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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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その口に上るのは

(ヒルまも)
※15000HITお礼企画作品
※まもりパパ視点

+ + + + + + + + + +
まもりが大きなお腹を抱えて帰ってきたのを見たとき、判ってはいても心中複雑きわまりない私は非常に微妙な顔をしていたと思う。
一応荷物持ちでヒル魔もオマケについてきて、当然の如く我が家に上がったときは気づかないふりをしてスリッパのかかとでも踏んでやろうかと企んだが。
「家主よりも先に入るわけには行きませんカラネェ」
「くっ・・・!」
相変わらずの口調のヒル魔に私は歯がみする。
そんな私たちを妻やまもりは苦笑しながら見ているだけだ。
我が家に私の味方はいないのか。
孫が生まれたら、絶対おじいちゃん子にしてやるとも!
そんな決意を胸に、私は足音荒くリビングへと向かった。

「んー、予定日まであとどれくらいなの?」
「そうねぇ、もう二週間ないかしら」
まもりのお腹を撫でて妻が尋ね、まもりが答える。
うん、この光景だけだったらいい。この光景だけなら!
そこにヒル魔が顔を出した。
「おい、荷物はどこに置く」
「今一緒に行くわ」
よいしょ、とまもりが重い腰を上げてヒル魔の後に付いていく。
階段を上がるのにヒル魔が手を差し伸べて支える様子は仲睦まじいと言えなくもない。
・・・いや言えないと困るんだが・・・。
「・・・諦めが悪いわよ、おじいちゃん」
「まだ生まれてない!」
「もう秒読みよ」
往生際が悪い、と妻にからかわれる。
なんとでも言いたまえ、孫が生まれるまでは意地でもおじいちゃんとは呼ばせないぞ。
「・・・ところで、あの男はどこに泊まる気だ」
「どこもなにも、ウチに決まってるでしょ」
「なんだと!? あいつだって実家があるだろう、そっちに行けばいいじゃないか!」
あろう事か未だ挨拶すらしていないが一応居るらしいヒル魔の両親。
そちらが日本にいるならそこで生活していたらいいじゃないか。
ついでにそのまま戻って来なかったら更にいい!
むかむかと一人顰めっ面をしていた私に、まもりを部屋に残しこちらに戻ってきたヒル魔が飄々と言った。
「アー、申し訳アリマセンガ、ウチの両親は現在所在不明デス」
「探せばいいだろう! 君のなんとか手帳で! そんなものなくても両親なら色々連絡先とか調べれば判るだろうに!」
「良くお考え下サイ」
「何を!?」
「俺の両親、っつー段階で常識が通じるわけねぇだろうが」
「・・・・・・・・・」
自分で言うか、それを。でも何よりも納得してしまった。
「あら、お話は終わった? お茶を淹れたからこっちにいらっしゃいな」
声が途切れたのを見計らって、妻がこちらに声を掛けた。
・・・私の発言力が弱くなっているのは気のせいだろうか・・・。

この男が我が家に居座るのを半ば諦めかけていた夜。
「・・・じゃあな」
「・・・うん、お休みなさい」
「?」
ドアからあの男が立ち去る気配。
まもりがため息をつきながらリビングに入ってくる。
「ヒル魔はどこに行ったんだ?」
ヒル魔が名字だしまもりも今はヒル魔なのは理解しているが、どうにも私はあの男を呼ぶときヒル魔と呼んでしまう。 まもりもそう呼ぶし、なんとなく定着してしまった。
「うん・・・ホテル、かな」
「ホテル?」
「ヒル魔くんね、結構日本とアメリカを往復しているみたいなのよ。日本にいるときの拠点がいくつかあるみたいなのね」
「まもりはヒル魔がどこのホテルに泊まってるかは知らないのかい?」
「・・・教えて貰えないのよね・・・」
またため息。
「あの秘密主義っていうか、色々得体が知れないのは昔からだから今更なんだけど」
「昔から? 今も変わりないのか?」
「ええ。・・・まあヒル魔くんだし」
仕方ないかな、と苦笑するまもりは、以前こちらに来たときよりはマシとはいえ、やはり少し心細そうで。
いくら住み慣れた実家とはいえ、妊娠中とあらば身体も心も普段より色々と不安になることがあるのだろう。
私は少し思案したが、当のヒル魔がいないのではなんの話もしようがない。
「なんだか疲れたから、もう寝るわね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
まもりに手を振り、私はソファに座りながら思案し始めた。

それから一週間、ヒル魔は姿を現さなかった。
八日後の夜になってふらりと我が家にやって来て、まもりの顔を見て妻に手みやげを渡し、私の顔を見てにやりと笑う。
「どうかサレマシタカ?」
「そう思われるようなことをしているのかね?」
ふん、と鼻を鳴らすと、ヒル魔はケケケと笑った。
「来たまえ」
「ア?」
「え、お父さん、ヒル魔くんとどこに行くの?」
「いつものところだ」
そう言うと、妻は心得たようでにっこり笑う。
「いってらっしゃい。なんかあったら携帯で呼ぶから」
「ああ」
ヒル魔はぴんと片眉を上げたけれど、何も言わずついてきた。
二人して無言で歩いて、近くの公園までやってくる。
何も言わず自動販売機で無糖のコーヒーとストレートの紅茶を買い、公園の中まで入る。
昨今の公園は防犯のためか樹や遊具が少なく、ぽつんぽつんとベンチがあるくらいだ。
その一つに腰掛けると、ヒル魔は躊躇いなく隣に座った。
コーヒーを手渡すと、彼はにやりと笑った。
「アリガトウゴザイマス」
「相変わらず上っ面だけの言葉だな」
「ソンナコトナイデスヨ」
「どうだか」
ため息混じりに私は缶のプルタブを引き上げる。安っぽく甘い匂いが私の鼻孔を擽った。
「・・・ここは、昔から変わらない」
「ホー」
「小さい頃、まもりとはよくここで遊んだ」
ぐるりと見回す。あの当時はもっと広かったような気がする。
小さなまもりが手を広げ、一生懸命に私に向かって走ってきたのはそう遠い話じゃないはずなのに。
「君はまもりを軽視しすぎる」
「ホー?」
さも心外、という顔でヒル魔がこちらを見た。
ひたりと据えられた眸は見慣れなければトラウマになりそうな程眼光鋭い。
「秘密を持つのは悪い事じゃないが、君は極端に人に自分を知られるのを嫌がるように見える」
「で?」
唇の端だけ上げて笑うヒル魔は、からかうことなく私の言葉を促した。
「君は色々とまもりのことを知っているから揺らがないようだが、まもりはそうじゃない」
あの子は昔から頼りにされて頼られて伸びてきた。
それが結果人に甘えるのが苦手、という局面を作ってしまったが、人はそうそう変わるものではない。
今はアメリカに住み、頼る相手としてのヒル魔しかいない。
ヒル魔とて人なのだからそれなりに抱える物もあるだろう。
弱みを見せるといえば聞こえが悪いが、抱える物を分けて欲しいと願い、それを背負えるだけの度量がまもりにはあるはずなのだ。
「もう少しまもりを信用して頼りにしなさい。・・・君たちは夫婦なのだから」
最後の一言は非ッ常に言いたくなかったが、まもりのためだ。
実際腹に子まで宿されて、ここで手を放すような人でなしではないと信じたい。
ヒル魔は無言のまま、じっと私を見ていたが、残っていた缶コーヒーを飲み干す。
そしておもむろにゴミ箱に向かって鋭く投げた。
それはまるで吸い込まれるように小さな捨て口にスコンと入る。
・・・かつて名QBとして名を馳せたその腕は未だ健在のようだ。
「ご高説アリガトウゴザイマスお義父サン」
「・・・・・!!!!」
一気に私の全身に鳥肌が立った。いや、鳥肌というのにはまだ甘い。
毛という毛が一気に逆立った。
何に似ているだろうか。
猫の威嚇でも甘い、山嵐でもない・・・ハリセンボンかもしれない。 
あんな感じに私の頭も何もかもが予想外の言葉に膨れて毛が逆立っている。
脳が勝手に現実逃避を起こして、私は言葉すらろくに紡げない。
「お、お、お・・・・」
「おー、そんなところはアイツにホントそっくりデスネお義父サン」
「私をそんな風に呼ぶな―――――――ッ!!!」
絶叫して手にしていた紅茶の空き缶を至近距離から思いっきり投げつける。
それを平然と受け止め、それもゴミ箱に鋭く投げて、ヒル魔はにやにやと笑った。

そうして相変わらずの会話をしつつ帰宅すると、室内がざわざわしていた。
ヒル魔がそれをいち早く察知して、身軽に二階へと駆け上がっていく。
「どうした」
「あ、・・・ヒル魔、くん・・・」
ぐったりと床に寝そべるまもりは、力無くヒル魔を見上げた。青ざめた顔に薄く笑みを貼り付けて。
「まもり?! どうし・・・」
焦る私にヒル魔が言葉を被せた。
「始まったか。タクシーは呼んだか?」
・・・そうか、陣痛が始まったのか。予定日より早いが、想定内だな。うん。
「うん・・・今、お母さんが呼んでくれてる。・・・あそこの荷物持って降りてくれる?」
事前に準備してあった入院セットを指さされ、ヒル魔はそれを持つとすぐ私に寄越した。
「よろしくお願いシマスお義父サン」
「その呼び方はやめてくれ!」
大体君が自分でこれくらい持て、と言おうとして、ヒル魔がまもりを抱え上げるのを見て私は口をつぐんだ。
「捕まってろよ。階段で転けたらシャレになんねぇ」
「・・・ん・・・」
まもりを抱き上げて歩く足取りは淀みない。
時折襲う痛みにヒル魔の肩へしがみつくまもりの指が、小刻みに揺れていた。




そして長い長い一日目が終わり、二日目も半ばにさしかかろうという頃に、まもりは無事娘を出産した。
精根尽き果てた、というまもりは先ほどやっと眠りに就き、付き添っていた妻も疲労困憊で一度自宅に戻った。
「・・・サルみてぇだな」
「昔のまもりもこんなだった」 
今は、出産にはとんと協力できない男二人が肩を並べて新生児室の前に立っている。
生まれたてほやほやの命がそこで小さく動いている。
「女の子か・・・よかった」
私の呟きに、ヒル魔が片眉を上げる。
「性別に拘るのか?」
「いいや?」
私はにやりと唇の端を上げる。いつも彼が私に向かってそうするように。
「君も娘が他の男に奪われる辛さを感じるのかと思うと、嬉しくてね」
ふふん、と笑って言い放ってやる。
するとヒル魔は一度瞬きをして、それから口を開いた。
「じゃあアンタは娘に加え孫娘まで他の男に奪われるっつー辛さをこれから味わうのデスネ、オジイチャン?」
「おじ・・・」
絶句する私を見て、ヒル魔はケケケと声を上げて笑い、せいぜい長生きしやがれ、とオマケのように言った。

***
昂様リクエスト『まもパパに突っ込まれるヒル魔』でした。珍しく人に説教されるヒル魔さん。本当はリクエストの内容的には視点はヒル魔さんの方がよかったんですが、そうするとまもパパの外見を書かなければならなかったので、それは避けました。ヒル魔さんてばまもりちゃんのご両親まで大好きみたいですね(大笑)やー楽しかったです!そしてここからヒルまも一家とも繋がるわけです。
リクエストありがとうございましたー!!

昂様のみお持ち帰り可。

リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転して下さい。
『イヤーロブで。蛭魔と義父二人で話す。義父に的を得た指摘を受け、義母には慣れてたが義父もかと、内心舌を巻くが感心もする蛭魔』缶コーヒー飲んでるあたりがそうだったんです・・・。内心舌巻いてますから!
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