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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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終焉の刃・6(完結)



+ + + + + + + + + +
セナは鈴音を、主はまもりを寝かしつけてから、彼らは二人で顔を合わせた。
先ほどの一幕があった執務室に二人は戻り、ソファに腰を落ち着ける。

鈴音がセナを探し出し、何かがおかしいと告げたとき、セナはすぐまもりを抑えるべきだ、と言った。
主の狙いが判らない今、不安定な状況のまもりを一人にしたら危ない、と。
屋内の使用人は夜になると皆別棟に行ってしまう。
今までは夜の間は主とまもりは共にいたために彼女一人で動く事はなかったが、もし一人になってしまったら何をしでかすか判らない。
そして不安は的中した。
向かった部屋にまもりはおらず、飛び込んだ先の主の部屋で見たのは、まさに刃を振りかざした彼女で。
けれど主にとってその行動は想定内だったのだろう。
セナが押し倒さなければ、ヒル魔はまもりの腹を庇うような形で彼女に倒れ込んだはずだ。
そうなれば、まもりの翳した刃は間違いなく彼の胸を背後から貫いただろうから。
今となっては言う事ではない、と唯一位置的に彼の目論見が知れたセナは口をつぐんでいる。
この家の使用人のいいところは、口の堅いところだ。
それは誇れるんですよ、と主に告げると彼はセナをちらりと見て、そうだな、と同意した。
「・・・テメェは、あいつを浚うつもりで来たんだろ」
彼にしては躊躇いがちな声に、セナは目を丸くした。
「いえ、そんなつもりは全く」
それに主は剣呑な視線をセナに向ける。
「なら、あの日のテメェらはどこに行く気だった」
その言葉に、セナはどうにも引っかかっていたものがやっと解けたのを感じた。
どうして主があれほどまでに苛烈に怒ったのかも。
判ってしまえば単純だった。
彼は、もうその時には既にまもりの事を愛していたのだ。
セナは唇に笑みを浮かべて口を開く。
「私とまもり様は、姉弟みたいなものでした。そこに性的なものは全くなかったんです」
「その割には駆け落ち寸前だったじゃねぇか」
「そう仕向けた方がいらっしゃいます」
それに主の眉がきつく寄った。
「・・・先の奥方か」
まもりの母。まもりにあの懐刀を授けた人。
最後まで主を毛嫌いした、貴族の矜持だけでできた女だった。
貴族にあるまじき色彩の髪、悪魔のような風貌。
人にはおよそ好かれない姿を、殊の外嫌った女だったから。
「当面の婚約者という立場にヒル魔様がいらしたのは、血統を何より重んじる先の奥方様には耐えられなかった・・・」
出来る事ならまもりには別の男をあてがいたがった彼女は、それこそ八方手を尽くしたが全て無駄だった。
『蛭魔妖一』には、その時に既に貴族の世界でも誰も対抗できる相手がいなかったのだ。
「更に、まもり様がヒル魔様に心を傾けたのは、先の奥方様には考えられないことだったようです」
そこで彼女は一計を案じた。
まもりの気持ちが彼に向いているのを承知の上で、全ては家名のための行動に過ぎないのだと。
情報収集能力に長けていた彼の情報源を使用人達全てだと告げ、孤立無援を装い、祝言を控えた娘が彼よりも下の身分の者と逃げ出すように。
体面に泥を塗られた格好の蛭魔妖一が婚約破棄してしまえばしめたもの。
婚約破棄をしないにしても、彼の手の届かないところでまもりが男児を産んでしまえばもう顔を合わせる理由はない。
「身勝手なことこの上ねぇな。あンの糞ババァ・・・」
今からでも墓の下から引きずり出して脳天打ち抜いてやりてぇ、と呟く彼にセナは苦笑する。
「私も先の奥方様には騙されましたから」
味方が居ない、という一言はセナにも衝撃だったが、後から考えればあれほどまもりに献身的な使用人達全てが言いくるめられたとは思いづらかった。
せいぜいがまもりの部屋付きの使用人と運転手くらいから聞き出せば充分だと思えたし。
「あの時、まもり様にここから逃げだそうと告げたとき、まもり様は逡巡なさいました」
「ホー」
「もう少しヒル魔様が私を撃つのが遅かったら、ここまでこじれなかったと思うんですけどねぇ」
ここぞとばかりの皮肉たっぷりの言葉に、主は派手に舌打ちした。


そうして夜が明け、怪我をした鈴音をまもりが自室に運ばせて親鳥よろしく面倒を見ている。
元から人の面倒を見るのが好きな性質なのだ。
きっちりと巻かれた包帯を眺め、鈴音はしょりしょりと音がする方へと顔を向ける。
「あの・・・まもり様、本当にいいですから。私、自分の部屋に戻りたいのですが・・・」
隣に座るまもりを見上げて、鈴音は嘆願する。
「いいえ。私のせいだもの、ここで寝てて! ちゃんと治るまで看病させてね」
「やー・・・ご主人様ぁ・・・」
リンゴを剥く彼女に取り合って貰えず、鈴音はその後ろのソファで新聞を読みつつくつろぐ主と、その隣で運んできたコーヒーを差し出しているセナに助けを求めるが。
「ウチの子供の命の恩人デスカラ、ごゆっくりなさってクダサイ」
当主はカクカクと妙な発音で楽しそうに言い放つし。
「やー?! やめて下さいそんな言い方!」
「まもり様は言い出すと聞かないからね。観念して看病されてて」
セナは達観したように告げるし。二人とも全然取り合ってくれない。
うう、と半泣きで鈴音はまもりに差し出されたリンゴをしょり、と囓った。

すっかり滑らかな声を取り戻したまもりに、セナは微笑む。
コーヒーに口を付けた主がそんなセナに視線を寄越した。
「屋敷管理はナシにしてやる代わりに、テメェには俺の秘書をやらせる」
「私には務まりませんよ?」
「随分とオベンキョウしてたんだから、なんとかなるだろ」
にやりと笑われて、セナは肩をすくめる。
あの後、まもりが心配でセナは最低限自分が食べていける職を得た後、長期戦で彼に対抗しようとどうにかのし上がる事も考えて勉強をしてみたものの、向いていないとつくづく思い知らされたのだ。
彼とまもりがうまくやっていけるようなら、もう必要ない知識だし、やはりただの使用人の方がいいなあ、と考えているのだけれど。
「後は実践でどうにかしやがれ」
にやにやと笑う彼はぎこちないセナの左腕をじっと見ている。彼なりにセナのことを考えているらしい。
「俺に嫌味を言える貴重なポジションだしナァ」
「買い被りすぎです」
「人を見る目は確かだぜ」
そう言って視線を走らせた先には、まもりと鈴音。

それにセナは笑って、なるほど、と素直に賛同したのだった。



***
ずっと気になっていた続きをやっと書き終える事が出来てほっとしてます。蓋を開けてみたら中編ほどの長さになってしまいました。当初はヒル魔さん・まもりちゃん・セナの三人だけで進めたのですが、どうしてもヒル魔さんがヘタレるというか甘くなりすぎるというか・・・。実は、話としては『血の呪縛』を書き終えたときに同時に作ってあったのですが、あまりに出来がひどかったのでずっと出せなかったのでした。

長々とお付き合いくださってありがとうございました♪
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