を言っても無駄だと理解したヒル魔はふんと鼻を鳴らし、ファスナーを開いたスカートに足を突っ込んだ。
「え」
「ほら見ろ」
スカートはウエストのファスナーをいっぱいに開いた状態でもヒル魔の腰まで到達せず太ももの途中で止まった。
ファスナーが悲鳴を上げているのを見て、まもりが慌ててそれを止める。
にやにやと笑いながらヒル魔はそれから足を抜いた。
「だから言っただろ」
「ええー・・・どうして?」
「男と女じゃ骨格が違ェだろうが」
むぎゅ、とまもりのウェストをヒル魔の手が掴んだ。大きな手がウェストをぐるりと一周しそうなほどだ。
ヒル魔にしてみれば肉が付いたなんてからかっていても、まもりの身体は細すぎると思うくらいだ。
豊満な胸があるからあまり見た目に感じないが、男の自分と比較してしまえばその差は歴然。
「むー。そっか・・・」
ぎゅう、とヒル魔の腰に抱きついてまもりは改めてその体格差を知る。
「細そうに見えても違うのね」
「糞デブなんかと並んだら余計にそう見えんだろ」
「肩もあるから、私の服じゃ上も入らないわよね」
「なんでンな服着せたがるんだ」
「カワイイ服着たら、ヒル魔くんもかわいくなるかなあって思っただけ」
「アァ?」
相変わらず突拍子もないまもりの言葉に、ヒル魔はその細い身体を抱き寄せ呆れた声を上げる。
「俺に女装させてなにが楽しいんだか」
女はままごとが好きだからナァ、というヒル魔に抱きついた格好で、まもりは彼の頭に手を伸ばす。
触れる髪は固められているが、そうかっちりと整えられているわけでもない。
半分くせ毛なのだと言われているが、それも頷ける。
意外と髪は長いのかも、と彼の頭に触れていたまもりは、自らの髪を彩っていたシュシュに触れた。
「ねえ、髪は結べる?」
「テメェのか?」
「ううん。ヒル魔くんの髪、意外と長いかもって思って」
ヒル魔を隣に座らせ、まもりはベッドに膝立ちになる。
「オイ」
「あ、やっぱり結構長いのね」
逆立っているから気にならないが、手のひらですくい上げてみれば頂点で小さく結える程には長さがある。
自らの髪からシュシュを抜き取り、ヒル魔の髪を小さく結ってみる。
「あは、カワイイ」
「・・・何がしてぇんだ」
上機嫌なまもりの意図が読めず、ヒル魔はその腰に腕を回して、珍しく見下ろす格好の彼女を見上げる。
「友達がね、ヒル魔くんは怖いからってすぐ言うの」
まもりはその時のことを思い返す。
『ヒル魔なんてこっちが何かやらかしたら全力で百倍返ししてくるんでしょ?』
『よくあんな悪魔みたいなヤツと一緒にいられるわよねー』
呆れたような友達の声に、まもりはそんなことないわよ、と言ったのだけれど。
恋人が友達に怖がられる現状に少なからず凹んだ。
こんなくだらないことに付き合ってくれる程には優しく、自分のシュシュをつけた髪もそのままに抱きしめてくれる彼。
「ヒル魔くんは優しいのに」
唇を尖らせて、拗ねたような声で呟くまもりに、ヒル魔は低く笑った。
「他の連中相手に優しかった覚えはねぇな」
「え・・・んっ」
ぐい、とまもりを引き寄せ、その唇を奪う。
角度を変え、音を立ててキスを続ける彼はそのまままもりを押し倒した。
「俺を好き勝手いじれるのなんざ、テメェだけだ。他の奴らにはそれが判らなくて残念だな、くらい言ってやれ」
―――だから存分に自惚れてろ。
言外に宥める響きに、まもりもゆるりと笑みを浮かべ。
再び降りてきた唇にそっとその長い睫を伏せたのだった。


***
クロネコヤマト様リクエスト『ヒル魔に女装もしくは髪を結ばせ遊ぶまもり→その後反撃される』でした。いやー・・・何この甘い二人(笑)書いてみたら思ったよりヒル魔さんが嫌がって逃げるというようなことがなかったので、イチャイチャしてもらいました。やっぱり男の人は細いように見えても厚みがありますからね。女の子のLサイズでも意外と入らないもんなんですよね~。リクエストありがとうございました!

クロネコヤマト様のみお持ち帰り可。
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