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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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口は災いの元

(ヒルまも高校卒業後)
※『適正価格』の後です。

+ + + + + + + + + +
まもりは常々不満を抱いていた。
ヒル魔とつきあい始めてから今に至るまで、彼はことあるごとに脅迫手帳を振りかざしてはまもりに見せつけるのだ。まだ出所が判明しているチアのコスプレとか女マフィア姿の写真から、それこそどこから手に入れたのその情報!? というものまで。
それを悪用する事は今のところないようだけれど、今後どうなるか考えるだけで恐ろしい。
ヒル魔くん、私たちは今つきあっていて今のところ問題ないからいいけど、もし今後行き違いがあって別れる事になってもそのデータで私を脅す事はしないでよ? それこそ犯罪よ?! ・・・とまもりは内心思っている。
口に出したらそれこそ今から別れる算段か、と逆ギレされるかもしれないからだ。
まもりだって我が身が可愛い一介の女子大生に過ぎないから。それでも考えてしまう。
「でも付き合うってそんなに片方ばかり悪い目をみなきゃいけないものじゃないと思うの」
「その『でも』っつーのはどこにかかるんだ」
「え?!」
思わず呟いた言葉に返答があって、驚いて振り返れば呆れたようなヒル魔の姿。
「何かご不満デモ?」
「イイエ」
「言いたい事があるなら口に出した方が精神的健康のためにもイイデスヨ?」
にやにやと笑うくせにどこか不穏な空気を感じ取って、まもりは首を振る。
本当に何をしでかすか判らない男に余計な事は口にしない方がいいのだ。
「お気遣いなく! 大丈夫よ。ところでヒル魔くん、これだけだとお昼ご飯には少し足りないんじゃない?」
「ア? 問題ねぇよ」
「そうかしら」
まもりは手元の鍋を見下ろした。今日のお昼ご飯はうどん。
一応かき揚げを作っておいたけれど、やはり男性には量が少ないかもしれない。
少し考えて残りご飯でおにぎりを作る事に決めた。もし余っても冷凍してしまえばいいだけだ。
うどんにかき揚げを載せて、おにぎりと一緒にトレイに載せる。
「寄こせ」
「ありがとう」
ヒル魔にトレイを運んで貰って、まもりは冷えた麦茶とグラスに氷を入れて後に続いた。
「じゃあ食べましょ。いただきます」
「イタダキマス」
しつこく言い続けた結果習慣になった食前の挨拶を終えて箸に手を伸ばす。
まもりがちゃんと鰹節と昆布で出汁を取ったつゆはヒル魔も好きらしく、外で食べるときにはうどんに七味を欠かさない彼であっても最初は入れずに味わうのだ。
それも一緒に生活し始めてから知った一面なのだけれど。
「で? さっきの『でも』っつーのは何なんだ?」
「え?! まだ言うの!?」
「さっきの事をちゃんと聞いてねぇのに『まだ』はねぇだろ」
食事しながらまもりはヒル魔の視線を受け止め困惑する。
言いよどむまもりを見据えながらヒル魔は七味を手に取り、缶を振った。
「なんでもないってば」
「その割には随分不穏な台詞だったな? 誰が悪い目見させてるって?」
「う・・・」
やっぱり聞かれていた。ずず、とうどんを啜る音は平和そうなのに、なんでこんな詰問をされなければならないのだろうか。
次第に腹が立ってきた。なんでさもまもりが悪い、という雰囲気なのか。
(私が何かしたって言うの? 未だに高校の時のつまみ食いのこと言うし、セナの事を言うと不機嫌になるし、ご飯作るのだって掃除だって私がほとんどやってるのに感謝の一言もないし、そもそも好きだとか付き合おうとかいう台詞もなかったわよねそういえば。・・・ヒル魔くんにとって私って何なのかしら。家政婦? その割にはキスもそれ以上も色々してるけどでもやっぱり言葉もないし・・・もしかしなくても、私、騙されてる、のかしら)
ぐるぐると色々な言葉が脳裏を巡った結果、まもりは箸を置いて衝動のままに口を開いた。
「別れてください」
「ッゴホ!!」
途端にヒル魔が派手に噎せた。
まもりの目の前でヒル魔がごほごほと咳き込んでいる。息苦しいのか顔も真っ赤になっていて、いつもの飄々とした様子とはかけ離れたその姿にまもりは目を丸くしてただ見つめていた。もしかして鼻からうどんが出ているかも知れない。
まもりは無意識に手元に携帯を引き寄せていた。
「痛っ・・・」
七味が鼻の粘膜に張り付いたのか鼻を押さえて涙目で呻くヒル魔の耳に、のんきな音が聞こえた。
それはまもりの携帯カメラのシャッター音。
「・・・って、てめ・・・ゲホッ」
「と、撮っちゃった・・・」
まもりは携帯片手に呆然と呟いた。次第にその顔がゆるゆると笑みに歪む。
「撮っちゃ、った、じゃ・・・ねぇ!!」
真っ赤になって噎せていてしかも涙目のヒル魔が睨んでも全然怖くない。
むしろ微笑ましい。まもりは手近なティッシュボックスを渡してあげた。
盛大に鼻をかむヒル魔は未だ小さく噎せつつ、麦茶を飲んでやっと落ち着いたか深々とため息をついた。
そして今度は頭に幾つも血管を浮かせた状態でまもりに向かって怒鳴る。
「何を突然言い出すんだこの糞女!!」
「うん、ごめんね」
思わずまもりは謝った。それに眉を寄せつつ拍子抜けしたようにヒル魔はまもりを睨め付ける。
「でも、本気で言ったの」
「アァ?!」
声を荒げるヒル魔に、まもりは先ほどヒル魔が噎せたせいで汚れたテーブルを拭きながら苦笑した。
「さっきはもし別れる事になったらその数ある脅迫ネタはどうなっちゃうのかな、って思ってて」
不機嫌を露わなヒル魔にまもりは視線を向ける。
「一緒に生活してても脅迫手帳は出すし付き合おうとも好きだとも言われてないし、私って何なのかなって思ったら腹が立ってつい言っちゃった」
「ホー」
「でも」
まもりはにっこりとヒル魔に笑いかける。
「ヒル魔くんがあんな一言で取り乱すくらいには好かれてるって判って安心しちゃった」
「・・・ホホー」
ヒル魔の片眉がピンと跳ね上がった。口元が引きつっている。
「で? 今の行動は?」
携帯を指されながら言われ、まもりは悪戯っぽく瞳を瞬かせた。
「だって、一方的に私ばっかり弱み握られてるのってフェアじゃないでしょ? だから一つくらい私も弱み、握れたって思って」
「ホー。ソウデスカ」
「宝物にするわ」
そんな嬉しげなまもりに、ヒル魔はおもむろに立ち上がった。
「ヒル魔くん? もう食べないの?」
「・・・・・・先にやる事が出来た」
「え? 何?」
「本当にテメェは糞天然鈍女だよナァ」
小首を傾げるまもりの肩を、ヒル魔ががっちりと捕らえた。
「え?!」
「俺がどれだけテメェを愛してるか、言葉だけじゃ足りなそうナノデ行動でも証明させてイタダキマス」
まもりはヒル魔の愛している発言に顔を赤くしたが、その直後の発言と肩を押さえる力の強さに青くなる。
「俺と別れるとか冗談でも二度と言えないようにしねぇとな?」
ひきつるまもりに向けられた声ばかりは優しげなそれは、まさしく悪魔の笑顔であった。


「あれ、携帯変えたの?」
夏が近く、そろそろ暑いだろうに、きっちり肌を露出しない格好で現れたまもりの手には真新しい携帯電話。
めざとく見つけたクラスメイトにまもりは曖昧な笑顔を浮かべる。
「しかも最新のじゃない! いいなあ」
「あれ? でも前のもそんなに古くなかったわよね?」
「う、うん・・・実は壊しちゃって」
「え? 水にでも落としたの?」
「あれね、干しておくと使えたりするよ」
友人達の助言にまもりは両手を振る。
「う、ううん。ホントに壊れちゃったの。その、落としちゃって割れちゃって・・・」
「へえ? それじゃ随分派手に落としたんだね」
しっかり者なのに珍しい、と口々に言われながらまもりは手のひらの携帯を見下ろして前の機種を思い返す。
派手に正しく曲がる方向の逆に折られたアレからはデータが抜き出せず、あの貴重な写真は完全に消去されてしまった。
まもりはため息をつく。その横に人影が立った。
「オイ」
突然現れたヒル魔に、クラスの空気が凍り付く。
「何?」
「授業が終わったら廊下で待ってろ」
「え?! なんで・・・」
「自力で帰れるっつーなら別にいいがな」
「・・・・・・」
まもりは眉を寄せたが結局頷いた。正直ここまで来るのも相当辛かった。
その返事を見届けて、ヒル魔はにやりと笑うと踵を返す。
「だ、大丈夫?」
「まもりちゃん、調子悪いの?」
無理しない方が、と言われてまもりは慌てて首を振った。その顔が朱に染まる。
「へ、平気よ! 大丈夫、いざとなったらヒル魔くんが送ってくれるっていうから」
「・・・そのヒル魔が怖いんじゃない」
「何か脅されてるんじゃないの?」
心配そうに見つめられて、まもりは大丈夫だから、と再三繰り返した。
肌も出せないくらい散々に跡を付けられて、それでも愛想が尽きないのは私くらいよ、とまもりは内心独り言ちる。
そう口にしたらきっと彼はまた楽しそうに笑うだけなので言えないけれど。
まもりはつくづく思った。
やはり口は災いの元、なのだ。


***
友人DさんとKくんの二人と話していたときに「ヒル魔の鼻からうどんとかどうよ」とか言われてどんなギャグだ、と騒いでいたらできた話です。まもりちゃんの天然っぷりも最早アレですが、ヒル魔さんが本当にまもりちゃん大好きで書いていて可笑しくてしかたなかったです。
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