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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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受け取るべき花

(ヒル魔とまもりとムサシ)


+ + + + + + + + + +
白秋高校がもたらした大量の花々はヒル魔曰く部室を『花臭え地獄の部室』へと変貌させた。
「・・・さすがに頭が痛いかも・・・」
「綺麗だけどねえ・・・」
美麗な花々は芳しい香りを発しているが、あまりに大量すぎて頭痛や気分の悪さを引き起こす者が続出した。
「うーん、物が物だけに部員だけで持って帰るのも難しいわね」
花輪はともかく、生花は外に晒してはすぐダメになってしまう。
「そんなん一発だろ」
ヒル魔が火炎放射器を取り出すが、まもりは花を背に庇って首を振る。
「ダメ! せっかく綺麗なんだから!」
「だったらどう片づけろ、っつーんだ糞マネ!」
「・・・うーん、誰かにあげるとか」
「誰にだ」
「女子なら喜んで貰ってくれる、んじゃない?」
「ハァアア? アメフト部が絡んでて欲しがる奴いるかァ?」
「ハ、黒木にしちゃまともなこと言ったな」
「俺にしちゃ、ってなんだよォ!」
「アハーハー! 僕が輝くためにこの花を貰って行くのでもOK・・・って鈴音! イタイイタイイタイ!!」
「バ・カ・兄! こんなに貰ってもお母さんに怒られるだけでしょ!!」
ギャリギャリと兄の背中に傷を刻む鈴音に皆顔を見合わせて困るばかりだ。
「はぁ、とりあえず華道部に渡せばいいんじゃねぇか?」
「あ、それいい!」
「そっか、華道部なら喜んでくれるよね!」
「じゃあ僕聞いてきます!」
十文字の真っ当な提案に、使いっ走り根性でセナが走り出す。
「でも華道部でもここまで大量じゃ使えないよね」
「あとは美術部と手芸部あたりにあげればいいんじゃない?」
鈴音の提案にとんと理解出来ない部員達は首を傾げるが。
「だって、押し花とかドライフラワーとかポプリとか、色々使えるでしょ」
「・・・花ってそんなに使えるもんなんか?」
「さあ・・・枯れたら捨てるってくらいしか・・・」
女ってすげぇんだなあ、という彼らの感想にまもりは苦笑する。
「あとは放送部に花が欲しい人は来て、って呼びかけるとか、どう?」
「花がなくなりゃどうでもいい。さっさと手配しろ糞マネ」
「んもう! 言い方ってあるでしょ!」
ヒル魔の声にまもりは眉を寄せて出ようとするが、ふとミニブーケに目を留める。
他の大きな花束は嵩張るが、これくらいなら持って帰れそうだ。
「私もこれなら持って帰れるかな」
ところが。
「ダメだ」
間髪入れず、ヒル魔がそれを却下する。
「なっ、なんで?! もっと大きいのを沢山持って帰れ、ってこと!?」
「テメェはここのどれも持ち出し不可だ」
「ええ?!」
まさか即答でダメだと言われるとは思ってなかったまもりは驚き声を上げるが、ヒル魔はにべもない。
どうして、と問いかけようとしたが。
「こ、こんにちは! 華道部です!」
「わっ! 本当、凄い量! 本当に頂いてもよろしいんですか!?」
歓声を上げる華道部の登場に、さっと口をつぐむ。
「おー。さっさとテメェら引き取って行け。おい糞ガキ共! さっさと着替えて練習すんぞ!!」
前半は華道部に、後半はアメフト部員に。
「は、はいっ!」
「うっす!」
ヒル魔の一声で部員達は行動を開始する。
次々と持ち出される花を見ながら、まもりはしゅんと俯いた。
ヒル魔は眉間に眉を寄せて舌打ちするばかり。
「・・・・」
無言で耳を掻きながら、ムサシはその一部始終をじっと見ていた。

「姉崎」
「あ、ムサシくん。お疲れ様」
部員達がほぼ帰った後、いつもの通りデータ整理をしていたまもりとヒル魔の元に、ふらりとムサシが現れた。
「遅かったわね?」
「ん、まあな」
普段は家業の関係上着替えて真っ先に帰るのが常なのに、今日はそうではないらしい。
珍しい事もあるのね、とまもりは小首を傾げる。
「花、残念だったな」
「あ・・・うん」
結局、あの後美術部と手芸部とがやって来て、めぼしいところはほぼ持ち出された。
さらには噂を聞きつけた女子生徒が大挙してやって来て、総ざらいしていったのだ。
さすがにヒル魔が恐怖の対象でも、赤信号を大挙して渡れば怖くない、という集団心理が勝ったのか。
まもりが片づけをするまでもなく、花はすっかり綺麗に消えていた。
やっぱりヒル魔にダメだと言われても、あのミニブーケくらい持って帰りたかったな、とまもりは苦笑する。
「あれだけのお花、滅多に見られないから、それだけでもラッキーだったのかも」
「そうか」
負け惜しみになるが、そうとでも言わないと消沈してしまう。
これからまた試合の準備に忙しいのだ。
もう終わった事だし、これ以上うだうだ言うと、今も素知らぬ顔でパソコンに向かっているヒル魔に怒られてしまう。
「ところで、姉崎はどんな花が好みなんだ?」
「そうね・・・」
まもりは部室に溢れていた花の影を思い出す。
多種多様な中でもやはりなじみ深い花に目が行った。
「チューリップとか、ガーベラかな。カワイイ感じの花が好きなの」
「ん、そうか」
「滅多に花なんて貰えないし、自分でも買う機会もあんまりないし、好きって言ってもお花屋さんで見るくらいだけどね」
実際今まで生きてきた中で、花束と呼ばれる部類のものはあまり身近ではない。
中学校の卒業式で貰った程度かな、と思い返す。
家で母が飾ったりもするが、自分のための花ではない。
「急に変な事聞いて悪かったな」
「ううん」
ムサシはそのままヒル魔の傍らに歩み寄り、ぽん、と彼の肩を叩いた。
ぎろ、と睨みつけるヒル魔の視線もものともせず、ムサシはじゃあな、と短い言葉と共に去った。


関東大会を勝ち進むにつれ、日ごとに帰宅時間が遅くなっていた。
部員達ほど身体を酷使するわけではないが、仕事も多く拘束時間が長いのはやはり精神的にも気が滅入る。
てくてくと家までの道を歩きながらまもりは一人呟く。
「なんでヒル魔くん、あのお花くれなかったんだろ・・・」
処分に困って燃やしたがるくらいなら私にくれたっていいのに、と零す。
かわいかったな、と思い返す。
ガーベラとチューリップ、それからアイビーとかすみ草があしらわれた花束。
いくつかあったミニブーケの中でもそれが気に入ったから欲しかったのに。
「・・・あれ」
視線の先、家の前に配送の車。
すぐに去ったそれを視線で見送りつつ、まもりは玄関をくぐる。
「ただいま」
「おかえりなさい。疲れたでしょう」
出迎える母の手には。
「あら? どうしたのお母さん、それ」
「これ、あなたにですって」
「え?」
ガサ、と音を立てて渡されたのは、さほど大きくもない花束。
「誰から?」
「それがねえ・・・」
母は言葉を濁した。それにまもりは首を傾げる。
とりあえず着替えてきなさい、と言われてまもりは花束を母に一度返し、階段を上る。
着替えて戻ってくると、花は既に花瓶に生けられていた。
「なんだかね、宅配の人がほとんどもう押しつけ、って感じで置いて行っちゃって」
「何、それ?」
不審も露わに眉を寄せるまもりに、母もよく似た面差しの顔を傾げながら続ける。
「姉崎まもりさん宛です、ってだけで。伝票も何もないのよ」
「・・・」
まもりは花を見る。
ガーベラとチューリップを主体にした、かわいい花束。
それはまさに今日まもりが欲しがったミニブーケと同じアレンジで。
まさか、とまもりは目を見開いた。
「心当たりがあるのね?」
「うん、多分・・・」
まもりはそっとチューリップの花弁を撫でた。



「おはよう、ムサシくん」
「ん。早いな、姉崎」
翌朝、まもりは前を歩くムサシを見つけて駆け寄った。
「ねえムサシくん、昨日・・・」
「届いたか」
にやり、と親友によく似た笑みを浮かべたムサシに、まもりはやはりと確信する。
「あいつも素直じゃないからな」
「・・・どうして?」
端から聞けば随分と言葉足らずな会話だろう。
けれど二人はちゃんと理解している。
話題はヒル魔の事に他ならない。
そうしていきなりまもりに花束を押しつけるなんて奇行に走った理由について、だ。
「簡単に言えば、『俺以外の男から物を貰うな』ってことだな」
意中の女が他の男から贈られた花に相好を崩す様など見せられて嬉しい男はいないだろう。
ましてや普段、滅多に強請ったり欲しがったりしない女なら、尚更。
それくらいムサシにはお見通しだったのだが。
「なにそれ。誰からだって普段、訳もなく物貰ったりなんてしないのに」
あの花を捨てるのが勿体ないから欲しかっただけで、わざわざヒル魔くんにだけ別に花を貰う理由がないわよ、と唇を尖らせるまもりにムサシは苦笑する。
相変わらずの天然具合にこいつはやっぱり手強いな、と内心呟く。
そうして歩く視線の先に、同じように歩いているヒル魔の姿を見つけた。
「あ! ヒル魔くーん! おはよう!」
先に行くね、と律儀に声を掛けてまもりはぱたぱたと足取り軽やかに走っていく。
「ねえ! 昨日、うちに花束くれたでしょ。あれって何で?」
「シラネ」
「嘘! だってあの時ムサシくんとの話聞いてたのヒル魔くんだけじゃない!」
「サアネ」
「なによもう! あんなことするのヒル魔くんだけでしょ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人の背中が楽しそうだったので、とりあえずのところはこれでいいのかもな、とムサシは苦笑混じりに耳小指を突っ込んだのだった。

***
27巻あたりの話を。たまにはヒル魔→まもりの図式もいいかな、と。
私は二人に関してお節介なムサシが好きなようです。
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