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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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うずき

(まもりと麻黄中トリオ)

※45000HITリクエストお礼作品

+ + + + + + + + + +
朝練の最中に栗田が不意に顔を上げた。その視線の先にはヒル魔。
彼はそのままじっとヒル魔を見つめ、次いで隣に立つムサシに顔を向けた。
「ねえ」
それにムサシはやや眉を寄せて口を開いた。
「ああ、そうだな」

放課後。
まもりは部活に向かうべく昇降口で靴を手にした。そこに近づく人影がある。
「姉崎」
「あら、ムサシくん。どうしたの?」
「ん。ちょっとばかり買い出しに行って欲しいんだが」
「え? うん、いいわよ?」
珍しいわね、とまもりは受け取ったメモを見る。だが、その内容は常の買い出しとは異なっていた。
「ええと、スポーツドリンクは判るわ。でも・・・冷えピタに風邪薬?」
なんで? とまもりは首を傾げる。部活に風邪薬は必要ないと思うのだけれど。
「結構量があるだろうから、ヒル魔と一緒に行ってくれ」
「ええ?」
そんな大した量でもなく、それに彼だって自分の練習があるだろうに、と眉を寄せるまもりの視界に、今まさに練習に向かおうというヒル魔が現れる。
「おいヒル魔」
「アァ?」
不機嫌そうに寄せられた眉の下、眼光はいつもより厳しい気がする。
思わずたじろぐまもりとは対照的に、ムサシは平然とのたまった。
「買い出しに行ってこい」
「断る。なんで俺が買い出しなんぞに行くんだよ」
「あの・・・、だったら私が一人で行くわよ?」
「いや、二人で行って欲しいんだ」
「だったらテメェが行けよ、糞ジジィ」
不機嫌を露わにするヒル魔にまもりは困ったように佇む。
「他の連中の練習は先生に任せておけば平気だろ」
大体荷物は部室に、と言いかけたヒル魔は口をつぐんだ。
彼の視線を辿れば、そこには彼の荷物を手にした栗田がいた。
「ヒル魔の荷物、これで全部だよね」
「ああ、そうだな」
「おいちょっと待て! なんで全部持って来てんだ糞デブ!!」
頭に血管を浮かせて怒鳴るヒル魔に、ムサシと栗田は呆れたような顔をする。
そうしてあたりに憚るように声を潜めて、囁くように告げた。
「あのなあ、自覚なしか?」
「ァア!?」
「ヒル魔、熱あるでしょ」
栗田があっさりと言う。
「ええ?! やだ、ちょっと大丈夫?!」
「糞ッ、触るな!」
焦るまもりが伸ばした手を、ヒル魔は遠ざけようと腕を上げたが、案外あっさりとまもりはヒル魔の額に触れた。
それは彼の動きがいつになく鈍かったからに他ならない。
そうして触れた額は、驚く程に熱かった。
「すごい熱! なんで平然としてられるの!?」
「前もこんなことあったよね」
「ああ。こいつ自覚症状がないらしい」
それにヒル魔は忌々しげに舌打ちした。
「自覚がねぇわけねぇだろうが」
「あるのに来たのか」
我慢強いにも程がある。呆れ口調でムサシはそう呟いた。
「とにかく、そんなんで練習したらこじれるぞ」
「そんなの気の持ちようだ」
どうあっても休もうとしないヒル魔を説得するムサシを背に、栗田はまもりに囁いた。
「だから、『買い出し』に行って欲しいんだ。行き先が遠いから、今日はそれ買ったら直帰してね」
その言葉にまもりはようやく理解した。見た目に平然としているから他の部員は気がつかないだろうし、仮に判ってもこの二人以外は誰も彼に帰れとも休めとも言えないだろう。言ったところで帰らない気もするし。
不意に小さく胸が痛んだ。けれどそれが何なのか、気づいたときには霧散してしまっていて。
まもりは頭を振ると、部室に行って他の部員の目に晒されないように、そして確実に帰るようにと気遣った二人の気持ちを無駄にしないように、そっとヒル魔の袖を引いた。
「ヒル魔くん、行こう」
「アァ?!」
「買い出し先が遠いから、早く行かないとお店閉まっちゃう」
大義名分を口にして、彼が帰るのが決して不調からではないと誰にともなく言うように。
「テメェ・・・」
唸るヒル魔の目元が、そう言われれば何となく赤い。本当に用心深く見ないと判らないほどの変化。
「ほら、行ってこい」
「気を付けてね」
ぐい、とムサシと栗田に押されて、ヒル魔は渋々荷物を抱えた。
さすがに銃器が詰まった鞄はまもりには危ないし重いので持てない。
「姉崎、頼んだぞ」
「うん」
「チッ!!」
盛大に舌打ちしたヒル魔はそれでもそれ以上は反論せず昇降口の扉を開けた。

薬局でメモにあった物を買い、ヒル魔の後についていくと、彼はふいにぴたりと足を止めた。
「ここまででいい。糞マネ、テメェは部活に戻れ」
「え? でもヒル魔くん、この時間にお家に誰かご家族がいるの? いないなら私が・・・」
「問題ねぇ」
はあ、と息を吐き出す顔は先ほどまで平然としていたのに、徐々に不調を露わにしてきていた。
今は立っているのも辛いのだろう。
「テメェはデビルバッツのマネージャーだろ。俺一人に構ってねぇで部員の面倒見とけ」
「でも」
栗田とムサシに頼まれた手前、投げ出せずまもりはヒル魔を見上げる。
「糞アル中がいるが手は足りねぇだろうからな」
「それは栗田くんとムサシくんが手伝うって言ってたわ」
「あいつらにはそんな芸当できねぇよ」
その言葉は一見彼らを小馬鹿にしたようで、だが最も理解した者の言葉で、そうして存外棘のない声で。
こんなヒル魔の言葉に、まもりはぎゅっと手を握りしめた。また小さな胸の痛みを覚える。
「だから行け」
どこか願うような響きを感じ取って、まもりは渋々頷いた。
ほっとしたようなヒル魔の気配に、まもりはこれ以上ここで立ち話させて余計に体力を使わせてはいけないだろうと彼を見つめる。
「じゃあ、私戻るから。あったかくして寝てね。熱が下がるまで学校に出てこないでよ?」
「ハイハイ」
緩慢に頷くのに後ろ髪を引かれる気持ちでそれでも踵を返す。
途中振り返ると、ヒル魔の姿はすでになかった。
それに今度は更に胸の痛みが大きくなった。
一体どうして、と思うけれども原因はわからない。
色々思い悩んで、けれどまもりは全てを振り切るように学校に戻る。
学校に戻ればやることは山積みだ。作業に没頭したら、きっと忘れる。
こんなに小さな痛みだもの。


けれど胸に残った痛みは棘が刺さったかのようで、酷く疼いてしばらく引く事がなかった。

***
大変長らくお待たせしました! 45000HITを踏まれましたモナコ様リクエスト『麻黄中3人組の仲良し具合にちょっと嫉妬するまもりちゃん』でした。仲良しというか信頼というか。入り込めない男の友情にちょっと置いて行かれた気持ちになって、でもなんでそうなるのか判らないまもりちゃんのもどかしさが出てればいいのですが。
リクエストありがとうございましたー!!

モナコ様のみお持ち帰り可。
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わー感激です★
「入り込めない男の友情」伝わってきました。後ろ髪引かれる思いのまもりちゃん…看病しないまもりちゃんていうのもなんだか新鮮ですね。


じっくりゆっくり味あわせていただきました。
カゼ?は大丈夫ですか?なんだか変な天気が続いてますが、お体大事になさってください。

9月下旬の寒さだったり、昨日みたいに蒸し暑かったり…
(ここでラジバンダリ挟みたいとこですが)

これからも小説楽しみにしてます。
モナコ URL 2008/08/29(Fri)02:17 編集
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