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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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桜雪異聞(4)



+ + + + + + + + + +
高見はふと目元を和ませて彼女を見つめた。
「久しぶりに地底人とお会いしたね。王はお元気かな?」
「え・・・」
「僕は天空人なんだけれど、王にお会いしたことがある」
「!!」
彼女は驚いたようだった。
無理もない。天空人が地上や地底を厭うのと同じで、地底人も天空を厭うものがほとんどだ。
故に交流もないし、住み分けができているので普段は顔をあわせることもない。
高見は懐から水晶で出来た指輪を取り出した。
繊細な彫刻の施されたそれに、彼女の瞳が見開かれる。
「どうして、それを」
それは、地底人の中でも王族しか手に出来ない、特別な装飾品。
「以前、地底を探索しているときに囚われてね。当然だね、そちらの領土なのに僕が踏み荒らしていい訳がない」
高見は眸を細める。
その時に血気盛んな地底人の若者たちに囚われ、目的を問われたので正直に言ったものの、疑いは晴れず監禁された。
そうして開かれた会議の最中、話は一向に纏まらなかった。
敵として調査に来たのであれば帰せない。
けれど相手は丸腰の上、ここにやってきた目的が少量の鉱物を採取するためだという。
他に随行する天空人はおらず、抵抗するようなこともしない。
訳がわからないなら査問すればよいという王の提案により、一部の反対を押し切って高見は追うの御前に引き出された。
そうして、高見は王と会話するに至ったのだ。
おそらく歴史上初めて地底人の王と天空人が会話した瞬間だっただろう。
高見が医者であること、その志が高いこと、そうしてそのときたまたま不調を訴えた者への処置が迅速活的確であったこと。
彼の人となりを見て、王は高見を認めた。
王は高見に指輪を渡して地底の探索の際に地底人から詰問されたらそれを見せるように言ったのだ。
「そういえば・・・私が生まれる以前、そういったことがあったと伺いました」
「そうか。もうそんなに経つかい」
「・・・天空人は年を取らないというのは本当なんですか」
「取らないわけじゃないよ。取るのが人間より遅いだけさ。君たち地底人もそうだよね」
「ええ」
地上で大地と大空の恩恵を受ける人間は脆弱だが繁殖能力が高い。
逆に片方ずつの恩恵を受ける地底人と天空人は種として強いが繁殖能力が低い。
そういった能力差がなければどちらにも近い地上は戦乱の地となっただろう。
「それにしても、この岩石が採れないとなると困ったなあ」
「必要なんですか?」
「うん。今回は量が要るんだ。・・・地上の一部で悪い変化があったのを見つけたんだ」
「地上?」
彼女の眉が寄る。彼は天空人、地上に何の用があるのかと。
「水に影響があるようなんだ」
「水・・・」
「水は巡って地底にも天空にも影響が出る。出てからでは遅いんだ」
高見が地上で見かけた一部の変化。
植物の一部が変形して成長していた。
奇妙に思い、それを調査して追ううちにその影響元が水ではないかと突き止められた。
その水に含まれる特定の物質を中和する力がこの岩石にある。
検査した結果、それが判明したので高見は大量に薬を作ろうとしたのだ。
人里から離れているし、人間が影響される可能性は低いがゼロでもない。
そうしてその水が染み込む先は地底。
最終的に天空に影響が出る頃には地上は甚大な被害が出ているだろう。
「杞憂ではないのですか?」
「そうかもしれないね。下手に手を出さないほうがいいという意見もある」
けれど、と高見は微笑む。
「俺は地上とか地底とか天空とかいう枠組みで分けて考えるのはいけないと思うんだ」
優しく水晶の指輪を撫でる。
「だって全ては一つにつながっているんだよ」
その顔を見ていた彼女は、ふうと嘆息した。
「こちらへどうぞ」
「え」
「そこほどではありませんが、持ち出しても影響のない岩石がこちらにあります」
手招いて微笑む彼女に、高見はおとなしくついて行く。


<続>
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