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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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メイド・イン・スウィート(4)



+ + + + + + + + + +
ヒル魔は驚くべき事に、高熱が出ているのをまもり以外の誰にも悟らせることなく歩いて帰宅した。
けれど、自宅に入った途端、気が抜けたのか大きく嘆息して動きを止める。
靴を脱ぐのも億劫そうだ。
「大丈夫? 妖一」
「・・・じゃ、ねぇな」
素直に状況を認める彼に、まもりは肩を貸す。
「歩けます?」
「そこまでじゃねぇ」
「その割には足下ふらついてますよ」
寝室までのさほど長くない道のりをゆっくり歩き、ベッドに腰掛ける。
「ほら、着替えて下さい」
「・・・」
ヒル魔はのろのろと軍服の金具を外す。ぼーっと焦点が合わない顔なんて、初めて見た。
まもりはバタバタと自らも着替える。
まだ汗を掻くには至ってないけれど外出帰りだ、手や顔を拭きたいだろう、と熱湯で濡らして絞った熱いタオルを用意する。
「妖一?」
着替え終えたか、と思って寝室を覗き込むと。
そこではベッドに背中を預け、顔を覆ったヒル魔の姿があった。
完全に着替えてもいない。
「ちょ・・・何やってるんです」
「・・・だるい」
熱のだるさに耐えきれなくなったヒル魔は着替えもせず倒れていたらしい。
呆れつつまもりは手にしていたタオルを渡そうとする。
「顔、拭きましょう?」
「拭け」
「え?」
「テメェが拭け」
まもりは目を点にする。普段は自分のことは絶対に自分でするヒル魔なのに。
じーっと期待するような視線に、まもりは内心目眩を覚えながらその顔を拭う。
「ん」
心地よさそうに眸を細める彼に、まもりも口角を上げる。
「手も、ね?」
「ん」
差し出される手は大きく、とても熱い。
拭ったタオルをベッドサイドに置くと、まもりはヒル魔の身体を引き起こした。
「・・・あ?」
「着替えてから寝ましょう? 行軍でもないのに軍服じゃ息苦しいでしょう」
「べつに、いい」
「よくないです!」
金具を外すまもりの様子を見ていたヒル魔は、そのままおもむろにまもりの肩に手を伸ばす。
「何・・・」
ぐい、と引き寄せられてまもりは抵抗しようとしたが、一瞬考えて大人しくそのまま唇を重ねた。
更に深く、と唇を割った舌が侵入しようとして。
「・・・っ!」
ヒル魔は顔を背け、激しく噎せた。
「・・・それだけ熱があってキスするなんて苦しいでしょうに」
呆れた口調で言われて、ヒル魔は恨めしげに見上げる。
「そんな顔で見たって、キスが辛いのは私のせいじゃないですよ?」
中断していた着替えをさせるべく軍服の金具を外し終え、上半身を全て脱がせてパジャマを着せる。
完全に意識が失せてからでは大変だな、と考えながらまもりは下半身に手を掛ける。
「おい?」
ベルトを外し、ファスナーを下ろされる。
かなりいい眺めなのだが、残念なことに熱が高すぎてその気にもなりはしない。
まもりが脱がせ易いように僅かに腰を浮かせたり足を上げたりと協力して、どうにか着替えは全て終わった。
「はい、じゃあ寝てていいですよ」
私は夕飯作りますから、と言われ、ヒル魔はまもりの手を引いた。
「え?」
「いくな」
「行くな、って・・・」
ぐい、と強引に抱き寄せられ、まもりは藻掻くが病人でも軍人、ふりほどけない。
ぎゅう、と胸に顔を埋めるように抱きつくその様子がこれ以上ないくらいに甘えていて、まもりは思わずその頭を撫でてしまった。
子供扱いこの上ない。けれどヒル魔はそれで安心したように眸を閉じる。
「妖一?」
やがて力の抜けた腕に、彼が眠ったのだと知る。
そっと見下ろせば、浅く呼吸をしながらも穏やかな眠りがそこにあった。
己の身体を静かに離し、そっと枕に彼の頭を下ろす。
身体を冷やさないように布団を掛け、暖房を付ける。
暖気が吹き出すのを確認し、まもりは静かに寝室を出た。
さあ、夕食の準備をしよう。
そしてあのだだっ子に薬を飲ませなければ。
まもりは鼻歌まで歌いながら台所へと向かった。

<続>
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