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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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混迷フォトグラフ(上)

(軍人シリーズ)
※ヒル魔が少将、まもりが中将の頃の話です
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
世間一般の女性と考え方が違っている、という自覚はある。
幼い頃からその気持ちは変わっておらず、それを察知した両親は早々に彼女を一般の女性ではなく、軍人として生きるよう勧めた。
家柄を重んじる貴族としては異色のその処遇に、まもりは反発するどころか嬉々として士官学校へ通った。
士官学校に通えば、好きなだけ本が読める。
それも婦女子の好むような柔らかな砂糖菓子のような夢物語などではない、骨格のしっかりとした戦術書や実践書が。
他の生徒の好奇の視線もなんのその、まもりは日々本を糧に成長を続けていった。

そうして。
現在の姿があるわけだけれど。

まもりは、送られてきた箱に眉を寄せた。
「あの、姉崎中将、こちらが届いたのですが・・・」
「燃やしなさい」
「はっ!? あ、あの、ご実家から届いたものですが・・・」
「実家から、私個人に用があって寄越す物なら隊舎には送ってきません。これは不要文書です」
「しかし、封も開けず燃やすわけには・・・」
困り果てた部下に、まもりはふうと嘆息して箱に手を掛ける。
そのまま開けようとする彼女の手を、男の手が止めた。
「ちょっと待て。テメェ、素手で開けるのか」
タイミング良く現れたヒル魔少将だ。
「そうですよ」
「ハサミくらい使え。おら」
ひょい、と渡されたそれを手に、まもりは素直に箱を開ける。
梱包をとくと、そこには一枚の手紙が入っている。
『処分はそちらに任せる』
簡潔な一言に、まもりの眉間に一本筋が入った。
その下には豪華な装丁の厚紙がぎっちりと入っている。
「なんだこりゃ」
「興味があるならどうぞ。御覧下さいな」
まもりは手紙を折り始める。
丹念に折り目を付けて折っていくその傍らで、箱の中身を検分していたヒル魔が微妙な顔つきでまもりを見上げた。
「これ、全部見合い写真じゃねぇか」
「そうですよ」
まもりは折り上がった紙飛行機を、戯れに飛ばす。
すうっと空気を滑るそれは、くるんと回って勢いを失い、地に落ちる。
「俺が見たところで仕方ねぇだろうが。見るのか?」
「私が見ても同じことですよ。だから燃やせと言ったのに」
「随分な量だな」
「これでも厳選しているはずですよ」
「ホー?」
「姉崎家、という看板は通りがいいそうで。それこそ私が物心つく前からこの手の写真は多いそうです」
「ホホー?」
まもりは落ちた紙飛行機を拾い上げ、どこがまずいのか検分する。
「全部を私に送っても見ないのは承知の事実ですから、あちらも一応これなら、という男性を見繕って送ってくるんですよ」
「それ以前の連中については?」
「さあ。燃やすか突っ返すか・・・いずれにしても返答が早いか遅いかだけの違いです」
まもりが全く興味を示さない写真の山を不要文書入れにそのまま放り込むと、ヒル魔はまもりに歩み寄る。
「見せろ」
彼女の手から取り上げた紙飛行機の羽に折り目を付け、角度を見る。
「これで飛ばしてみろ。気持ち上めにな」
「こうですか?」
窓から外に向かって投げると、それは風に乗って高く飛び上がる。
ぐんぐんと高く登る紙飛行機に、まもりは目を瞠った。
「すごい・・・!」
「気流と風の具合で結構遠くまでいくぜ。あれなら街の端まで行くかもな」
「へえ・・・」
風に嬲られる髪もそのままに、紙飛行機を追うまもりに、ヒル魔の声が掛けられる。
「結婚とか、興味ねぇのか」
「生憎と考えたことがありませんね」
「家の存続とかあるだろうよ」
「姉崎家で必要とあれば養子を取るでしょう」
あっさりとしたまもりの言葉に、ヒル魔は眉を寄せる。
家柄を重視するということは、血統を重んじるのと同意だと思っていたのだが。
「姉崎家は、血統に縛られませんから」
「なんだそりゃ」
「先代が決めた後継者が跡を継ぐということだけが決まっています」
「じゃあテメェと結婚した男が継ぐんじゃねぇのか」
「いいえ。私は軍隊に属してますから、姉崎家とはもう関係ないんです」
「ア?」
「今後姉崎家を継ぐのは、今姉崎家の事業に携わっている者が選ばれるでしょう。私が誰と結婚しようと、家は関知しない」
「・・・そういうもんなのか?」
判らねぇな、と首を傾げるヒル魔にまもりは肩をすくめる。
「貴族といえども、家によって様々ということです。それよりもこちらにいらした理由があるのでは?」
それにヒル魔は口角を上げた。
「そうだな。テメェが何よりも楽しめる作戦会議のお時間、だ」
今回は対国や対猛獣ではなく、国境付近でたびたび出現するようになった夜盗を掃討する作戦だった。
まもりは地形・時間帯・気候・敵の特徴を見極め、作戦を練り始める。
この時なによりもイキイキとした表情を浮かべる彼女に、気取られないようにヒル魔はそっと息をついた。

本来、夜盗等の対応は軍隊ではなく警備隊が対応する。
軍隊は未知の猛獣や他国からの襲撃を迎撃するため、場合によっては国益の侵攻のために戦うのが基本であり、夜盗ごときに国の軍隊は動かない。
けれど今回は他国の王が近々来訪する予定があり、国王直々に周辺治安の早急な安定が希望されていた。
そうなると民間や国の警備隊が個々で対応したのでは間に合わず、軍隊出動の事態となったのだ。
その任務を受けたのが姉崎中将率いる泥門デビルバット軍だ。、勿論、実質率いているのはヒル魔である。
夜盗を掃討するためには、活動時間は自然と夜になる。
薄闇が降り始める夕刻、町はずれの広場に隊員の控え場所として用意されたテントがいくつか点在している。
ここに最終的には今回捕らえられる夜盗の者たちが一時的に収容されるため、頑強な檻と見張り役の隊員、それらを纏める事務方などが慌ただしく動いていた。
その中を、隊商の一員と入れ替わる役のセナとモン太が歩いていく。
今回は先に偵察の隊員が潜り込んでいたため、情報は事前に不足なく仕入れられたため、彼らに不安はない。
「今回は色々判ってるし、楽勝だな!」
「そうだね! よかった~」
そこにぬっとヒル魔が現れる。
「油断するな。そういう気持ちの時が一番高ェんだぞ」
「? 何がッスか?」
「死ぬ確率」
「「!!」」
びくーっ、と硬直するセナとモン太に油断大敵、と高笑いしながらヒル魔は視線を巡らせる。
今回は事前に大変高価な宝を運び入れる隊商がやってくる、という噂を仕込んだので、日頃は裏で糸を引くだけの頭も出てくるだろうと踏んだ。
遠方からやってきた隊商と途中で丸ごと入れ替わって囮になり、相手にわざと狙わせるというのが今回の作戦。一気に隊商全員が隊員と交代するとばれるので、日をかけて少しずつあらゆる手を使って隊員と隊商の人員は入れ替わっている。
後は今この場にいるヒル魔とまもりを筆頭とした十名弱が入れ替わればそれで完了する手筈となっている。
こちらから出る側で囮となれば楽なのだが、そうなると隊商は朝方出立するために夜盗は手出ししてこない。
ましてや国王が警戒していると知っているなら尚更。
街から離れた位置で野営をしているところを襲う方が、人も馬も疲弊していて襲いやすく、更に珍しい宝が手にはいるから夜盗側に利点があるのだ。
「姉崎中将、準備は出来たか」
「はい」
隊員の準備用に設えられたテントから、異国の服に身を包んだまもりが現れる。
サラ、と衣装に縫いつけられた飾りが音を立てた。


<続>
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