旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりは霞雲を手に、隣に座る高見を見上げた。
「・・・何か、お悩みがあるんですか?」
「そう見えるかい?」
「ええ、すごく」
挙動不審だし、神殿から逃げ出してしまったし、なによりその目が。
「悩んでいるというか」
遠く、どこかを見つめている。
「心ここにあらず、みたいな・・・」
そこでまもりは言葉を切った。
高見が目を見開いてまもりを見ていたから。
「・・・そうか、やっぱり傍から見ていても判るんだね」
苦笑し、高見は俯く。
その顔に落ちる影は暗いのに、どこか優しい。
まもりは不意に気づいた。
そうか、高見さんは恋をしているのだ、と。
長い沈黙の末、それを破ったのは高見だった。
「僕は医者だから、色々と薬を作るのに地上に降りることは多いんだ」
「そうなんですか」
「地上だけじゃない、地底にも。天空にはない鉱物にも薬効があるからね」
「へえ・・・」
「その日も、僕は薬効のある鉱物の鉱泉を求めて山の中に入ったんだ・・・」
高見が分け入った山は、人の手の入っていないまったくの未開の地、だった。
草を掻き分けた先に、ひっそりと口を開いている洞窟。
その中にもぐりこむ。洞窟に炎は使えないので、術で生成された光る玉を持って。
ランタンの中に放り込んだそれを掲げながら、高見は一人洞窟の奥まで進んでいく。
医者の中でもここまで入り込む天空人はほとんどいない。
大抵は地上に降りることさえ厭うのだ。
地上の恩恵を受けない天空人は地上のことを知らないまま厭っている。
自由に空を飛び、雲を食べ、常春の世界こそ最上と考え、移ろう季節や限りある命を貴ぶ地上を蔑む。
それが高見には傲慢に思えてならない。
彼は地上にしかない薬草や鉱物を活用する。
そして折に触れ地上と地底の良さを見ていたから、天空人の中ではかなりの変り種だった。
彼に言わせれば、こちらのよさを知らないなんてもったいないというのが正直なところ。
と。
彼の目の前に唐突に現れた巨大な岩石に思わず声を上げる。
「これはすごい・・・!」
彼の求めていた鉱物に間違いない。これほどの大きさならかなりの量の薬が生成できる。
喜び勇んで採取しようとしたとき。
「お辞めください」
「!?」
凛とした声が高見を諌めた。
思わず振り返った先。そこに、漆黒の長い髪が揺れた。
日の光を知らないような、真っ白な肌の幼い少女がそこにいた。
「その岩はこの場の天井を支える支柱なのです」
もう一度岩石を見上げる。
よく見ればそれは無骨ながらまっすぐに上まで伸びた、あからさまに人工的な形をしていた。
「削り取られてしまえば、天井が落ちてしまいます」
「なるほど。それはすまなかったね」
高見が素直に頷いてその場から離れたのを見て、少女は不思議そうな顔をした。
「あなたは、私が怖くないのですか」
「何でだい?」
「私は---」
彼女の瞳が光を弾いて彼を見つめた。
大きな黒目がちの瞳。その中の光彩が高見の手持ちの玉の光にすうっと縦長になる。
「地底人、か」
光の少ない地にいる彼らは、僅かな光でも生活できるように猫のような構造の瞳を持っているのだ。
<続>
「・・・何か、お悩みがあるんですか?」
「そう見えるかい?」
「ええ、すごく」
挙動不審だし、神殿から逃げ出してしまったし、なによりその目が。
「悩んでいるというか」
遠く、どこかを見つめている。
「心ここにあらず、みたいな・・・」
そこでまもりは言葉を切った。
高見が目を見開いてまもりを見ていたから。
「・・・そうか、やっぱり傍から見ていても判るんだね」
苦笑し、高見は俯く。
その顔に落ちる影は暗いのに、どこか優しい。
まもりは不意に気づいた。
そうか、高見さんは恋をしているのだ、と。
長い沈黙の末、それを破ったのは高見だった。
「僕は医者だから、色々と薬を作るのに地上に降りることは多いんだ」
「そうなんですか」
「地上だけじゃない、地底にも。天空にはない鉱物にも薬効があるからね」
「へえ・・・」
「その日も、僕は薬効のある鉱物の鉱泉を求めて山の中に入ったんだ・・・」
高見が分け入った山は、人の手の入っていないまったくの未開の地、だった。
草を掻き分けた先に、ひっそりと口を開いている洞窟。
その中にもぐりこむ。洞窟に炎は使えないので、術で生成された光る玉を持って。
ランタンの中に放り込んだそれを掲げながら、高見は一人洞窟の奥まで進んでいく。
医者の中でもここまで入り込む天空人はほとんどいない。
大抵は地上に降りることさえ厭うのだ。
地上の恩恵を受けない天空人は地上のことを知らないまま厭っている。
自由に空を飛び、雲を食べ、常春の世界こそ最上と考え、移ろう季節や限りある命を貴ぶ地上を蔑む。
それが高見には傲慢に思えてならない。
彼は地上にしかない薬草や鉱物を活用する。
そして折に触れ地上と地底の良さを見ていたから、天空人の中ではかなりの変り種だった。
彼に言わせれば、こちらのよさを知らないなんてもったいないというのが正直なところ。
と。
彼の目の前に唐突に現れた巨大な岩石に思わず声を上げる。
「これはすごい・・・!」
彼の求めていた鉱物に間違いない。これほどの大きさならかなりの量の薬が生成できる。
喜び勇んで採取しようとしたとき。
「お辞めください」
「!?」
凛とした声が高見を諌めた。
思わず振り返った先。そこに、漆黒の長い髪が揺れた。
日の光を知らないような、真っ白な肌の幼い少女がそこにいた。
「その岩はこの場の天井を支える支柱なのです」
もう一度岩石を見上げる。
よく見ればそれは無骨ながらまっすぐに上まで伸びた、あからさまに人工的な形をしていた。
「削り取られてしまえば、天井が落ちてしまいます」
「なるほど。それはすまなかったね」
高見が素直に頷いてその場から離れたのを見て、少女は不思議そうな顔をした。
「あなたは、私が怖くないのですか」
「何でだい?」
「私は---」
彼女の瞳が光を弾いて彼を見つめた。
大きな黒目がちの瞳。その中の光彩が高見の手持ちの玉の光にすうっと縦長になる。
「地底人、か」
光の少ない地にいる彼らは、僅かな光でも生活できるように猫のような構造の瞳を持っているのだ。
<続>
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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