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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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メイド・イン・スウィート(1)

(ヒルまもパロ)
※『言葉はなくても』の後くらい。


+ + + + + + + + + +
音もなく降り続く霧雨。
一見頼りないようで、その実僅かな風にも流れ、傘一本では遮れきれない細やかな水滴。
晩秋の夜、巨大な魔物が現れたという情報により、まもりたちの軍がかり出された。
ここでも当然ながら先陣を切るのは大将のヒル魔で。
まもりの綿密な計画により事前に『術』の罠を整備した箇所、そこへ誘導し、魔物を一気に仕留める。
魔物の出現は不定期で、まもりの持つあらゆるデータを調べても規則性は見いだせなかった。
全員、持ち場で当然の事ながら傘も差せず、ある程度の防水加工がされているだけの軍服で佇んでいた。
まもりもその場に立ちたかったが、今回は罠が『術』であり、その総括を一手に引き受けたために術師達と後方別隊で待機していた。
ヒル魔は静かに呼吸を繰り返す。
唇からたなびく白に、空気が大分冷え込んでいるのだと知る。
けれど。
いつかは判らないが確実にこの近辺に現れる魔物に対処するため、いつでも動けるようにしておかなければならない。
寒さに強ばらないように、意識して足の先から順々に神経を巡らせる。
筋肉を一瞬硬直させ、緩める。
そうやってごくごく小さな、けれど絶え間ない準備を重ねる。
ぴく、と彼の耳が僅かに動いた。
常人より大きな彼の耳は僅かな物音も聞き逃さない。
「来た」
低い囁きに、傍らにいた中将の栗田がランタンを持った手を上げる。
別部隊の戦闘にいるムサシがそれを察し、同じそれを振る。
ヒル魔はじっと耳を澄ませる。拾い上げる音から、おおよその距離を割り出す。
本体は夜闇に紛れて全く見えない。
「北北東、目視150m」
眸を眇め、動く物体を見ようとするがやはり見えず、音だけでは少々心許ない。
その時。
『龍雷!』
まもりの声と共に、空に龍の如く雷光がうねった。
相手を傷つけるのではなく、補足するために空を走った一瞬の光。
言葉通り瞬き一つの合間だったが、それだけで全員魔物の存在を把握できた。
三つの首、背に蝙蝠の羽、蛇の尾を持つ凶悪な犬型の魔物。
その深紅の瞳がじっとこちらを窺っていた。
「『領域』を越えて来ちゃったんだね」
栗田が呟く。魔物はこの世界より半歩地底にさしかかる次元に住んでいる。
人と魔物は基本的に『領域』と呼ばれる空間を越えないと互いに交わることはない。
けれど時折何かの拍子に『領域』にぽっかりと穴が開いてしまうことがあるため、『術師』がその『穴』を見つけたら塞ぐのを主な仕事としている。
本人の素質と深く関わる特殊能力『術』は習得が難しく、術師には一度なったら死ぬまで退役はない。
食いっぱぐれがないので人気はあるのだが、なれる人物が限られているので人数が少ないためだ。
だからまもりのような生来『術』を扱える人間は見つかり次第、出自家柄関係なくほぼ半強制的に術師として軍属となる。
そうして、個人の生活はほとんど握りつぶされてしまう。
だから姉崎家はまもりのその力を秘匿したまま研鑽させ、当人もある程度の役職になるまでは使わないようにしていた。
いざ術が使えるのだと知られても、まもり自身が有益な軍人であると理解されれば術師に変更させられることはないと。
だから誰もまもりが術を使えるなんて知らなかった。そう、ヒル魔以外は。
「よし」
ヒル魔が低い声で呟く。
「合図だ」
栗田は頷くと、合図となる照明弾に火を付けた。



まもりと術師達が準備した『罠』は魔物より100メートルほど西側だった。ヒル魔の背後にいた部隊と、向かって右に待機していた部隊が魔物の正面と右側から一気に襲いかかる。一方で左側にいた部隊からは銃を撃たせ、招き寄せるように動かす。
地に響くような咆哮が空気を切り裂いた。
正面にいる部隊員の何人かが鋭いかぎ爪で弾き飛ばされる。
そして先ほど視線の合ったヒル魔に向かって飛びかかろうとする魔物に、彼はライフル銃を構えた。
10センチの鉄板を打ち抜く威力のあるそれが、一つの頭の眉間に命中する。
おぞましい咆哮を上げてがっくりとうなだれるその首以外の二つが唸りを上げる。
ヒル魔は舌打ちした。
全て仕留めてもいいが、魔物の死骸は存在するだけで周囲に悪影響を及ぼす。
生かすにしても殺すにしても術師の力で元の次元に戻さねばならない。
大がかりになるそれは『罠』まで準備していたのだからそちらで済ませてしまいたい。
このままではこちらに飛びかかってきそうだ、と判断したヒル魔はライフル銃を置き、身体をずらした。

<続>
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