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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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長編連載『カワイイヒト』/6

(ヒルまもパロ)
※20000HITお礼企画

+ + + + + + + + + +
そして運命の日が来る。
その日まもりは朝から再びあの高級エステサロンに放り込まれ、ぴかぴかに磨き上げられてからヒル魔の待つ車へと押し込まれた。
「ちょっと妖一さん!! 朝からなんなの?!」
目が覚めたらそこは施術台の上だった―――というのは言い過ぎだが、ほとんどそんな勢いで手入れされた肌は内側から発光しそうな程ぴかぴかになっている。けれど気分がいいわけではないのだ。
「あぁ!? 今日が何の日か忘れたか糞女」
「忘れません! けど、今日の予定だけは事前に何も説明がなかったじゃない!」
「これから今夜の服を選ぶ」
「え、今までの中からじゃなくて?」
「あれじゃ見栄えがしねぇ」
見栄えがしないと言われても、結構な品物を買い与えられていたと思うんですけど・・・という呟きは無視され、連れてこられたのはこれまた初日に行ったセレクトショップ。
ドアマンが糞テカリと呼ばれた彼ではなく、実直そうな男に変わっていた。
「どうぞ。お待ちしておりました」
今度は躊躇いもなく開かれた扉の先に通される。案内されたのは以前と同じ応接間のような場所。
「ああ・・・。短い間でしたのに、また一層素敵になられましたね! これでは役不足ですわ」
感嘆の声を上げるあの品のいい女性店員。
彼女はまもりを見るなりいくつか見繕っていたらしいドレスを放り出し、奥に下がってしまう。
「お待たせ致しました」
持ってきたのは、ぬめるような手触りの天鵞絨で出来た藍色のドレス。
一目で高級と知れるそれに触れるのも躊躇われるまもりを余所に、ヒル魔はつかつかと近寄るとそれを手にして検分する。
一つ頷くと顔を上げた。
「よし、着ろ」
「え、だってこんな高い物…」
「さっさとしろ」
そしてまるでその辺のタオルを放るようにまもりにドレスを押しつけ、着替えるよう指示する。
あまりに高級品すぎて、まもりは似合うはずがないと渋々ながらそれに着替え、その間に用意された同色のヒールを履く。
「・・・まぁ!」
恐る恐る出てきたまもりを、女性店員は商売を忘れてその手を引いた。
大きな姿見に映ったのは、おっかなびっくりな姿勢のまもり。
「おら、背筋伸ばせ」
大きく開いた背中に直接触れられて、まもりはひゃっと奇声を上げてぴんと立った。
「色気のねぇ声だな」
「素敵ですわ・・・!」
そこには一ヶ月前のかわいらしい女性、というカテゴリーから数段レベルアップしたまもりが立っている。
上等すぎて身の丈に合わない、と思っていたドレスは予想以上に身体に馴染んだ。
まもりは大きく深呼吸する。
準備は整った、と思えた。
「ねえ、妖一さん」
「あ?」
「似合う?」
今日この日この役目を果たすためだけにここまで来た。
色々なことがあって、目まぐるしくて覚えることが沢山あって大変で、それでも楽しかった一ヶ月だった。
こみ上げるなにかがあって、まもりの目が滲む。
「・・・泣くには早いし大体意味がわからねぇ」
言いながら眦を指で拭うヒル魔に、まもりはそうね、と微笑む。
意識して考えないようにしていた明日からのことを思う。
今夜全てが終わったら、私はどうやってこの人から去るのだろうか。
「お前が今考えることは会合のことだ。なあ、まもり?」
頭一つ高い位置から目を見つめられ、息が止まりそうになる。
こんな距離で、こんな風に名前を呼ばれるなんて初めてで。
「余計なことを考えるな。俺のことだけ考えてろ」
耳元に囁かれる。
「愛してるぜ」
ちゅ、と。
唇に触れた熱に呆然とするまもりを女性店員に押しつけて、ヒル魔は自分も洋服を選ぶためにその場を後にする。
「ヒル魔様は素敵な方ですね」
「え? あ・・・うん、はい・・・」
呆然としたままドレスを脱ぎ先ほどの服に着替えたまもりは、用意された紅茶に口を付けて生返事を返した。
「あんなに楽しそうなヒル魔様は初めて拝見しました」
「え? 楽しそうでした?」
「ええ、とても」
にこにこと笑う女性店員の口ぶりは虚言ではなさそうで。まもりは先ほどのヒル魔の様子を思い浮かべようとして、キスをされたところまで記憶を進めてソファに撃沈した。顔が赤いのが自分でもはっきりと判る。
「姉崎様も楽しそうですよ」
「そう、ですか?」
「ええ」
どのようなつもりかは知らないけれど、キスをされて、それで嫌悪感がわかなくて。
大分毒されてしまったな、と思って今度は気分が沈む。
まるで心だけ急展開するアトラクションに放り込まれたようだ。

さて、本当に。
明日からどうしようかしら。


ヒル魔は自身の服をまもりに見せることなくさっさとショップを後にした。
今度はエステサロンではなく美容院に連れ込まれたまもりはドレスに合わせたメイクとヘアセットをされる。
それがなんだか会議に出るという雰囲気ではなかったので、今更だが、本当に会合なんてあるんだろうか、と不安になってきた。
「ねえ、妖一さん。会合ってどういう形式なの」
「あ? 形式?」
「そうよ。だって会合って言うから堅苦しい席なんでしょう? なんでドレスとかいるの?」
「パーティーだからな」
「会合がパーティー?」
「行けば判る。パーティーなのに地味な服着てたら悪目立ちだ」
よく判らないが、とりあえずヒル魔の言うとおりで間違いないだろう、とまもりは考えるのをやめる。聞いて答えがない時に何度も重ねて聞いてもはぐらかされるだけだとこの一ヶ月でまもりはよくよく理解していた。

出掛ける準備をするため、この一ヶ月自宅代わりにしていたホテルへと戻る。
もうこの部屋に戻ることはないかもしれない。今夜で終わりだから。
この数日でこっそり書いておいた手紙をきれいにメイクされたベッドの上に置いた。
「おい、行くぞ」
「はーい」
先ほどの天鵞絨のドレスに身を包み、ヒールを履いて扉を開くと。
そこには髪を後ろになでつけて細いフレームの眼鏡をかけ、細身をタキシードに包み込んだヒル魔が立っていた。
「・・・・・・」
「なんだ、見惚れる程いい男か」
ケケケ、と笑うとそれはいつもの彼の表情だけれど、取り澄ましたような顔でいられてしまうと、もう別人のようだ。
耳だけが隠しようが無くてぴんと立っていたけれど。
「すごく、格好いいわ」
掛け値なしにそう褒めると、ヒル魔はにやりと笑ってまもりの手を取り、すっとそこに唇を落とす。
「お褒めにあずかり光栄の至り」
それがあまりにも嵌っていて、まもりはどぎまぎしながら眼鏡のことを尋ねる。
「妖一さんって目、悪かったの?」
「いや両目とも2.0。これは伊達だ」
「なんで?」
「視線がきつすぎるっつーんで、余計な威圧感出さないように勧められた」
「元々威圧感の塊みたいな妖一さんに、そんなこと言う人いるんだ・・・」
「正直すぎるぞ、テメェ」
チ、と舌打ちされても怖くない。そういえば、最初から威圧感のある人だったけれど、怖いとは思わなかったのだと思い出した。
「時間だ」
「ええ」
出される腕に掴まる、その手に躊躇いはない。
まもりは一度強く目を閉じると、ぱちりと開く。
そこには一人の美しい女性が有った。 

<続>
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