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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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桜雪異聞(2)



+ + + + + + + + + +
地上よりは冷たい空の中を勢いよく浮雲は走る。
まもりは懐に手をしのばせる。
そこには小物の中に紛れていた一枚の手紙があった。
簡素な便箋に並ぶ文字は淡々とした印象。
高見の人となりを如実に表していた。
『教えて欲しいことがあります』
僅か数行の手紙の中身を要約したらそういうことになるのだろう。
一体何があったのだろうか、と思考を巡らせつつ一路神殿へと急いだのだった。


神殿に到着すると、まもりはまっすぐに医務室へと進んだ。
実は、ムサシには神殿に来ることを伝えていない。
用件を済ませてから顔を出そうと考えていたら、廊下の角を曲がったところで出会い頭に誰かとぶつかった。
「きゃ!」
「うわ、大丈夫かい!?」
考え事をしていたまもりは受身も取れず、廊下に倒れそうになった。
だが、相手が間一髪まもりの腕を掴み、留める。
「あ、高見さん」
「君は・・・」
「丁度よかった、今そちらに・・・」
たった今までどういう用向きかを考えていたまもりは、笑みを浮かべたが。
「あ! 高見さん待ってください!」
「話を聞かせてください!!」
「しつこいな」
背後から聞こえてくる足音と声に、高見は彼らしからぬ低い声で呟く。
目を瞠るまもりにちらりと視線を向けると、彼は無言のまままもりを半ば引きずるようにして外に出て。
「え? ええ!?」
そうして追っ手を振り切って浮雲に乗ってあっという間に神殿から逃走してしまったのだった。


まもりは風に嬲られる髪もそのままに、高見を困惑の表情で見上げた。
彼は厳しい顔つきのまま、どこか遠くを見つめている。
「・・・あの・・・」
「あ、・・・ごめんね」
まもりの遠慮がちな声に、高見ははっと我に返ったようだった。
掴みっぱなしだったまもりの手を開放し、ほっとした表情で腕をさするまもりに、高見はもう一度ごめんね、と繰り返した。
それはまもりも見知った高見の表情で、やっと合った視線にも安堵の笑みを浮かべて応じる。
「何か、あったんですか?」
「うん・・・」
歯切れの悪い様子だが、元よりまもりに相談事があったのだし、更に共に連れ出されたのでは理由の一つも聞かせてもらえなければ後々うまい説明も出来ない。
何より、飄々とした風情を崩さない彼がここまで焦る様子を始めて見たのだ。いかに仙人とはいえ、好奇心も刺激されたのだ。
高見も話さないつもりはないらしく、言葉を捜すように視線を彷徨わせる。
「・・・君は、人のまま地上から天界に来たんだったよね」
唐突な話題にまもりは首肯する。
「ええ、そうです」
「やっぱり、唐突な変化に体がおかしくなったり調子が狂ったりしたかい?」
「いえ・・・。むしろ地上の方が厳しい気候状態だったので、安堵した覚えはあっても苦痛を覚えたことはありません」
「ふうん・・・そう、か・・・」
どこか遠くを見つめるような視線は、まもりの方を向いているのにその背後を見つめているようだ。
「高見さん?」
「・・・もう少し行くと、霞雲の美味しいところがあるんだ」
高見はふいと視線を外し、指差す。
こんもりと雲が盛り上がる箇所を見て、まもりはそこと高見とを見比べたが。
落ち着いて話を聞くのにはそこに向かうのがよいのだろうと判断し、口を閉ざした。


<続>
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