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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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それは誰かのために

(ヒルまも高校卒業後)
※『黒は悪魔色』とかその辺り。

+ + + + + + + + + +
まもりは興味津々で取扱説明書を開いていた。
「・・・随分熱心デスコト」
呆れたような声にも、まもりは気にすることなく読み進める。
「だってちゃんと読まないで火傷するの嫌なの。怖いし」
「だったらンなもん使わなけりゃいいんだろうが」
「だってこれなら煮込み料理の時間が半分以下になるのよ!」
まもりはぴかぴかの鍋を前に興奮したように告げ、ヒル魔はけっと短く口にした。

二人が一緒に暮らし始めてから、ヒル魔はまもりの料理のレパートリーの広さにつくづく感心させられる事が多かった。
彼自身、実は苦手だったり嫌いだったりする食材が甘い物以外にあった。
けれど、苦手意識を目敏く察したまもりは、手を替え品を替え彼の苦手な物を含む料理を並べた。
結果、例えば味付けだったり素材の鮮度が悪かったりとか、そういった問題点があったのだと気づいてから彼の偏食はかなり減った。
毎日料理を作り続ける手間はかなりのものだとヒル魔などは思うのだが、彼女はそうではないらしい。
食べる事も好きだし、料理好きな母親の影響もある。
何より食べさせる相手がいることが大きいのだと、いつだか言っていた。
要は彼女は料理が大好きなのである。
そんな彼女が、食品売り場と並ぶキッチン用品売り場で物欲しげに視線を飛ばすのを見逃すヒル魔ではない。
一度や二度ではないその行為を見て、彼は不意にそれを買って彼女に買い与えたのだ。

「分量は鍋の三分の二まで・・・と」
「何作るんだ」
「とりあえず、ポトフを煮てみようと思って」
「ホー」
キッチンでくるくると動き回るまもりの邪魔にならない距離で、ヒル魔は手際よく調理していく彼女を見つめる。
「たった10分でいいんだって!」
レシピを確認しはしゃぎながら鍋を火に掛けるまもりは、興味津々で鍋の前に立つ。
「まだかなー」
ヒル魔は手元の取扱説明書に目を通した。
通常に沸騰した後から加圧される仕組みらしい。
「ンなすぐに沸騰しねぇだろ」
「そうだけど、楽しみじゃない?」
嬉しげな様子を隠しもしないまもりに、ヒル魔は口角を上げるだけで何も言わない。
と、少々湯気が立ち上るのが見えた。
そして次に響いたのは。
「きゃっ!」
激しい蒸気の上がる音。
思った以上にけたたましいその音に、まもりは声を上げてそれでもしっかり火を弱火にした。
「すごい音・・・! 怖い!」
今にも爆発しそうだ、とおののき鍋と距離を取る。そんな彼女を見てヒル魔はせせら笑った。
「分量と用法間違ってねぇんなら爆発しねぇぞ」
中にパチンコ玉詰めてんなら判るけどな、と呟くがそれはまもりには聞こえなかったようだ。


さてそのお味は。
「すごい・・・! 何時間も煮たみたいに味も染みてるし、柔らかい!」
「そうだな」
「それにしても、なんで圧力鍋ってこんなに短時間で柔らかくなるんだろう」
「圧力かけて沸点上げて調理するから」
そうなんだ、と応じてもまもりはよく判らないなあ、という顔をした。
「物理やりゃよく判るぞ」
にやり、と口角を上げたヒル魔にまもりは早々に手を挙げて降参したのだった。


***
ネタに困って実話をちろりと。欲しい欲しいと思っていた圧力鍋を買いました。
作ったのはポトフではなく筑前煮でしたが。あとお米も炊きました。
いやあ美味しいね! ・・・というだけの話です。ハイ。
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