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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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メイド・イン・スウィート(3)



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そして。
翌日は報告書の作成のみで業務はほぼ終了となる。
既に昨日の時点であらかた書類処理も片づけていたまもりは、纏めた文書を持ってヒル魔の執務室へと向かった。
そう言えば今日は朝一緒に出勤したのを最後に、一度もまもりの執務室には来ていなかった。
珍しいな、とだけ考えてまもりは彼の部屋をノックする。
「入りますよ」
「おー」
短く応じる声はいつもの通り。中にはいると、まもりは違和感に眉を寄せた。
「どうした」
「書類が出来たので持ってきました」
「そうか」
椅子に座って書類処理をしていたらしいヒル魔に近寄る。
・・・珍しい光景だ。
ヒル魔は大概事務処理を面倒がるので、やるときはまもりの執務室に行ってほとんどを彼女にやらせている。
自分でこの席に座って処理するのは判子押すくらいだな、と豪語していたのは嘘じゃない。
大概ふらふらと官舎内を歩いているのに。
まもりはヒル魔に書類を渡そうとして、差し出されたその手に触れた。
僅かに触れ合ったソレが信じられないくらい熱く感じて、まもりは瞳を見開く。
「・・・ちょっと?! 大将、ね・・・」
「ッチ!」
声を上げようとしたその口を、ヒル魔の手のひらが塞ぐ。
やはり、熱い。
じろ、と見上げるとヒル魔は口をへの字にしてまもりを見下ろしていた。
その手を外し、まもりは口を開く。
「・・・やっぱりなったじゃないですか」
誰が聞きつけるか判らないから、肝心な一言を抜いて。
ヒル魔も眸を眇める。
「気のせいだ。仕事してりゃ治る」
見た目にはまったく不調を見せないヒル魔。けれど彼のその体温は異常だった。
よくよく見れば眸は僅かに潤んでいるし、目元も赤い。
何より動き回らないということは、立ち上がるのもやっとの状況なのだろう。
まもりは腕時計を見た。時刻は既に退庁時間に近づいている。
それをよくもまあ、この時間まで我慢したものだ。
幸い明日は休みが入っている。だから逆にヒル魔はここまで我慢してしまったのかもしれないけど。
「この書類、判子だけ押して下さい」
「おー」
ヒル魔はろくに見もせず、書類に判子を押す。
「で、こっちに来て下さい」
「あ?」
怪訝そうな声を上げるヒル魔に、まもりはにっこりと笑った。
目を見開く彼に言う。
「言いましたでしょ?」
風邪を引いたら笑う、という一言を思い出してヒル魔は眉を寄せる。
このまま帰らせるつもりか、と視線で問えばまもりは静かに首を振った。
「終業まで後僅かですから、今更一人で帰れとは言いません。でもせめて、医務室で薬を処方してもらいましょう?」
ほら、と差し出される手を掴まず、ヒル魔は机に頬杖をついた。
「それはテメェが糞眼鏡から貰ってこい」
少し気が抜けたような顔に、まもりは薄く苦笑した。
それは歩くのさえ、立ち上がるのさえ辛いから代わりに頼む、というまもりにだけ見せる甘え。
「はい。じゃあ大人しく待ってて下さいね、大将」
「おー」
からかいに応じる気力もないのだろう。
ひらりと振る手に小さく頷き、医務室への道のりを急いだ。

医師である高見はやってきたまもりに笑みを浮かべた。
「こんにちは、元帥。どうされました?」
「ええ、実は・・・」
事情を聞くと、高見はカルテを覗き込み手早く薬を調合した。
「大将は体質的に解熱鎮痛剤が効きにくいんですよね。経口じゃ熱が高く鳴りすぎるともうダメなんですよ」
「そう」
「なので、座薬を出しておきますから、高熱が続くようなら使って下さいね」
ヒル魔が、座薬。
あまりに似合わない単語に、まもりが思わず苦笑する。
「男は熱に弱いですからね、手っ取り早いのはコレなんですよ。もっといいのは点滴ですが、ここには来ないでしょう?」
見透かす彼の言葉に、まもりは頷いて薬を受け取る。
「お大事に、とお伝え下さい。勿論他言無用だと重々承知しておりますから」
ふふ、と笑うその穏やかさとは裏腹の腹黒さも持ち合わせていると、それなりの付き合いで知っている。
まもりは高見に会釈し、薬を手に廊下を歩く。
程なく、終業を告げるチャイムが響いた。


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