旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ざあざあと激しい音を立てて流れる黒美嵯川を見下ろす。
雨が降った翌日だから増水して、いつもは綺麗で穏やかな流れが嘘のように濁っている。
濡れた欄干に身体を預け、まもりはじっとそんな川面を見つめていた。
その肩を叩く人がいる。
振り返ればまもりが好きなお菓子屋のケーキボックスを持ったヒル魔が立っている。
その左手が躊躇いなくまもりの肩を抱く。
伸ばせば、その手を掴まれる。
軽やかに誘う彼を見つめれば、笑みを浮かべて見下ろしてくる。
他愛ない言葉を交わし、くだらない事に声を上げて笑う。
銃を持たず、髪も金色ではなく、逆立てず。
尖った牙も耳もなく。特徴的だったピアスも失せ。
制服を着崩すこともなく、アメフトばかりに傾倒しているわけでもない。
誰にも分け隔て無く優しく、人に害を与えることもなく穏やかに笑って。
―――けれど、その眸は冷たく沈んでいる。
柔らかい笑みに誤魔化して、どこまでも固く冷たい。
表面上は、ごく穏やかな。
幸せな、甘ったるいいくつもの『もしも』が連なった虚像。
毎日のようにやってくる騒動は何一つない、静かな世界。
けれど、それは。
しあわせなのだろうか?
「チッ!」
唐突に耳が拾い上げる、不機嫌そうな舌打ち。
「糞マネ!」
イライラと呼びつけるのはいつまで経っても賛同しかねるあだ名。
やや乱暴に右手で肩を引かれ、ようやっと視線を向ければそこには、眉間に皺を寄せ、笑みなど欠片もないヒル魔の姿。
髪は金髪で逆立ち、憎々しげに歪んだ口元からは尖った牙が覗く。
尖った耳に並ぶピアス。ケーキなどではなく銃を持ち、こちらを見下ろす眸ばかりは苛烈。
表面上は鋭く痛く冷たく見せかけているが、その奥底は誰よりも熱くて。
まもりは唇を綻ばせる。
「・・・やっぱり左利きのヒル魔くんは落ち着かないわ」
「ア?」
唐突に部室から姿を消した彼女を、平静を装いつつも彼なりに探したのだろう。
僅かに汗の臭いが漂う。
「ったく、時間が無駄になったじゃねぇか。さっさと戻るぞ」
不機嫌そうな顔を崩さないまま、けれど安堵したかのような空気を仄かに纏わせてヒル魔は踵を返す。
そんな彼の背を追うことなく見ていたまもりに、彼は足を止め、更に眉を寄せて視線を寄越した。
「手」
綻んだ唇が短く言葉を紡ぐ。
「ア?」
「繋いでくれたら帰る」
「アァ?!」
ビキッと青筋を立てたヒル魔は最早振り返らずさっさと歩いていってしまった。
今度こそまもりは声を上げて笑う。
もし、ここで折れて手を差し伸べるなら、彼は左手でまもりを捉えようとするだろう。
表面上でだけ優しい笑みを浮かべて、情熱の失せた眸で。
それはヒル魔ではない。
ヒル魔によく似た、全くの別人だろう。
ここで止まらない彼でいい。
振り返らず歩く彼が、いい。
ひとしきり笑った後、まもりはヒル魔の後を追って走り出す。
銃を抱える左手、緩やかに投げ出されるのは右手。
その右手を自ら掴むために。
***
タイトルは散々悩んだ挙げ句、wikiを頼って決めました。
雨が降った翌日だから増水して、いつもは綺麗で穏やかな流れが嘘のように濁っている。
濡れた欄干に身体を預け、まもりはじっとそんな川面を見つめていた。
その肩を叩く人がいる。
振り返ればまもりが好きなお菓子屋のケーキボックスを持ったヒル魔が立っている。
その左手が躊躇いなくまもりの肩を抱く。
伸ばせば、その手を掴まれる。
軽やかに誘う彼を見つめれば、笑みを浮かべて見下ろしてくる。
他愛ない言葉を交わし、くだらない事に声を上げて笑う。
銃を持たず、髪も金色ではなく、逆立てず。
尖った牙も耳もなく。特徴的だったピアスも失せ。
制服を着崩すこともなく、アメフトばかりに傾倒しているわけでもない。
誰にも分け隔て無く優しく、人に害を与えることもなく穏やかに笑って。
―――けれど、その眸は冷たく沈んでいる。
柔らかい笑みに誤魔化して、どこまでも固く冷たい。
表面上は、ごく穏やかな。
幸せな、甘ったるいいくつもの『もしも』が連なった虚像。
毎日のようにやってくる騒動は何一つない、静かな世界。
けれど、それは。
しあわせなのだろうか?
「チッ!」
唐突に耳が拾い上げる、不機嫌そうな舌打ち。
「糞マネ!」
イライラと呼びつけるのはいつまで経っても賛同しかねるあだ名。
やや乱暴に右手で肩を引かれ、ようやっと視線を向ければそこには、眉間に皺を寄せ、笑みなど欠片もないヒル魔の姿。
髪は金髪で逆立ち、憎々しげに歪んだ口元からは尖った牙が覗く。
尖った耳に並ぶピアス。ケーキなどではなく銃を持ち、こちらを見下ろす眸ばかりは苛烈。
表面上は鋭く痛く冷たく見せかけているが、その奥底は誰よりも熱くて。
まもりは唇を綻ばせる。
「・・・やっぱり左利きのヒル魔くんは落ち着かないわ」
「ア?」
唐突に部室から姿を消した彼女を、平静を装いつつも彼なりに探したのだろう。
僅かに汗の臭いが漂う。
「ったく、時間が無駄になったじゃねぇか。さっさと戻るぞ」
不機嫌そうな顔を崩さないまま、けれど安堵したかのような空気を仄かに纏わせてヒル魔は踵を返す。
そんな彼の背を追うことなく見ていたまもりに、彼は足を止め、更に眉を寄せて視線を寄越した。
「手」
綻んだ唇が短く言葉を紡ぐ。
「ア?」
「繋いでくれたら帰る」
「アァ?!」
ビキッと青筋を立てたヒル魔は最早振り返らずさっさと歩いていってしまった。
今度こそまもりは声を上げて笑う。
もし、ここで折れて手を差し伸べるなら、彼は左手でまもりを捉えようとするだろう。
表面上でだけ優しい笑みを浮かべて、情熱の失せた眸で。
それはヒル魔ではない。
ヒル魔によく似た、全くの別人だろう。
ここで止まらない彼でいい。
振り返らず歩く彼が、いい。
ひとしきり笑った後、まもりはヒル魔の後を追って走り出す。
銃を抱える左手、緩やかに投げ出されるのは右手。
その右手を自ら掴むために。
***
タイトルは散々悩んだ挙げ句、wikiを頼って決めました。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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よろしくお願いいたします。
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