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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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静寂グラデーション(上)

(ヒルまも高校卒業後)
※『黒は悪魔色』の続きです
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
大学からの帰り道、まもりは鼻歌交じりで歩いていた。
今日は友人達と待ち合わせして、ケーキショップでお茶をするのだ。
ヒル魔には嫌そうな顔をされたが、ケーキを持ち帰って目の前で食べないことに感謝して欲しいくらいだと思う。
ふと、軽快な音楽が耳に付く。
携帯が鳴っている。
「はい、もしもし」
通話ボタンを押すが、反応がない。
「もしもし?」
受話器の向こうに耳を澄ませるが、声は聞こえない。
まもりは携帯を眺める。
通話先は番号非表示となっていて、誰かは判らない。
「・・・間違いかしら」
それならそうと言えばいいのに、と小首を傾げながらまもりはその通話を打ち切った。

友達と楽しくお喋りをして過ごし、帰宅する人々とこれから夜の街に繰り出す人々の合間を縫って家に帰る。
薄く夜が近づいてくる時間帯で、そこだけキラキラと明るい笑みを浮かべ、歩いていくまもりを振り返る人が何人もいた。
勿論まもりは特に気にせず、真っ直ぐに家へと向かう。
その彼女をファインダーに収める人影には全く気づくこともなく。


「ただいまー」
「おー」
帰宅し、室内にいるヒル魔に声を掛ける。
「お腹空いたでしょ。すぐ夕飯にするね~」
「テメェに荷物来てたぞ」
「荷物?」
誰から? という問い掛けに知らねぇと返される。
では母親ではないのか、とまもりはドアの前に置かれた箱に近づいた。
送り主の名に見覚えはない。
「友達でもないし・・・誰かしら」
「ア? テメェの知り合いじゃねぇのか?」
「うん。見覚えないわ」
変なの、と小首を傾げて箱を持ち上げる。軽い。
恐る恐る開けると、その中身は、鮮やかなスカイブルーの膝丈スカートのドレスだった。
「ドレス?!」
目を丸くするまもりに、ヒル魔も眉を寄せる。
「なんだそりゃ」
「私が聞きたいわよ。・・・サイズも見た感じ、ぴったりみたいだし・・・なんだか気味が悪いわね」
まもりの瞳の色のような、綺麗な青。
これが差出人や目的が知れて悪意がなければ嬉しい贈り物にもなるだろうが、全く先方の意図が読めない現状では素直に喜べない。
「他に中身はなしか」
「なんなのかしら・・・」
気味悪そうにまもりはそれを同じ箱に放り込む。
「捨てるの、勿体ないけど・・・捨てた方がいいかしら」
「いや。一応取っておく。少し待ってろ」
ヒル魔は自室から何か機械を持ってきて、ドレスに翳す。
「なにそれ?」
「反応はねぇな。盗聴器発見機だ」
「と・・・」
何に使うの、と絶句するまもりに、ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「これくらい当然の対応だ」
「そ、それは違うと思うわよ!」
「俺と生活するなら当たり前だと思っておけ」
「なにそれ!」
けれど盗聴器などが仕込まれていたらもっと恐ろしいのは確かだ。
「警察に相談するべきかしら」
「ただ荷物が届いただけじゃアイツらは何にもできねぇよ」
「そうかー・・・」
不安そうに箱を見るまもりの引き寄せ、頭を撫でる。
「しばらく様子見だ」
「大丈夫かしら」
そんなまもりに、ヒル魔はにやりと口角を上げる。
「俺をなんだと思ってんだ?」
それにやっとまもりは安堵したように笑みを浮かべたのだった。


その数日後。
今度はまもりの在宅時に、宅配便が来た。
「はーい」
判子を片手に受け取った荷物は、軽い。
先日と同じ差出人だった。一応受け取り、まもりは箱を手に室内に戻る。
ヒル魔は今、不在だ。
迂闊に手も出せず、まもりは不安そうに箱を眺める。
と。
カタンと音を立て、新聞受けに何かが放り込まれた気配。
公共料金の使用明細書かしら、と近づいたまもりは、それとは様相の違う封筒が中にあることに気づいた。
「?」
まもりは眉を寄せてそこに入っていた白い封筒を取り出す。
表には印刷で『姉崎まもり様』とある。切手もない。
裏を見たが、当然のように差出人はない。
玄関先で立ちつくすまもりの前で、扉がいきなり開く。
「!!」
「ア? いたのか」
そこにはいつも通りマシンガンを抱えたヒル魔の姿。それにまもりは安堵の息をつく。
その手にある封書、そして様子のおかしいまもりに、ヒル魔はきつく眉を寄せた。
「またか」
「こ、んどはコレが新聞受けに・・・。荷物も、さっき・・・」
差し出す封書を検分し、ヒル魔はリビングへと向かう。
前回と同じように盗聴器の有無だけ調べ、ヒル魔が箱を開く。そこにあったのは。
「また、ドレス・・・?!」
「そっちの封筒は?」
「ちょっと待って。・・・!!」
封を切り、開いた途端にまもりの指が震えた。
バラバラと床に落ちたのは、写真。
それもここ最近で隠し撮りされたとおぼしき外での写真が、何枚も収められていた。
「・・・ホー・・・」
低くヒル魔が唸る。彼の手が持ち上げたドレスは、やはり青。
けれど、心持ち前回の色よりも僅かに薄い色のような気がする。僅かに裾も長いような。
「一体、なにこれ・・・」
「一般的に言やあ、ストーカーってやつだな」
「ス、ストーカー!? なんで私に?!」
「知らねぇよ」
物好きがいるもんだ、と口ではかわいくないことを言いつつ、ヒル魔の目つきは厳しい。
「何が目的なの? 一体誰が・・・」
写真のまもりは楽しそうに笑みを浮かべている。服装と風景から、つい先日撮られたことはすぐ判った。
「テメェの方は、変わったことはねぇのか?」
「変わったこと・・・」
まもりはふと気づいて、携帯電話を取り出した。
先日、番号非表示で無言電話があったことを思い出したのだ。
けれど着信記録を見て、まもりは絶句する。
「な、なにこれ?!」
そこには、ずらりと並ぶ番号非表示の文字。
一つ二つではなく、履歴が全てそれで埋め尽くされてしまいそうな数。
気づかなかったのは何でだろう、と眉を寄せるまもりに、ヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「テメェの携帯、番号非表示の場合は着信してから出るまでタイムラグがあるように設定しておいただろ」
「え・・・」
まもりはそう言われて、思い出す。
「そういえば、十秒くらいだと反応しないようにしてたわ」
「だろ」
番号非表示で掛けられても相手が特定出来ない場合には出たくないから、と説明書片手に設定したのだった。
普段はそんな状態で掛けられることがないのですっかり失念していた。
「ほとんど二、三秒で切れてるだろ。反応しねぇようになってんだよ」
「そっか」
けれどずらりと並ぶ番号非表示の文字はそれだけで気色悪い。
「なんだか、妄執を感じるわね」
「テメェでもそれくらいは判るのか」
「失礼ね! 人を鈍感みたいに言わないでよ!」
むくれるまもりに、ヒル魔はにやにやと笑う。
そのからかいが彼女を気遣ったものだとは、まもりにだってわかる。
けれどやっぱり気色悪いのだ。
「ストーカーって、もっとこう・・・直接的に付きまとったりするんじゃないの?」
そうであれば直接対峙出来るのに、とまもりは困ったように呟く。
服を送りつけられるだけではやはり警察は動いてくれないだろう。
どうすればいいの、と悩むまもりをヒル魔は抱き寄せる。
「少なくとも同じ大学じゃねぇことだけは確かだな」
言い切ったヒル魔に、まもりは小首を傾げる。
「なんで?」
「ミスコンの一件、忘れたのか?」
にやにやと笑われ、まもりはぼっと顔を紅くした。
学園祭でヒル魔との交際宣言を(意図してなかったが)全校にしたため、今ではほとんど男子生徒が近寄ってこない状態なのだ。
皆ヒル魔に恐れを成しているらしい。まあ、相変わらず健在の脅迫手帳とマシンガン相手では分が悪いのだろうけれど。
「この写真は俺が預かる」
「どうするの?」
「日付と時間帯が判ってるだろ。後はこの撮影場所を特定して、相手を突き止める」
「できるの?」
「だから、俺をなんだと思ってる?」
それにまもりは肩をすくめた。
「悪魔、よ」
「ご名答」
ヒル魔は威圧感のある笑みを浮かべ、まもりの額にキスをすると、自室へと戻っていった。



それからも、まもりの手元にはドレスが届き続けた。
次第に青から白に近い色へと変化し、裾も次第に長くなっていった。
そして、届いたドレスの色が白く、裾が床につくくらいになった時。
まもりの携帯が鳴った。
そこに光る『番号非表示』の文字。
それでもまもりは意を決し、それに出る。
「―――――もしもし?」


<続>
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