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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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複製不可能

(軍人シリーズ)
※『八咫烏』の次に位置します

+ + + + + + + + + +
まもりは提出書類を前に計算を続けていた。
数字が異様に多く、書き込む枠も多い複写の書類は本来ヒル魔が書くべき物だ。
日頃からあの外見にあの所業、つねに人の目の敵にされがちなヒル魔。
彼がいかに戦場で強かろうと、日常的な業務に支障が出るようであれば上は黙っていない。
結局それが判っているから彼も割と真面目に事務処理はするのだが、この書類に関しては複写式だし訂正はきかないしで何回か書き損じた後、珍しく放り出したのだ。
先に言ってくれたら普通にやったのに、と内心で文句は言いつつもまもりはそれを処理していた。
ちなみに〆切は本日、びた一日も譲らないと言われているのでまもりは必死だ。
「・・・よし!」
やっと書き終え、まもりは珍しく笑みを浮かべる。
きちんと数字が合っているかを確認し、鼻歌交じりで判子を押そうと引き出しを開けて俯いた瞬間。
「書類だ」
どさどさ、とまもりの前に書類の山が出来る。
机の前にはいつの間にかヒル魔が立っていた。
「なっ?!」
「ついでに一つ聞きたい事がある。これなんだが」
「ちょ、ちょっと」
まもりが書き終えた書類は、彼が下ろした書類に埋もれてしまっているようで見えない。
「ここのこれ、テメェが出した数字だと6になってるが予測だと8、少なくとも9欲しい。ここの根拠と」
ヒル魔が広げた書類の中に幾つも走り書きしていく。まもりはそれどころではないのだが全く取り合われない。
「待って、書類! さっき書いたのに」
「こっちのはテメェが清書しろ。俺のメモつきだ。後はこれとこれとそれと・・・」
更に重ねた書類にぐりぐりと赤で印が付けられていくが、順序も大きさもバラバラのメモが間に挟まっているだけで何を求めているのかそれだけではサッパリわからない。
「それじゃ読めないでしょう! じゃなくて、書類!!」
まもりはとうとうヒル魔の手を払いのけた。
「ア?」
「さっき複写の書類書いてたんです! 書き終えたところで、今判子押そうとしたのに!」
積み上がった書類をどけても、ヒル魔の手をどけても書類はない。
「・・・まさか」
まもりはヒル魔が先ほど広げた書類と、今のメモが重なったものをそろりと捲り上げた。
「・・・ああ~~~~~~~・・・」
がっくり、とまもりは書類を見てうなだれた。
「ア? 何うなだれてんだ」
訝しげなヒル魔に、まもりはがばりと顔を上げる。
「これ! 貴方が書き損じしすぎて飽きたから書け、と押しつけた書類です!」
「おー、出来たのか」
「見てください!!」
べろ、と書類を捲ると、そこにはたくさんの走り書き。
見慣れた字に、ヒル魔は口をつぐんだ。
それはたった今、ヒル魔がまもりの前で書き込んだものに違いない。
「貴方は筆圧が強いから! 複写の、よりにもよって提出用の方に写っちゃったんです!! せっかく書き終えたのに・・・・っ」
一言一句間違えずに書くのがどれだけ面倒かは押しつけた自分もよく判る。
「・・・アー、その・・・」
珍しく歯切れの悪いヒル魔を、まもりはキッと睨みつけた。
「もう付き合い切れません!! この隊を辞めさせて頂きますっ!!」
「アァア?! テメェ書類一枚ごときでなに抜かす!!」
「ごとき?! ごときって仰いましたかこれを!! 今日〆切で出さないと貴方の首が危ないかと思って最優先で昼も食べずに書いてた私にそう仰るんですか!! しかもこっちの話も聞かないで余計な仕事まで持ってくるし!!」
「ぐっ」
滅多にないまもりの剣幕に、完全に非があるヒル魔は何も言えない。
しかもヒル魔の身を案じて処理してくれていたのだとハッキリ言われて、面映ゆいやら申し訳ないやら。
罪悪感なんて生まれてこの方感じた事はない、と常日頃嘯く彼もさすがにこれは堪えた。
「今までありがとうございました!! 辞表は後で書いて送ります!!」
立ち上がって飛び出そうとするまもりの襟首をヒル魔は掴んで持ち上げた。
「待て」
「待ちません!!」
じたじたと暴れるまもりをもう一度席に座らせる。
「それは俺が書き直す」
ひょい、と悲惨な複写の書類を取り上げる。
「写し取りだけだから今からでもなんとかなるだろ。だからテメェはそれ・・・」
じっとりと恨みがましい視線で睨まれ、ヒル魔は口調を改める。
「・・・お願いします、姉崎大佐」
けれどまもりは動かない。しばし間が空いた後、ヒル魔はガリガリと頭を掻いた。
「~~~すまなかった、俺が悪かった! だからその書類の処理をしてください、お願いします!!」
がば、とヒル魔に頭を下げられ、まもりは渋々、本当に渋々広がった書類を纏めだした。
ヒル魔は細く嘆息し、まもりの側から離れて室内にある応接用の机に書類を広げる。
がりがりと面倒な書類を埋めながら、ちらりと自席で処理をするまもりを盗み見る。
機嫌はまだまだ直りそうにもない。
こうなったら書類を提出した後、問答無用で彼女をシュークリーム屋まで連れて行こう。
地獄のような甘い匂いの中に自ら行くなんてヒル魔にとって拷問に他ならないが、好物を買い与えるのが機嫌取りとしては一番いい方法のはずだ。
彼女をみすみす辞めさせるなんて出来ない。そのためなら頭くらいいくらでも下げられる。
随分とこの女には弱いな、とヒル魔は自分の心情を苦々しく思ったのだった。

ヒル魔が謝るなんてそれこそ今まで絶対になかったことで、誰かが聞いていたら槍や銃弾が降るんじゃないかと思うほどのことなのだけれど、そんなことには気づかず、まもりは不機嫌なまま黙々と書類を片づけた。
そうして仕事が終わった後、連れて行かれたシュークリーム屋で甘味嫌いのヒル魔に一つシュークリームを食べさせて苦しめ、ようやくまもりは溜飲を下げたのだった。


***
絵チャで私の筆圧が弱いという話からヒル魔さんは筆圧強そうだね、というところまで一気に話が飛び、結局こんな内容の話が出来ました。意外にあっさりヒル魔さんが謝ったので書いていてびっくりです。
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