旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「私には、ヒル魔さまがいましたから」
まもりはまっすぐに高見を見つめる。
「確かに人の子と侮られ、出来の悪い弟子と蔑まれたことも数多くありました。けれどそれ以上に、ヒル魔さまが側にいてくださいましたから」
そうして、にっこりと笑みを浮かべる。
「私はそれだけで幸せです。勿論、その他にもたくさんの方々に助けていただいたので今の私があるんですけれども」
ケルベロスにポヨに鈴音にセナにムサシに栗田に・・・と枚挙に暇がない。
これだけたくさんの人に囲まれて生活できて、辛かったなんて思えない。
すっきりとした、嘘のない表情に高見は頬を緩める。
「・・・そうか。ヒル魔は最高の弟子を取ったんだね。ああ、もう奥さんと呼ぶべきかな?」
「えええっ?!」
まもりはその言葉に真っ赤になる。
いきなりそんなことを言われて、どうしたらいいかわからない。
「合方でもないんだし、恋人同士だし、同じ島に住んでるんだからもう同じようなものだろう?」
「や、やややそんなこと! いや、あの、その・・・!」
慌てふためいて手を振るまもりに、高見は苦笑交じりにその頭を撫でた。
と。
「触るなメガネ」
「え」
声がしたと思ったら、ぐいと引き寄せられる。
気づけばまもりはヒル魔の腕の中に引きずり込まれていた。
「ヒル魔さま?!」
「ったく、神殿に行ったらテメェらが駆け落ちしたっつーんですごい騒ぎになってたぞ」
ポヨの姿はない。きっと一度屋敷に戻った後、ケルベロスに聞いて一人迎えにきてくれたのだろう。
申し訳なさと嬉しさが半々の心地で、まもりはヒル魔の胸元にそっとしがみついた。
「まさか、第一位仙人さまの手中の玉を盗ろうなんて思ってないよ」
「そうだな。テメェは地底人の女に首っ丈だもんなァ」
「!?」
高見は目を見開く。ヒル魔はにやにやと笑って座ったままの彼を見下ろした。
「話す相手が間違ってるぞ。テメェはとっとと辞表出して地底に行って王に土下座して娘掻っ攫っちまえ」
「人事だと思って、あっさり言ってくれるね」
「ホー。それなら今、ここからテメェを地上に蹴り落としてやってもいいんだぞ」
「な、なんでですか!?」
物騒な言葉に、まもりは彼の腕の中で声を上げる。
軽い口調に紛れた深い嫉妬を察して、高見は両手を挙げる。
「すまなかった。君の愛しい彼女を連れ出した責任は取るよ」
「愛しい・・・」
まもりがぽっと頬を染めたのを見て、ヒル魔は無言でまもりの額にでこピンをかました。
神殿に戻ると、方々に散って彼らを探していた人々が高見を取り囲んだ。
「ああもう! どこに行っていらしたんですか!」
「よかったご無事で! ヒル魔様がすごい形相で向かわれたからてっきりもう蜂の巣かと!」
「ホー随分な言われようデスネ」
「ってヒル魔さま!? うわあごめんなさいごめんなさいいい!!」
ぎゃあぎゃあと賑やかな中、まもりの肩を叩く手がある。
振り返れば、それはムサシだった。
「あ、ムサシさま。すみません、ご迷惑をおかけしました」
まもりは高見に会ってムサシたちとお茶を飲んで帰ると言ったのだ。
当然ヒル魔の追求は彼にも向かっただろうと申し訳なく思う。
「いや、俺は別に迷惑は掛かってない。それよりもヒル魔だ」
二人の視線の先で、銃を片手に暴言を吐いた者を追い掛け回すヒル魔の姿。
「奴は相当イライラしてたから、後でまもり嬢ちゃんに八つ当たりするかもしれん」
「それならそれでもいいです」
まもりはふわんと笑う。
「ヒル魔さまがそれだけ心配してくださって、私は嬉しいと感じてしまいました。だから、お叱りは怖くないんです」
「ん、そうか」
ムサシは頷く。
結局のところ、まもりに被害が及ぶことはないだろう。それよりもケルベロスの方が気がかりだ。
まあ長い付き合いの彼のこと、上手にいなすだろうけれど。
そうして、高見は神殿に辞表を出して。
引き止める大勢の手を振り払い、一路空を飛ぶ。
指輪に唇を寄せて囁けば、応じる声が聞こえてくる。
茜色の空を突っ切って、夜の帳が下りる間際の地上。
地底の入り口となる洞窟の前で、小春が空を見上げている。
高見の姿を認め、満面の笑みを浮かべて。
その一杯に開かれた腕に、高見はためらいもなく飛び降りたのだった。
***
ひっさしぶりに桜雪奇談シリーズでした。実は高見を出したあたりからもうこの話が書きたくて仕方なかったという(笑)出だしが不意に下りてきたらあっという間に書けました。
まもりはまっすぐに高見を見つめる。
「確かに人の子と侮られ、出来の悪い弟子と蔑まれたことも数多くありました。けれどそれ以上に、ヒル魔さまが側にいてくださいましたから」
そうして、にっこりと笑みを浮かべる。
「私はそれだけで幸せです。勿論、その他にもたくさんの方々に助けていただいたので今の私があるんですけれども」
ケルベロスにポヨに鈴音にセナにムサシに栗田に・・・と枚挙に暇がない。
これだけたくさんの人に囲まれて生活できて、辛かったなんて思えない。
すっきりとした、嘘のない表情に高見は頬を緩める。
「・・・そうか。ヒル魔は最高の弟子を取ったんだね。ああ、もう奥さんと呼ぶべきかな?」
「えええっ?!」
まもりはその言葉に真っ赤になる。
いきなりそんなことを言われて、どうしたらいいかわからない。
「合方でもないんだし、恋人同士だし、同じ島に住んでるんだからもう同じようなものだろう?」
「や、やややそんなこと! いや、あの、その・・・!」
慌てふためいて手を振るまもりに、高見は苦笑交じりにその頭を撫でた。
と。
「触るなメガネ」
「え」
声がしたと思ったら、ぐいと引き寄せられる。
気づけばまもりはヒル魔の腕の中に引きずり込まれていた。
「ヒル魔さま?!」
「ったく、神殿に行ったらテメェらが駆け落ちしたっつーんですごい騒ぎになってたぞ」
ポヨの姿はない。きっと一度屋敷に戻った後、ケルベロスに聞いて一人迎えにきてくれたのだろう。
申し訳なさと嬉しさが半々の心地で、まもりはヒル魔の胸元にそっとしがみついた。
「まさか、第一位仙人さまの手中の玉を盗ろうなんて思ってないよ」
「そうだな。テメェは地底人の女に首っ丈だもんなァ」
「!?」
高見は目を見開く。ヒル魔はにやにやと笑って座ったままの彼を見下ろした。
「話す相手が間違ってるぞ。テメェはとっとと辞表出して地底に行って王に土下座して娘掻っ攫っちまえ」
「人事だと思って、あっさり言ってくれるね」
「ホー。それなら今、ここからテメェを地上に蹴り落としてやってもいいんだぞ」
「な、なんでですか!?」
物騒な言葉に、まもりは彼の腕の中で声を上げる。
軽い口調に紛れた深い嫉妬を察して、高見は両手を挙げる。
「すまなかった。君の愛しい彼女を連れ出した責任は取るよ」
「愛しい・・・」
まもりがぽっと頬を染めたのを見て、ヒル魔は無言でまもりの額にでこピンをかました。
神殿に戻ると、方々に散って彼らを探していた人々が高見を取り囲んだ。
「ああもう! どこに行っていらしたんですか!」
「よかったご無事で! ヒル魔様がすごい形相で向かわれたからてっきりもう蜂の巣かと!」
「ホー随分な言われようデスネ」
「ってヒル魔さま!? うわあごめんなさいごめんなさいいい!!」
ぎゃあぎゃあと賑やかな中、まもりの肩を叩く手がある。
振り返れば、それはムサシだった。
「あ、ムサシさま。すみません、ご迷惑をおかけしました」
まもりは高見に会ってムサシたちとお茶を飲んで帰ると言ったのだ。
当然ヒル魔の追求は彼にも向かっただろうと申し訳なく思う。
「いや、俺は別に迷惑は掛かってない。それよりもヒル魔だ」
二人の視線の先で、銃を片手に暴言を吐いた者を追い掛け回すヒル魔の姿。
「奴は相当イライラしてたから、後でまもり嬢ちゃんに八つ当たりするかもしれん」
「それならそれでもいいです」
まもりはふわんと笑う。
「ヒル魔さまがそれだけ心配してくださって、私は嬉しいと感じてしまいました。だから、お叱りは怖くないんです」
「ん、そうか」
ムサシは頷く。
結局のところ、まもりに被害が及ぶことはないだろう。それよりもケルベロスの方が気がかりだ。
まあ長い付き合いの彼のこと、上手にいなすだろうけれど。
そうして、高見は神殿に辞表を出して。
引き止める大勢の手を振り払い、一路空を飛ぶ。
指輪に唇を寄せて囁けば、応じる声が聞こえてくる。
茜色の空を突っ切って、夜の帳が下りる間際の地上。
地底の入り口となる洞窟の前で、小春が空を見上げている。
高見の姿を認め、満面の笑みを浮かべて。
その一杯に開かれた腕に、高見はためらいもなく飛び降りたのだった。
***
ひっさしぶりに桜雪奇談シリーズでした。実は高見を出したあたりからもうこの話が書きたくて仕方なかったという(笑)出だしが不意に下りてきたらあっという間に書けました。
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鳥(とり)
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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