旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
セナには一つ、気になることがあった。
「・・・まもり姉ちゃん?」
「うん? どうしたの、セナ?」
向けられる笑顔はいつも通りで、おかしなところは一つもない。
けれどそれが一番おかしいのだとは口に出せず、セナは曖昧に笑って何でもないと言葉を濁した。
そう? と小首を傾げて手元の書類に視線を戻したまもりと、いつも通りパソコンをいじっているヒル魔との間も至って穏やかで、異変は感じられない。
事実この部室にいる誰もが違和感なく過ごしている。
けれど。
昨日だ。
昨日、セナは自らがアイシールド21であることを明かし、その事実を知らなかったのはまもりだけだと知らしめてしまったのだ。
あの後何事もなかったように―――実際泣いたであろうことは僅かに赤い眦ですぐ知れたけれど―――試合を行い、勝ち進むことができた。けれどわだかまりがなくなるわけでもなく、どうしてだと詰め寄られることをある程度覚悟していた。
それは、半分はヒル魔に向かうだろうと思っていたし、事実彼が何か仕掛けて彼女が出てくるようにしたのはすぐ判ったけれど。
それについても、今までについても、何も。
何一つ言わないのだ。
筋肉痛で今日は練習などできないから、と。
そう言いながらも集まった部員達で賑やかな部室の中で、いつもであればやかましいと叫んで一番煩いヒル魔と。
危ないじゃないと言って部員をモップ一本で守ろうとするまもりとの攻防がない。
「どうした? セナ」
「え?」
ぼんやりとしていたのを、モン太が見つけて近寄ってきた。
「腹減ったか? バナナでも食うか?」
「いや、そうじゃないけど、ちょっと考えてて・・・」
「何をだ?」
まもり姉ちゃんのこと、とは何となく言いづらく、セナは関東大会でまず最初にどこにあたるかな、と呟くに止めた。
「そーだなー、王城はやっぱ決勝で当たりたいよな!」
「ハァ? その前に一回戦勝たないと話になんねぇよ、サル」
「ムッキャァアアア! 誰がサルだ!」
「ハ。今まさにそうだろ」
「ハァアアア? テメェはサル以外の何者でもねぇだろぉ」
「ムッキャァアアア!!」
いつもの調子で混ざってきた三兄弟に食ってかかるモン太を宥めながら、セナはもう一度データ処理をするまもりとヒル魔を見た。
やはり穏やかなその雰囲気がなぜだか落ち着かず、セナは意識を部員達へと向けた。
散々に騒いだ部員達に関東大会のくじ引きの日程を告げ、この日の部活は終了となった。
ぎくしゃくとした動きで去っていく部員達を見送り、まもりは手早く部室の中を掃き清める。
「おい」
まもりが視線を向けると、パソコンに向かったままヒル魔が続けた。
「コーヒー」
まもりは応とも否とも言わず、静かにコーヒーメーカーのところへと向かった。
程なく差し出されたコーヒーに、ヒル魔は躊躇いもなく口をつける。
その様子を見ていたまもりはエプロンを外し、帰り支度を整え始める。
「お先に失礼します」
淡々とそう口にしてまもりはその場を去った。
「・・・」
ヒル魔は無言のまま残ったコーヒーを飲み干す。
いつも通りの味だったはずなのに、妙に苦いような気のする、そんなコーヒーだった。
<続>
「・・・まもり姉ちゃん?」
「うん? どうしたの、セナ?」
向けられる笑顔はいつも通りで、おかしなところは一つもない。
けれどそれが一番おかしいのだとは口に出せず、セナは曖昧に笑って何でもないと言葉を濁した。
そう? と小首を傾げて手元の書類に視線を戻したまもりと、いつも通りパソコンをいじっているヒル魔との間も至って穏やかで、異変は感じられない。
事実この部室にいる誰もが違和感なく過ごしている。
けれど。
昨日だ。
昨日、セナは自らがアイシールド21であることを明かし、その事実を知らなかったのはまもりだけだと知らしめてしまったのだ。
あの後何事もなかったように―――実際泣いたであろうことは僅かに赤い眦ですぐ知れたけれど―――試合を行い、勝ち進むことができた。けれどわだかまりがなくなるわけでもなく、どうしてだと詰め寄られることをある程度覚悟していた。
それは、半分はヒル魔に向かうだろうと思っていたし、事実彼が何か仕掛けて彼女が出てくるようにしたのはすぐ判ったけれど。
それについても、今までについても、何も。
何一つ言わないのだ。
筋肉痛で今日は練習などできないから、と。
そう言いながらも集まった部員達で賑やかな部室の中で、いつもであればやかましいと叫んで一番煩いヒル魔と。
危ないじゃないと言って部員をモップ一本で守ろうとするまもりとの攻防がない。
「どうした? セナ」
「え?」
ぼんやりとしていたのを、モン太が見つけて近寄ってきた。
「腹減ったか? バナナでも食うか?」
「いや、そうじゃないけど、ちょっと考えてて・・・」
「何をだ?」
まもり姉ちゃんのこと、とは何となく言いづらく、セナは関東大会でまず最初にどこにあたるかな、と呟くに止めた。
「そーだなー、王城はやっぱ決勝で当たりたいよな!」
「ハァ? その前に一回戦勝たないと話になんねぇよ、サル」
「ムッキャァアアア! 誰がサルだ!」
「ハ。今まさにそうだろ」
「ハァアアア? テメェはサル以外の何者でもねぇだろぉ」
「ムッキャァアアア!!」
いつもの調子で混ざってきた三兄弟に食ってかかるモン太を宥めながら、セナはもう一度データ処理をするまもりとヒル魔を見た。
やはり穏やかなその雰囲気がなぜだか落ち着かず、セナは意識を部員達へと向けた。
散々に騒いだ部員達に関東大会のくじ引きの日程を告げ、この日の部活は終了となった。
ぎくしゃくとした動きで去っていく部員達を見送り、まもりは手早く部室の中を掃き清める。
「おい」
まもりが視線を向けると、パソコンに向かったままヒル魔が続けた。
「コーヒー」
まもりは応とも否とも言わず、静かにコーヒーメーカーのところへと向かった。
程なく差し出されたコーヒーに、ヒル魔は躊躇いもなく口をつける。
その様子を見ていたまもりはエプロンを外し、帰り支度を整え始める。
「お先に失礼します」
淡々とそう口にしてまもりはその場を去った。
「・・・」
ヒル魔は無言のまま残ったコーヒーを飲み干す。
いつも通りの味だったはずなのに、妙に苦いような気のする、そんなコーヒーだった。
<続>
PR
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カウンター
カテゴリー
プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
最古記事
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
(02/16)
アクセス解析
フリーエリア