旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
そこにある小さな公園は、街灯が一つあるきりのうら寂しい場所である。
唯一のベンチに下ろされ、その前に立ちはだかられる。
居心地の悪さに身じろぐまもりに、ヒル魔は一つ舌打ちした。
「俺に関係ねぇっつーなら、俺に気づかれないようにしろ」
「ヒル魔くんが気にしないでくれたらいいだけじゃない」
言いながら、どんなに上手に隠しても彼の並外れた聡さではすぐ見破られるだろうという変な確信がある。
しばし沈黙が続く。
まもりがじっと俯いて動く様子もないのを見て、ヒル魔はふうと小さく息を吐いた。
「なんで泣く?」
「っ」
それがひどく優しい響きで、まもりは小さく息を詰めた。
「どうしてそうまでして、泣く?」
「関係、ないでしょ」
ヒル魔の眉が寄った。
すっと目の前からヒル魔が消える。
まもりが顔を上げると、公園の外へ向かう彼の背中。
「あ・・・」
遠ざかる彼に、まもりは現状を冷静に思い返す。
今はまた明日逢える、明日がなければ明後日に、という言い方が出来る。
けれどもう一年もしない間に、『また明日』はなくなる。
失くなるのだ。
改めて気づいた事実に俯き、かたかたと震えるまもりの隣に、不意に人影。
「え」
「飲め」
渡されたのはあたたかいココア。
慌てて隣を見れば、いつの間に戻ったのかヒル魔が飄々と缶コーヒー片手に座っている。
「どうし、て」
「あ? テメェ糞甘ったりぃモン好きだろーが」
自らは無糖のブラックコーヒーを嚥下している。そうじゃなくて、と言いかけてまもりは手元の缶を見つめる。
唐突に渡された暖かなもの。
缶を持ったまま固まったまもりに、小さく舌打ちしてヒル魔はそのプルトップを強引に引き上げた。
「あ!」
「冷めるだろーが」
いいから飲め、とせかされてまもりはおずおずとココアを飲んだ。
甘く優しい味。しばしの無言の後、ヒル魔が口を開く。
「関係あるかないかは、テメェが決める事じゃねぇ」
「でも」
「言わないでいて解決することは何もねぇよ」
まもりは缶を握りしめた。
「ヒル魔くんに言ったところで、解決しない―――」
「それはテメェがそう思い込んでるからだろうが」
ヒル魔はじっとまもりを見る。
貝のように押し黙るまもりに、彼はふんと鼻を鳴らした。
「不幸な自分に酔うのがそんなに楽しいか」
「!」
「誰にも理解されないから一人で泣く、それがそんなに気持ちのいいことか」
誰にも言わないで判ってもらおうなんざ体のいい口実だ、とヒル魔は続ける。
「わ、たし」
「テメェがやってることは、全部そういう風に見えるんだよ」
全く不快だ、とヒル魔は吐き捨てる。
再びの沈黙。
けれど、先ほどとは違う熱を帯びた沈黙だった。
まもりの手が震え出す。
肩が、頭が。
眦から耳までがぱあっと赤く染まった。
「・・・何よ」
低く唸る声に、ヒル魔はニイ、と口角を上げた。
来た、そう言いたげに。
「何よ! 全部、自分は全部判ってますって、そんな顔で!!」
唐突に叫んだまもりに、ヒル魔は笑い声を上げて立ち上がった。
<続>
唯一のベンチに下ろされ、その前に立ちはだかられる。
居心地の悪さに身じろぐまもりに、ヒル魔は一つ舌打ちした。
「俺に関係ねぇっつーなら、俺に気づかれないようにしろ」
「ヒル魔くんが気にしないでくれたらいいだけじゃない」
言いながら、どんなに上手に隠しても彼の並外れた聡さではすぐ見破られるだろうという変な確信がある。
しばし沈黙が続く。
まもりがじっと俯いて動く様子もないのを見て、ヒル魔はふうと小さく息を吐いた。
「なんで泣く?」
「っ」
それがひどく優しい響きで、まもりは小さく息を詰めた。
「どうしてそうまでして、泣く?」
「関係、ないでしょ」
ヒル魔の眉が寄った。
すっと目の前からヒル魔が消える。
まもりが顔を上げると、公園の外へ向かう彼の背中。
「あ・・・」
遠ざかる彼に、まもりは現状を冷静に思い返す。
今はまた明日逢える、明日がなければ明後日に、という言い方が出来る。
けれどもう一年もしない間に、『また明日』はなくなる。
失くなるのだ。
改めて気づいた事実に俯き、かたかたと震えるまもりの隣に、不意に人影。
「え」
「飲め」
渡されたのはあたたかいココア。
慌てて隣を見れば、いつの間に戻ったのかヒル魔が飄々と缶コーヒー片手に座っている。
「どうし、て」
「あ? テメェ糞甘ったりぃモン好きだろーが」
自らは無糖のブラックコーヒーを嚥下している。そうじゃなくて、と言いかけてまもりは手元の缶を見つめる。
唐突に渡された暖かなもの。
缶を持ったまま固まったまもりに、小さく舌打ちしてヒル魔はそのプルトップを強引に引き上げた。
「あ!」
「冷めるだろーが」
いいから飲め、とせかされてまもりはおずおずとココアを飲んだ。
甘く優しい味。しばしの無言の後、ヒル魔が口を開く。
「関係あるかないかは、テメェが決める事じゃねぇ」
「でも」
「言わないでいて解決することは何もねぇよ」
まもりは缶を握りしめた。
「ヒル魔くんに言ったところで、解決しない―――」
「それはテメェがそう思い込んでるからだろうが」
ヒル魔はじっとまもりを見る。
貝のように押し黙るまもりに、彼はふんと鼻を鳴らした。
「不幸な自分に酔うのがそんなに楽しいか」
「!」
「誰にも理解されないから一人で泣く、それがそんなに気持ちのいいことか」
誰にも言わないで判ってもらおうなんざ体のいい口実だ、とヒル魔は続ける。
「わ、たし」
「テメェがやってることは、全部そういう風に見えるんだよ」
全く不快だ、とヒル魔は吐き捨てる。
再びの沈黙。
けれど、先ほどとは違う熱を帯びた沈黙だった。
まもりの手が震え出す。
肩が、頭が。
眦から耳までがぱあっと赤く染まった。
「・・・何よ」
低く唸る声に、ヒル魔はニイ、と口角を上げた。
来た、そう言いたげに。
「何よ! 全部、自分は全部判ってますって、そんな顔で!!」
唐突に叫んだまもりに、ヒル魔は笑い声を上げて立ち上がった。
<続>
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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