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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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「生きるべきか、死すべきか」(上)

(ヒルまも)
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
文化祭を開催する、という連絡を聞いたアメフト部部員達は一様に目を丸くした。
「文化祭なんて、ウチの学校にあったんだ・・・」
セナの言葉に何人もが頷く。
「毎年体育祭と交互にやってんだよ。去年体育祭やっただろ」
十文字が日程を照らし合わせて言った。確かに去年体育祭だった日程と同じだ。
「そういえば・・・」
アメフト部といえば、秋から冬にかけてメインの大会期間となるため、どうしても学校行事に疎くなる。
それでも体育祭ならば一日身体を動かすし、去年は対策代わりに使われた面もあったから参加できたが、文化祭はそれも難しい。
当日は練習漬けで参加は無理だろうと最初から諦めた格好の面々は練習に勤しんでいたのだが。

どうにも事態は思わぬ方向へと進み始めていた。


切っ掛けは学校中に貼り出されたポスターだった。
「『学校内ミス&ミスターによる演劇会』って・・・?」
「何これ?」
学園祭実行委員に尋ねたところ、ミス&ミスターコンテストを開催するのだが、それだけでは盛り上がりに欠けるので、選ばれた各学年男女1名ずつの6名+演劇部が文化祭の年には演劇に参加するのだという。選ばれたミス&ミスターの中で一番票を獲得した出演者には豪華賞金が支給される。
それを聞いて誰もが視線を交わした。きっと部費目的で口を出す悪魔がいるに違いない、と。
けれど彼は一応引退の身、練習に顔を出していても部費のことまで口にするかな、と多少希望的観測を持っていたのだが。
ポスターを貼り出された日の放課後には、部室に元キャプテン蛭魔妖一と元マネージャーである姉崎まもりの姿があった。
『やっぱり・・・』
予想通りの出現に、彼を直接はあまり知らない一年生はともかく、二年生は視線を交わし合って嘆息した。
「ケケケ。部費調達のチャンスと聞いてナァ。手伝ってやろうじゃねぇか」
ニヤニヤと上機嫌なヒル魔に対し、まもりは怒り心頭の様子。
「だからって! 私まで連れてこないで! 関係ないじゃない!」
「三年のミスはテメェがなるんだから無関係じゃねぇだろ」
「そんなことありません! 買い被らないで!」
「・・・実際、まもり姉ちゃんの人気ってどうなんですか?」
共に来ていた栗田にこっそりとセナが尋ねると。
「一年生の時もコンテストがあって、姉崎さんはぶっちぎり1位だったよ。今年もたぶんそうじゃないかな」
「へえ!」
「さっすがまもりサン!」
「・・・なに?」
感心する後輩の期待に満ちた視線を集め、まもりは居心地悪そうに黙り込む。
「後は二年のミスター、下馬評通りなら糞長男が取るだろ」
「は!? もう決まってんのか?!」
「はぁあああ!? ッキショ、テメェ十文字ィ!!」
「はぁ?! ちょ、待て! テメェら何蹴り・・・イテェ!!」
盛り上がる後輩と騒がれて困惑するまもりを余所に、ヒル魔はパソコンを立ち上げて早速部費獲得のためのプランを練っているようだった。

結局、文化祭前に早々に開催されたミス&ミスターコンテストの結果はヒル魔の予言通り、三年女子にまもり、二年男子に十文字が選ばれた。
試合には直接ぶつからない日付なのは既に確認済みだ。
そして寄越された台本を見たヒル魔が眉を寄せる。
「『ハムレット』?」
「十文字くんがハムレットで、私はオフィーリアなの」
「ミスキャストだろ」
「どういう意味で?」
「テメェが早々気ィ触れて死ぬキャラとは思えねぇ」
「人を鈍感みたいに言わないで!」
「実際鈍感だろうが」
ぎゃあぎゃあと言い争う二人を横目に、十文字は台詞の多さにげんなりと眉を寄せる。
「すごい量だね」
「実質主役だからだろ。ハムレットって主人公の名前だし」
「部活の練習にこの練習かよ。勘弁してくれ・・・」
「はぁあああ?! ミスターに選ばれておいてンな甘えが許されると思ってんのかぁ?!」
「は、せいぜい頑張るんだな、カズちゃん」
「畜生テメェら他人事だと思ってなぁ!!」
本来不在であるはずの三年生に加えた十文字を含んだ二年生の騒々しさに、一年生はこれで秋大会が勝ち抜けるのだろうかと心配そうに顔を合わせた。

そうして、部活と授業と更に演劇という慣れない事への挑戦が一部で始まり。
その間、何故か無料だったはずの舞台鑑賞券が誰かの手により他校生に有料で売り出されたりと波乱含みの予感がひしひしとしつつ。
日々は飛ぶように過ぎていって、明後日には本番という日。
それなのに通し稽古もろくに出来ないような慌ただしさの中で、唐突に。
十文字が、倒れた。

『インフルエンザ、だってよ』
「・・・だってよ、じゃなーい!! なんでこんな時に熱なんて出してるのよモンジのバカー!!」
鈴音がキンキン声で携帯電話に向かって叫ぶ。
『煩ェ、頭に響く・・・。大体なんでテメェがこの電話に出てるんだよ・・・』
「だって、他のメンバー今走り込み中なんだもん。連絡待ちっていうんで私がセナの携帯預かってたの」
『とにかく、次の試合までには間に合わせるが、演劇には間に合わねぇ・・・。それ伝えておいてくれ・・・』
熱で苦しいのだろう、不明瞭な言葉でどうにかそれだけ言うと通話は途切れた。
鈴音はむうっと眉を寄せると、丁度走り込みから戻ってきたセナの元に軽快に滑り寄った。

十文字病欠の連絡を聞いて、演劇の現場は混乱した。
間違いなく一番台詞の多いハムレット役の十文字は、本人は向かないと零していたが、なかなかどうして充分主役たり得る存在感を放っていたからだ。
台詞はほぼ暗記していたし、真面目な気質も彼の演じるハムレットと合っていてこれはいいと思っていたのに。
「ど、どうしよう・・・」
「他のミスターの人は?」
「駄目、二人とも今の台詞覚えるので手一杯だったのよ」
「演劇部の男子は?!」
「演劇部、男子は王様役の子以外は兼部なの」
「え!? じゃあ他の人は今・・・」
「ほぼ幽霊部員で、演劇経験ゼロばっかりなの・・・」
「ええー?!」
いっそ女子が演じるか、という話になるが、今からあれほどの台詞を覚えて立ち位置も覚えて、というのではさすがの演劇部も尻込みする。
なにより、もう日がない。
「どうしたの?」
そこに現れたのはオフィーリア役のまもり。十文字病欠と聞いて、顔を曇らせる。
「あれだけの台詞を覚えて立ち回りも出来る人・・・」
「私がハムレット、やろうか?」
まもりの申し出に皆が顔を合わせる。確かに彼の相手役だから台詞は頭に入っているだろうけれど、今度はオフィーリア役がいなくなってしまう。
ましてや彼女は3学年全体のミスコンでも1位、彼女の男装姿では悲しまれることになりそうだし、華やかさにも欠ける。
八方塞がり、絶体絶命。
と、その時。
「ふーん」
唐突に現れた細い黒の腕が、舞台監督をしていた生徒の手から台本を奪い取る。
「なっ?!」
ヒル魔だった。彼は台本をざあっと速読する。
「ヒ、ヒル魔!? どこから・・・!?」
「何の用?!」
ざざっと音を立てて彼から距離を置いた周囲に、ヒル魔は台本を手ににやりと笑う。
「ハムレットが病欠だってナァ?」
「・・・そうよ」
それに応えたのはいち早く我に返ったまもりだった。
「さぞお困りデショウ。手助けシマショウカ?」
「悪魔と駆け引きできるほどのものがこの場にはないんだけれど?」
「ソンナコトハシナイデスヨ。少し脚本を手直ししてくれりゃあ、ハムレット役には適役がいるぜ」
「・・・一体何が目的なの?」
厳しい顔つきのまもりに、ヒル魔はにたりと笑って口を開いた。



さて文化祭当日。
演劇はその日の大トリとして体育館ステージで開催される。
その後ミス&ミスターコンテストの表彰式も兼ねるのだ。
華やかな演劇衣装を身に纏っての舞台だから壮観なのだと、現三年生に教えられた後輩達も楽しみにしていて、我先にと席に着く。
目的はまもりの艶姿に他ならない。
病欠である十文字の後釜が誰になったかは結局判らずじまいだったが、誰がやるのかというのも注目すべき点だった。
『それでは、これよりミス&ミスターコンテスト受賞者及び演劇部による演劇【ハムレット】を開催致します』
そうして盛大な拍手が収まると、緩やかに幕が上がった。

<続>
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