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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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空蝉を捨てて

(ヒルまも)
※『金色独占欲』の後です。

+ + + + + + + + + +
ビッと音を立てて手の中の写真はあっという間に紙片へと変わった。
次々に破られるそれを、コーヒーを手にやって来たまもりはただ呆然と見てしまう。
「何・・・してるの・・・?」
「ア?」
ヒル魔は青くなっているまもりに不審そうに片眉を上げて応じた。
「掃除」
「そ、れにしたって、写真、破る?! それも私の!!」
そう。
ヒル魔が破っていたのは、よりにもよって恋人のまもりの写真だった。
「なんだ、売った方が良かったか」
「そうじゃないわよ! 何よ・・・なんでよりにもよって私の・・・」
震えるまもりにヒル魔は訳がわからない、という風情で肩をすくめた。
ひょい、とまもりが手にしていたカップを取り上げて一口飲む。
「写真は重くて嵩張るし邪魔なんだよ」
「それにしたって、捨てなくても!」
思い出を粉々に砕いて捨てるかのような処遇に、まもりは涙さえ浮かべる。
「近場ならまだしも、今回はアメリカだ。そんな場所に写真なんざ持って行けるか」
「~~~じゃあ一人で行けばいいじゃない! 私は行かない!!」
「アァ?!」
「私の写真をそんな躊躇いなく捨てられるような人について行けないわ!」
真っ赤になって怒るまもりにヒル魔は呆れたように口を開いた。
「アホか」
「誰がよ!!」
「・・・この写真、何を使って撮ったか覚えてるか?」
「カメラ、でしょ」
「正確にはデジカメな」
そしてヒル魔はどこからか取り出した小型なそれを見せつけるようにまもりの目の前で振った。
「それでこうやって―――」
シャッター音を響かせてヒル魔はまもりの泣き顔をフレームに収めた。
「撮った写真はデータになる。判るな?」
「うん・・・」
「データなら嵩張らず保存できる。超アナログ人間なテメェでもそれくらいは判るだろ」
こくり、とまもりは頷いた。
「だから紙ベースは廃棄してんだ。データが残ってたらいくらでもプリントできるからな」
アルバム代わりのロムやらSDカードやらを見せられてもまもりは腑に落ちないような顔をしている。
「でも・・・破られるのは気分が悪いの」
それにヒル魔はますます呆れた顔をする。
「じゃあテメェは写真が全部自分の知らないところで売りさばかれても文句はねぇんだな?」
「ええ?! なんでそういう話になるの?!」
「形あるまま捨てたのを拾った誰がどうしようと勝手だろ。一度ネットに出てみろ、半永久的に回収不可だ」
「そ、それは嫌」
「だから破って捨てる。これは後で燃やすが念のため、な」
ビッと再び写真が破られる。
そのどれもにまもりが映っていて、それはひどく嬉しそうだったり幸せそうだったりで。
まもりはヒル魔の手元をじっと見ていたが、やがて自分でもその写真を手に取った。
「・・・なんだかね、幸せを破り捨てられるみたいで嫌なの」
その言葉に、ケ、とヒル魔は小さく笑う。
「どうせそんな甘臭ェコトだろうと思ったぜ」
「だって写真なんてあんまり捨てないじゃない」
「そんなことねぇよ。思い出なんて後生抱えてたら重いだけだ」
ばさばさと不必要なものを捨てていくシンプルさは時に傲慢でけれど羨ましい程縛られなくて。
そうやって彼は飛ぶのだ。どこまでも高く高く、自らの夢を叶えるために。
「でもデータでは取っておくんだ?」
「邪魔にならねぇならな」
その間も写真を破る手を止めないヒル魔を見上げる。そしてまもりも一枚、破ってみた。
意外にあっけなく破れるそれを惜しむようなまもりにヒル魔が声を掛ける。
「オイ」
「何・・・」
顔を上げた途端、唇が触れる。すっと掠めるようなあたたかいキスがまもりの言葉を奪った。
「データでも限界がある。これからのことも抱えられる容量は空けておけよ」
ニヤニヤと笑われて、まもりは赤くなりながら今度は躊躇いなく写真を破り捨てる。
ビリビリと紙を裂く音だけが段ボールだらけの室内にしばし響いた。


明日、二人は新たな場所へと旅立つ。

***
写真を破って捨てることが出来るかどうか、でちょっとした話題になったので。
私は躊躇いなく破って捨てられる方です。取っておいても見返すこともないのでばっさりと。
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