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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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メイド・イン・スウィート(2)



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「ヒル魔!?」
「糞デブ、このまま俺は西に走る。タイミング合わせて『罠』を発動する合図送れ」
「ちょ、ちょっと!」
焦る彼の声を背中で聞きながらヒル魔は斜め前方に足を進める。
魔物はヒル魔の方を向いている。狙っているのだ。
「こっちだ! 来やがれ糞犬野郎!!」
声を上げるヒル魔に呼応するように叫ぶ魔物。
左にいた部下達は急いでヒル魔の前に向かった。
魔物の移動速度によってはヒル魔がそのかぎ爪の一撃でやられてしまうかもしれない。
飛びかかってくる魔物の攻撃を器用にかわしつつ、ヒル魔は罠の位置を確認する。
後僅か、ヒル魔から見れば前方に走らなければならない。
けれど魔物との距離は迫っており、ギリギリよけきれるかどうか微妙なラインだった。
ヒル魔は手にした短銃で何度か打つが、剛健な毛皮に全て弾かれてしまう。
見れば先ほど仕留めたと思った首も頭を上げている。
どうやら気絶していただけのようだ。
ますます形勢が悪くなる。
巨大なかぎ爪がヒル魔を捌いてしまおうと振り下ろされる。
「大将!」
間一髪、セナがヒル魔を引き寄せる。勢い余って転がるが、無傷で済んだ。
そのままセナは起き上がり、持たされている爆弾を投げつけるが、コントロールが悪いために足下で破裂し、全く効かない。
「・・・っ」
歯がみする彼の手からヒル魔が爆弾を全て取り上げる。
「大将!?」
「糞チビ、テメェ投げる練習くらいしておけ!」
言いながら彼が投げつけた複数の爆弾はひとまとめになって緩やかに魔物の頭上を飛んでいく。
彼にしては大暴投、と思った次の瞬間。
構えた銃で、ヒル魔はそれを一つ撃ち抜いた。
「!!」
途端に響く轟音、連鎖して爆発していく爆弾。
たまらず後ずさった魔物の後ろ足が『罠』に掛かった。
「今だよ!!」
栗田の声と合図に、まもりは頷き術師に指示する。
術師たちの用意した『罠』に力が注がれ、次元への扉が開く。
すり鉢状に地に『穴』が空き、魔物を取り込んでいく。
魔物のかぎ爪が、掴むところを求めて空を切った。
けれど、何も掴むことはない。
意味のない咆哮を何度も響かせ、魔物は元いた次元へと戻っていく。
ずるずると巨体が吸い込まれ、すっかり姿が失せてようやく。
ヒル魔は滴る程濡れた髪を掻き上げ、部隊全員に作戦成功を告げた。


防水加工がされているとはいえ、隙間から入った霧雨に芯まで濡れそぼった部隊員達はぶるぶると震えながら火に当たる。
けれど霧雨は勢いを変えず炎の威力をじわじわと弱め続けている。
大体濡れながら火に当たるのは効率が悪い。
さっさと着替えてしまった方がいい。
「後方部隊! タオルもっと寄越せ!」
「は、はい!」
野営準備はしてあるとはいえ、テントもタオルも色々足りない。
それぞれの着替える様子を見ていたヒル魔の元にモン太が走り寄る。
「ヒル魔大将! はい、使って下さいっス!」
彼から差し出されたタオルを見て、ヒル魔はそれを持ち上げ、おもむろに彼の顔に投げつけた。
「わぷ!」
「テメェの世話終わってから人のこと考えろ。俺は行くところがある」
モン太もずぶぬれだった。
ヒル魔はにやりと笑ってみせると、後方部隊の術師がいるテントに向かった。
「どうだ」
まもりがヒル魔の声に振り返る。
「あ、大将。もうすぐ終わりますよ」
術師たちは六人がかりで穴を塞いでいた。
まもりはその様子を見守っていたのだ。
開くことの方が難しいので、塞ぐ方はまだ楽なのだという。
それでも術師たちは総力で取りかかっているように見えた。
「テメェはやらねぇのか」
「私はこの『術』は使えないんです」
まもりが生来から使える『術』とはいえ、『穴』に関する術は術師になってから習得できるものなのだ。
そうでなければ次元の移動を悪用する者がいるからだろう。
「それよりも、大将は着替えてませんね?」
胡乱な視線を向けられ、ヒル魔は肩をすくめる。
「着替えはこっちにあるんでな」
「あら、そうでした?」
まもりは首を傾げながら自らの荷物を見る。いつの間にか隣にはヒル魔のそれもちゃっかりと置いてあった。
「いつのまに」
呆れるまもりの手から鞄を受け取り、タオルと着替えを取り出す。
術師たちやまもりがいるが気にせずヒル魔はばさばさと着替え始めた。
さすがに寒い。
「・・・ほら、ちゃんと髪拭かないと風邪引きますよ?」
「ンな柔じゃねぇよ」
ヒル魔はにやにやと笑いながら着替え、おざなりに拭いただけの頭を振った。
ぴん、と立つ彼の髪に相変わらず不思議ね、と呟きながらまもりはヒル魔に声を掛ける。
「じゃあ、全員の点呼と怪我の有無の確認してきます」
「それは俺がやる。テメェは術師の側にいろ」
「でも」
濡れて寒かったのだろうから、ここで毛布にでもくるまっていればいい、そうまもりは言いたかったのだが。
「こっちで何があっても俺は『術』じゃ対処できねぇだろ。あっちで動く方がいい」
それはまもりとて同じだが、寒いから動いた方が、とも取れる発言に渋々頷いた。
「風邪引いたら笑いますからね」
「そりゃ是非見ないとなァ」
軽口を叩くヒル魔に眉を寄せるが、彼はケケケと笑って相手にしない。
するりと身軽に再び外へ出たヒル魔の背に、まもりは静かに嘆息した。

<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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