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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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優しい闇

(ヒルまもパロ)
※『ゆめのあとさき』シリーズの二人です。

+ + + + + + + + + +
聞こえてきた小さなくしゃみに、ヒル魔はちらりと視線を向けた。
すん、と小さく鼻を鳴らす音。
風呂上がりにすぐ布団に入ればいいものを、未だ眠りには遠いヒル魔の世話を何くれとなくしていて、まもりはすっかり湯冷めしたようだ。
「オイ」
「なに?」
「先に寝てろ」
それにまもりは眉を寄せた。
「嫌よ。だって妖一は起きてるのに」
「俺とテメェとじゃ基本的に睡眠時間が違ェだろ」
ヒル魔の眠りは基本的に深く短い。
まもりとて睡眠時間は一般的だろうが、ヒル魔と比較すれば長いのだ。
まもりは軽い足音を立ててヒル魔の隣に座る。
肩に触れた髪がひやりと冷たくて、ヒル魔は嘆息して腕を上げた。
彼女の身体を傍らに抱くようにして腕を回し、視線は相変わらずパソコンの方へ。
それでも嬉しげにまもりは眸を細めて彼の肩口に頭を落ち着ける。
今は冬、シーズン真っ最中。
生活のほとんど全ての労力をアメフトのために注ぎ込む毎日だ。
勿論彼はプロなのだし、まもりもそのフォローを生業としている以上、その生活に文句があるはずもない。
ただ時折、度を超しすぎるほどのめり込む事があるので、その時はこうやって行動で諫めるのだ。
彼一人で突っ走らないように。
必ず傍らにまもりがいるのだと知らしめるように。
実際はそれが、ただまもりが甘えるための口実だとしても、ヒル魔はそれを嫌がることはない。
だからまもりも安心して寄り添うのだ。
心地よい腕の中で、次第にまもりの瞼が重くなってくる。
言葉を交わさなくても触れるところから伝わる温度で眠りが近い事を察したヒル魔が口を開いた。
「・・・おい、寝るならベッド行け」
「もうちょっと・・・」
声はほとんど寝ていた。このままでは確実に風邪を引くのが目に見えている。
ヒル魔はもう一度嘆息し、パソコンの電源を落とす。
そうして軽々とまもりを抱き上げた。
やはり相当眠かったのだろう、抱き上げられても目を覚ます事はない。
リビングの照明を落として寝室へと滑り込む。
外は零下を回っていることだろう。
室内はほどよく暖まっているが、シーツはひんやりと冷たい。
どうにも彼女が一人で眠るのを嫌がるのは、この冷たさもあるのだろうと分析する。
実際、ころりと布団を剥いだベッドに転がせば小さく震えた。
ひそりと苦笑を浮かべ、ヒル魔もその隣に潜り込み、布団をかけ直して彼女を抱き寄せた。

夜半。
まもりは肩口から滑り込む冷気にふと目を覚ました。
室温は寒いと言う程でもないだろうが、なんとなく寒いような気がする。
気づけばベッドに横になっていて、隣にはヒル魔の背中もある。
そういえば、あまり彼に背中から近寄る事はないな、とふと思った。
彼が意図しているのかどうかは定かではないが、正面から抱きしめられる事はあっても彼の背を抱きしめた事はない。
広いなあ、と細く息をつく。
あの鋭いパスを投げるための無駄のない筋肉で覆われつつも、しなやかな後ろ姿。
そーっとまもりは彼の背中に近寄る。
ふわりと香るのは最早彼の体臭と言い換えてもいいくらい馴染んだミント。
そして触れ合うところから滲む、優しい体温。
額を当て、響く心音を数えてみる。
ゆったりと眠りに誘うかのような音。
心地よさに口角を上げ、まもりは再びやってきた睡魔を厭うことなく受け入れた。


ヒル魔は違和感に気づいてぱちりと瞳を開いた。
時計を見ればまだ起床時間よりも早いが、眠りはもう遠い。
いつもより早く就寝したせいだろう。
そうして背中に灯る暖かさにちらりと肩越しに背後を伺う。
勿論見えないが、彼女が額を背に当てて安らかな寝息を立てていることくらいは知れる。
滅多にない感触にヒル魔はくるりと寝返りを打った。
いつの間にか腕の中から離れていたその身体を抱き寄せてみる。
「ん」
心地よさそうに声を上げてすり寄る身体。
無意識に肩口に縋る手が彼の首へと回り、より密着しようとしがみついてくる。
眠りに落ちた最も無防備な時に見せる、何よりも雄弁な信頼と愛情。
寝起きの欲は当然あるのだが、自身の事よりも幸せそうな彼女の眠りを妨げたくなくて。
全くかなわないな、とヒル魔は緩く笑みを浮かべて白く秀でた額に優しくキスを落としたのだった。


***
某所のイラスト連作を見ていてがーっと書き上げました。
甘えたな姉崎さんが書きたかったのだか相変わらず生殺しなヒル魔さんが書きたかったんだか・・・。
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