旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
小さい体がより一層小さく感じるその風情に、高見は慌てて言葉を紡ぐ。
「ええと、小春さんは果物なら食べられるんだね?」
「? はい」
「それならいいところがあるんだ。ちょっとこっちにおいで」
高見は握ったままの手を引き、雲を呼ぶ。
初めて間近で見た雲に、小春の瞳が輝いた。
「これ、乗れるんですか?」
「俺はね。君は落ちちゃうから、俺の膝の上に来て」
「え」
かあ、と頬を染めるのにかまわずやや強引に雲に乗せ、二人を乗せた雲は別の山中に下りる。
そこには、鮮やかな赤い木の実がたわわに実っていた。
「うわあ! すごいですね、これ!」
「これがキイチゴ、こっちがヤブイチゴ。ヤブイチゴは黒い方が熟してるんだ」
「そうなんですか・・・」
あとこれがクロスグリ、ヌマスノキ、と指差すと小春は高見を尊敬のまなざしで見つめる。
「よくご存知ですね!」
「薬草を採ったりするからね。時々これも食べたりしてるんだ」
小春は嬉しそうに熟した実をつまみ、口に放り込む。
その果汁が唇を赤く染める。
日差しの下で艶やかに光る赤に、高見は自らも木の実をつまんで口に放り込んだ。
天空人も人と変わらない食事を摂ることが出来る。
彼自身は生粋の天空人だが、普段から地上を移動することも多いので、現地の食事を食べることに違和感がない。
「痛ッ」
「小春さん!?」
唐突に聞こえた声に、高見は慌てる。
藪の中では蛇がいたりするのに、注意を失念していた。
見れば彼女は指先を見て顔をしかめている。
「棘が・・・」
「ああ、ヤブイチゴか」
ぷくりと赤い血の玉が浮かぶ。
真っ白な指先に赤い血。
先ほどの唇を連想させて、思わず喉が鳴った。
「見せて」
その手をとって、高見はひょいと指先を口にくわえた。
「っえええええ!?」
飛び上がらんばかりに驚いた小春に、高見はすぐに唇を離す。
「消毒液は生憎持ち合わせがなくて。ごめんね」
「え、えええいや、あの、その・・・!」
舌先で探った限りは棘が残っている様子はない。
高見は取り出した絆創膏を貼り付け、小春の頭を撫でる。
「戻ったらちゃんと消毒してね」
「は、はい」
目を白黒させる小春に、高見は笑みを浮かべた。
唇には彼女の血の匂いが残っている。
花と果実のみで生きる小春の血は、ひどく淫靡で、甘かった。
そうして、二人は時折顔をあわせるようになった。
逢瀬は楽しかった。異文化に触れ合うことも、彼女自身との会話も。
次第に二人ともが、惹かれあうようになったのは最早必然だったのかもしれない。
まもりはじっと自らの手を見る。
それを横目で見ながら、高見は口を開いた。
「俺が君に聞きたかったこと、なんだけど」
「はい」
「まったくの異文化に飛び込んで辛くなかったかい?」
「それは・・・」
まもりはどう答えるべきか言葉を捜す。
彼が言うのは体や精神やその他諸々全てをひっくるめてのことだろう。
そうして、彼か彼女かはわからないが、別の世界に飛び込んだらどうなるか、考えているのだろう。
聡いまもりは、一瞬にしてそれだけのことを考えた。
<続>
「ええと、小春さんは果物なら食べられるんだね?」
「? はい」
「それならいいところがあるんだ。ちょっとこっちにおいで」
高見は握ったままの手を引き、雲を呼ぶ。
初めて間近で見た雲に、小春の瞳が輝いた。
「これ、乗れるんですか?」
「俺はね。君は落ちちゃうから、俺の膝の上に来て」
「え」
かあ、と頬を染めるのにかまわずやや強引に雲に乗せ、二人を乗せた雲は別の山中に下りる。
そこには、鮮やかな赤い木の実がたわわに実っていた。
「うわあ! すごいですね、これ!」
「これがキイチゴ、こっちがヤブイチゴ。ヤブイチゴは黒い方が熟してるんだ」
「そうなんですか・・・」
あとこれがクロスグリ、ヌマスノキ、と指差すと小春は高見を尊敬のまなざしで見つめる。
「よくご存知ですね!」
「薬草を採ったりするからね。時々これも食べたりしてるんだ」
小春は嬉しそうに熟した実をつまみ、口に放り込む。
その果汁が唇を赤く染める。
日差しの下で艶やかに光る赤に、高見は自らも木の実をつまんで口に放り込んだ。
天空人も人と変わらない食事を摂ることが出来る。
彼自身は生粋の天空人だが、普段から地上を移動することも多いので、現地の食事を食べることに違和感がない。
「痛ッ」
「小春さん!?」
唐突に聞こえた声に、高見は慌てる。
藪の中では蛇がいたりするのに、注意を失念していた。
見れば彼女は指先を見て顔をしかめている。
「棘が・・・」
「ああ、ヤブイチゴか」
ぷくりと赤い血の玉が浮かぶ。
真っ白な指先に赤い血。
先ほどの唇を連想させて、思わず喉が鳴った。
「見せて」
その手をとって、高見はひょいと指先を口にくわえた。
「っえええええ!?」
飛び上がらんばかりに驚いた小春に、高見はすぐに唇を離す。
「消毒液は生憎持ち合わせがなくて。ごめんね」
「え、えええいや、あの、その・・・!」
舌先で探った限りは棘が残っている様子はない。
高見は取り出した絆創膏を貼り付け、小春の頭を撫でる。
「戻ったらちゃんと消毒してね」
「は、はい」
目を白黒させる小春に、高見は笑みを浮かべた。
唇には彼女の血の匂いが残っている。
花と果実のみで生きる小春の血は、ひどく淫靡で、甘かった。
そうして、二人は時折顔をあわせるようになった。
逢瀬は楽しかった。異文化に触れ合うことも、彼女自身との会話も。
次第に二人ともが、惹かれあうようになったのは最早必然だったのかもしれない。
まもりはじっと自らの手を見る。
それを横目で見ながら、高見は口を開いた。
「俺が君に聞きたかったこと、なんだけど」
「はい」
「まったくの異文化に飛び込んで辛くなかったかい?」
「それは・・・」
まもりはどう答えるべきか言葉を捜す。
彼が言うのは体や精神やその他諸々全てをひっくるめてのことだろう。
そうして、彼か彼女かはわからないが、別の世界に飛び込んだらどうなるか、考えているのだろう。
聡いまもりは、一瞬にしてそれだけのことを考えた。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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