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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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お手をどうぞ

(ヒルまも一家)

+ + + + + + + + + +
護が傷だらけで帰ってきた。まもりはボロボロの護の姿に飛び上がって驚く。
「ど、どうしたのその怪我?!」
「あー、うん。ただの擦り傷とかひっかき傷だよ」
当の本人はけろりとしたもの。焦るまもりは、それでも不自然に丸まって腕に抱えられている護のシャツに気がついた。
「何か持ってるの?」
「うん」
もぞ、とそれが動いた。
「落ちてたから拾ってきたんだ」
シャツを捲って現れたのは。
「怪我してるから手当てしてあげようと思って」
「・・・え?」
そこから顔を出したのは、猫や犬といったものではなかった。

ノートパソコンを見ながらアヤが告げた。
「隼だ」
はやぶさ、とまもりは繰り返した。羽が折れたらしいのを、素人らしくない手つきでヒル魔が固定している。
咬まれないように護が口を押さえていて、妖介はその隣で怪我の保護の為の箱を作っている。
普段は人の出入りがあまりない護の部屋の人口密度が本日は高い。
アヤの部屋ほどではないが、護の部屋も物が少なくすっきりしている。
青色をベースにした家具で統一された部屋の中央、ラグマットの上に新聞を敷いて男性陣は作業していた。
「よし」
ヒル魔が包帯で羽をきっちりと固定した。
「箱出来たよ」
羽が折れた状態で暴れ回らないように、衣装ケースを改造した箱に隼が入れられる。
案外大人しく隼はそこに収まった。
「しばらく固定して様子見だな」
「そうだね」
「それにしても・・・どこから拾ってきたの?」
まもりが不思議そうに問う。雀のヒナが落ちているというのならよく聞くが、これは隼、猛禽類である。
「さあ。たまたま歩いてたら滅多に吠えない近所の犬が吠えてたから、近づいたらこの子が落ちてたんだよ」
護は動物が好きで、そして懐かれる事が多い。猫でも犬でも動物の方から近寄ってくるのだ。
引っ越してきてさほどでもないのに、もう街中の動物は全て護のことを知っているかのような有様である。
「扱いはヒル魔くんも上手だったけど、懐かれるとはちょっと違ったわよね」
「そーだな」
エサについて真剣に姉弟で調べている姿を見ると、野鳥だから飼えないんじゃ、とか、動物病院に預けた方が、とか、そういった言葉も言いづらい。
でも隼は飼えないだろう、やっぱり。まもりはヒル魔に言う。
「やっぱり行政に届けた方がいいんじゃない?」
「別にいいだろ」
まもりの言葉に、ヒル魔はひらりと手帳を振った。
それにまもりは剣呑な視線を向けるが、まあ怪我の治療だからそんなに長くないだろう、と目を瞑る事にした。
昔に比べて随分と寛容になったものだわ、と己を自画自賛しながら。

隼はまだ幼かったのか、それとも護が気に入ったのか、野生にあるべきはずの警戒心もなんのその、あっさりと口を開いて彼の手からエサを食べた。
そのうち護の顔を見るとエサを催促するようにキーキーと鳴くようになった。
その姿が可愛らしくてまもりもつい微笑んでしまう。
「やっぱり好かれるのは才能かしらね」
「そうなのかな」
護も楽しそうにピンセットでエサをやる姿を微笑ましく見つめ、まもりは動物を飼うのはいいことね、と笑みを零した。この子が元気になって出て行ったら寂しくなって、何かペットを飼いたいと言い出すかもしれない。
その時は何を飼うのかしら、とそんなことを考えながら、まもりは夕飯を作るべくキッチンへと足を向けた。

そして日は過ぎ、怪我が癒えたのを確認した護はそっと箱から隼を出してやった。
箱の上に載せて固定していた包帯を外してやると、ばさばさと羽ばたく。
異常なく骨が繋がったのを見て、護は相好を崩した。
「よかったね」
キー、と隼が応じる。護は隼が癒えればちゃんと野性に帰すつもりで、特に名前もつけていなかった。
今も窓は開けっ放しだし、特に目印も付けていない状態だ。
「さあお行き」
ところが。
隼は護の方を見るばかりで、一向に飛び立とうとしない。
羽は充分治ったはずだが、固定期間が長くて力が出ないのだろうか。
護は少し考えると、隼に腕を伸ばした。と、まるで呼ばれたかのように隼はふわりと羽ばたき、護の腕にとまる。
「イタタ!」
爪が食い込んで護は飛び上がる。その声に驚いて隼は箱の上に戻った。
「・・・そっか、鷹匠みたいに何か巻かないと駄目なんだな」
護はとりあえず椅子に乗せてあったクッションを腕に巻き付け、紐で固定した。
もう一度差し出すと隼は心得たようにそこに止まる。
そのまま護は向かいにある父の書斎をノックした。
「お父さん」
「入れ」
簡潔な声に護は扉を開く。腕に載った隼に室内にいたヒル魔はちょっと目を丸くした。
「どうした」
「うん、逃げないんだよね。窓開けたりしたんだけど」
腕は今ちょっと応急でこれ巻いたんだけど、と不格好な姿を見せる。ヒル魔はじっと隼を見つめた。
「・・・特に不調はねぇみたいだが、飛ばねぇのか?」
「うん。もしかして固定してる間に筋肉が衰えたかな、って思ったんだけど」
「そのまま外に出してみろ。飛ぶかもしれねぇ」
「そう。判った、ありがとう」
護はそのまま玄関に向かう。サンダルを突っかけて、外に出る。久しぶりの外に、隼は首をしきりに動かした。
「ほら、自然におかえり」
そっと声を掛けて飛ぶのを促すが、どうにも飛ばない。
脚が引っかかったか、と即席の腕カバーを見るが、特にその様子もない。
「もう怪我は治ったんだよ。行きなさい」
腕を振って促しても、隼はキー、と鳴くばかりで離れたがらない。
「もしかして・・・」
「懐かれたな」
背後からのヒル魔の声に護は渋い顔をした。
「やっぱり? 僕、接点は最小限にしたんだけど」
「テメェはどうにも動物に好かれる質だからな」
試しにヒル魔が手を伸ばすと、それだけで隼は警戒してくちばしを突き出してくる。
「ほらな」
「どうしよう」
そんなつもりじゃなかったのに、と困惑する護に隼が小首を傾げる。
お強請りするような仕草が可愛くて、護はつい笑ってしまった。
そしてこうなっては仕方ないか、と腹をくくる。
「ねえ、お父さん。僕この子飼ってもいい?」
「ドーゾ」
「じゃあ名前決めないとね」
雄かな、雌かな、と改めて調べるべく室内に戻る護の腕の上で、隼は嬉しげにキー、と鳴いた。


「で、飼う事にしました」
護の言葉にまもりは目を見開く。
「ええ?!」
「大丈夫、エサは自分で捕ってくるように言ったから」
「言って聞くの!?」
「責任持って面倒見るよ」
ねえ、と箱の上に載った隼に声を掛けるとキーと返事がある。
「・・・なんだか昔のヒル魔くんとケルベロスみたい」
ふう、とまもりはため息をつく。気は進まないが懐いて離れないのであれば仕方ないだろう。
「でも! ちゃんと届出とかしないと駄目よ!」
こればかりは譲れない、と言ったまもりの前にヒル魔が顔を出す。
「届出ならしておいたぞ」
その手にはなにやら書類があった。
まもりがあまりの早さに絶句するのを尻目に、ヒル魔は護に書類を渡す。
「ついでにこれもやろう」
「あ、助かる!」
共に革のグローブを受け取り、護は顔をほころばせた。
猛禽類の爪は本当に痛いのだ。グローブなしでは無理である。
「名前はどうするの?」
まもりの言葉に、グローブを嵌めて隼を呼んだ護はにっこりと笑う。
その手にふわりと優雅な仕草で隼が載った。
「雌だし、ハーピーにしたよ」
「はーぴー?」
「お父さんはケルベロスだったって聞いたから」
「ホー」
納得するヒル魔と首を傾げるまもりに護は笑う。
「ギリシャ神話に出てくる怪鳥だよ」
「・・・なんかもうちょっと可愛い名前にしてあげればいいのに」
「いいんだよ。我が家の鳥なんだから」
ねえ、ハーピー? と、手に載る隼にそう問いかければ、ハーピーはキー、と鳴いて嬉しげに応じた。


***
ヒルまも一家話をいくつか書いていたら全て護の話になりました。二女のあかりを出す前に書くつもりだった護のペット、隼のハーピーです。今後色々と活躍してくれるはずです。主に偵察とかで。
鳥は可愛いですよ・・・! 私は猫よりも犬よりも鼠よりも鳥派です。オカメインコ飼いたいなあ。

なお、作品内での隼についてはご都合主義によって作成されてますので、本来の生態とは著しく異なっている事をここでお断りさせていただきます。

※日本産のハヤブサは野鳥保護の法律により飼育は出来ません。許可を得て輸入・繁殖しているものは種類によって飼育は可能ですが登録が必要な場合があります。くれぐれも鳥の雛は拾わないようにご注意下さい。
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