旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
アヤの私服はとても少ない。
基本的に着飾る事を好まず、動きやすさ重視の上に部活でほぼ忙殺される日々においてあまり私服は必要でないのだ。だから基本が制服かジャージかの二択、というあまりにも悲しい現状にまもりと護が結託してヒル魔に異議を申し立てた。
「お父さん、姉ちゃんの格好の事なんだけど」
「もっと洋服を買うように言ってくれない?」
「ア?」
なんのことだと新聞から視線を上げたヒル魔は、親子らしく似た面差しの二人の視線を受け止めた。
「もう少しカワイイ格好して欲しいのよね」
「本人に言え」
「言っても聞かないのはお父さんだってよく知ってるでしょ」
「だったら諦めろ」
「嫌よ! せっかくかわいく産んだのに!」
憤慨するまもりにヒル魔は胡乱な眼差しを向ける。
「全部が全部テメェの血じゃねぇからだろ」
「だって! 妖介はともかく護はこんなにオシャレさんなのに!」
それにヒル魔は内心嘆息する。
護が格好に気を遣うのは、外見を最大限有効に使うための手段に過ぎないのだ。
ヒル魔はややもすれば人外な外見を生かして恐怖の対象へと自らを演出している。
逆に護は柔和な外見と爽やかさで腹黒さを隠して暗躍するための素地を作っているのだ。
見事に騙されているまもりにそれを告げる気は毛頭無いが。
「僕の事はいいよ。兄ちゃんもあのままでいいと思うし」
「そうだな」
妖介もシンプルな格好を好むが、私服の好みは父寄りらしくアヤよりは衣装持ちだ。
だから余計にまもりはアヤのことで気を揉むのだけれど。
「せっかく外見でかわいくても素っ気なかったりオシャレに無頓着だったりで恋人が出来ないのはちょっと・・・」
それに護とヒル魔は顔を見合わせた。
まもりは全くアヤの恋心に気づいていないらしい。
この糞鈍さはまだ健在なのかとヒル魔は認識を新たにする。
まあ気づいていて変に気にするよりはいい、かもしれない。
「じゃあアヤが年相応に着飾ればいいわけだな?」
「・・・うーん、なんか含みを感じるけど、概ねそうだわ」
長い付き合いでもうなんとなくろくな算段を考えてないのは知れたが、ここでそれを指摘しても結局は彼自身の思い通りにするのを知っているまもりはあっさりと頷いた。
「護、テメェも手伝え」
「元からそのつもりだよ。で、何をすればいいの?」
秋の東京地区大会初日。
その日、開会式で驚愕のどよめきが会場を覆った。
「え・・・」
「あの顔、って・・・」
「「「「「蛭魔妖一?!」」」」」
あの伝説の悪魔のQBを彷彿とさせる眼光鋭い人影、それも男女一名ずつ。
それらが選手として堂々と居並んでいるのだ。
どよめいて落ち着かない空気の中でも、二人はにやにやと質の悪そうな笑みを浮かべて立っている。
勿論ソレはほとんど演技なのだけれど、初めて目にした者たちはその威圧感に言葉を失う。
そうして本日の試合にエントリーしていた泥門デビルバッツはそのまま同じ会場で試合となった。
見た目に怖いとはいえ女性、大したことはないだろうと高をくくった者たちの出鼻をくじく鋭いパスが空を切った。
そしてアヤと妖介の派手なデビュー戦は、泥門高校の圧倒的勝利で幕を閉じた。
試合終了後、着替えをするべく向かったロッカールーム。
そうして自らの着替えが入っているはずの鞄を手に取ったアヤは、その中身に眉を寄せた。
当然ながらロッカーは男女別。
着替え終えて現れたアヤの格好に、皆目を丸くする。
「どうしたの? アヤ、その服」
「着替えがすり替えられた」
仏頂面のアヤが着ているのは、ロングスカートとカットソー、ご丁寧に靴までサンダルにすり替わっていた。
彼女が身に纏うには見た事のない形だが、よく似合っている。
「全員揃ったか」
ヒル魔が顔を出し、アヤに目を留めてにやりと笑う。
「・・・今度は何ですか」
父親の笑みに気づいた一気に不機嫌さを増したアヤが尋ねる。
それを受けてヒル魔はぐるりと部員を眺めた。
「テメェらの志気を上げるのに手っ取り早い方法を思いついたんでナァ」
「嫌な予感がしますが、何ですか」
妖介が嫌そうに問いかける。
「試合に勝つごとに、アヤがスカートの丈短くするぞ」
「マジっすか!?」
「うっそ、俺チョー頑張る!!」
「生足ですか!?」
「それって下だけなんですか!? 上は!?」
「どこまで短くなるんですか!?」
鼻息荒く盛り上がる部員を背に、アヤは苦虫を噛み潰したような顔で父親を見た。
「勝手に決めたんですか」
アヤの非難には取り合わず、ヒル魔は楽しげに口を開く。
「最初はロングスカートからだが、最終的には当然・・・」
「と、当然・・・?」
思わせぶりなヒル魔の言葉に、ごくり、と部員達の喉が鳴る。
「それは勝ってのオタノシミだナァ」
「おっしゃ次も絶対勝つぞー!!」
「「「「おー!!」」」」
妙な結束感で声を上げる部員達を尻目に、アヤと妖介がヒル魔ににじり寄る。
「なんでそんなこと言い出すんですか」
「判りやすいゴホウビがあれば頑張りやすいだろ」
「それにしたって! アヤが晒し者みたいじゃないですか!」
憤慨する妖介にヒル魔はにやにや笑っているだけだ。
「そもそもは姉崎から頼まれたことだからナァ」
「ええっ?! 母さんと護が!?」
「何故?」
「アヤをもっと飾れ、っつう希望だったぞ」
大分当人の趣旨からはずれた言葉だが、行き着くところは一緒だろうと気にもしない。
「私は人形じゃない」
眉間に三本皺を寄せたアヤにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「テメェがもう少し外見に気を配って装えばいい話だ」
くい、とヒル魔が盛り上がっている部員達を顎でしゃくる。
「あいつらの期待を裏切るか?」
「勝手に期待されても迷惑」
ムサシ以外の男は眼中にない。どうでもいい、と言いたげなアヤの苦情などさらりと流される。
「単純で扱いやすいだろ」
ヒル魔は笑みを浮かべて続ける。
「外見は武器だ。あるものは使え。手段を惜しんで結果を逃すことほどバカな事はねぇんだぞ」
「母さんが言い出したなら助け船は見込めないね」
何を言っても無駄だ、と妖介は早々に文句を言うのを諦めた。
どうせ護も一枚噛んでるんでしょ、そう妖介が尋ねればさも当然、という風に返事が返ってくる。
「妙な格好をさせようとするのはお断りします」
二人の脳裏にまもりが若かりし頃の数々のコスプレ写真が思い浮かぶ。
どれもこれも大抵ヒル魔の差し金には違いないのだ。
「そこら辺は護がうまくやるだろ」
これから先は勝利しても素直に喜べないようになるのだろうか。
次から試合後にロッカーで鞄を開けるのが怖くなったアヤなのだった。
***
勝つためには自分の娘の格好までエサにするのですかヒル魔さん・・・!
でもアヤはムサシに「かわいいな」とか言われたら多分何でも喜んで着るんだと思います。
基本的に着飾る事を好まず、動きやすさ重視の上に部活でほぼ忙殺される日々においてあまり私服は必要でないのだ。だから基本が制服かジャージかの二択、というあまりにも悲しい現状にまもりと護が結託してヒル魔に異議を申し立てた。
「お父さん、姉ちゃんの格好の事なんだけど」
「もっと洋服を買うように言ってくれない?」
「ア?」
なんのことだと新聞から視線を上げたヒル魔は、親子らしく似た面差しの二人の視線を受け止めた。
「もう少しカワイイ格好して欲しいのよね」
「本人に言え」
「言っても聞かないのはお父さんだってよく知ってるでしょ」
「だったら諦めろ」
「嫌よ! せっかくかわいく産んだのに!」
憤慨するまもりにヒル魔は胡乱な眼差しを向ける。
「全部が全部テメェの血じゃねぇからだろ」
「だって! 妖介はともかく護はこんなにオシャレさんなのに!」
それにヒル魔は内心嘆息する。
護が格好に気を遣うのは、外見を最大限有効に使うための手段に過ぎないのだ。
ヒル魔はややもすれば人外な外見を生かして恐怖の対象へと自らを演出している。
逆に護は柔和な外見と爽やかさで腹黒さを隠して暗躍するための素地を作っているのだ。
見事に騙されているまもりにそれを告げる気は毛頭無いが。
「僕の事はいいよ。兄ちゃんもあのままでいいと思うし」
「そうだな」
妖介もシンプルな格好を好むが、私服の好みは父寄りらしくアヤよりは衣装持ちだ。
だから余計にまもりはアヤのことで気を揉むのだけれど。
「せっかく外見でかわいくても素っ気なかったりオシャレに無頓着だったりで恋人が出来ないのはちょっと・・・」
それに護とヒル魔は顔を見合わせた。
まもりは全くアヤの恋心に気づいていないらしい。
この糞鈍さはまだ健在なのかとヒル魔は認識を新たにする。
まあ気づいていて変に気にするよりはいい、かもしれない。
「じゃあアヤが年相応に着飾ればいいわけだな?」
「・・・うーん、なんか含みを感じるけど、概ねそうだわ」
長い付き合いでもうなんとなくろくな算段を考えてないのは知れたが、ここでそれを指摘しても結局は彼自身の思い通りにするのを知っているまもりはあっさりと頷いた。
「護、テメェも手伝え」
「元からそのつもりだよ。で、何をすればいいの?」
秋の東京地区大会初日。
その日、開会式で驚愕のどよめきが会場を覆った。
「え・・・」
「あの顔、って・・・」
「「「「「蛭魔妖一?!」」」」」
あの伝説の悪魔のQBを彷彿とさせる眼光鋭い人影、それも男女一名ずつ。
それらが選手として堂々と居並んでいるのだ。
どよめいて落ち着かない空気の中でも、二人はにやにやと質の悪そうな笑みを浮かべて立っている。
勿論ソレはほとんど演技なのだけれど、初めて目にした者たちはその威圧感に言葉を失う。
そうして本日の試合にエントリーしていた泥門デビルバッツはそのまま同じ会場で試合となった。
見た目に怖いとはいえ女性、大したことはないだろうと高をくくった者たちの出鼻をくじく鋭いパスが空を切った。
そしてアヤと妖介の派手なデビュー戦は、泥門高校の圧倒的勝利で幕を閉じた。
試合終了後、着替えをするべく向かったロッカールーム。
そうして自らの着替えが入っているはずの鞄を手に取ったアヤは、その中身に眉を寄せた。
当然ながらロッカーは男女別。
着替え終えて現れたアヤの格好に、皆目を丸くする。
「どうしたの? アヤ、その服」
「着替えがすり替えられた」
仏頂面のアヤが着ているのは、ロングスカートとカットソー、ご丁寧に靴までサンダルにすり替わっていた。
彼女が身に纏うには見た事のない形だが、よく似合っている。
「全員揃ったか」
ヒル魔が顔を出し、アヤに目を留めてにやりと笑う。
「・・・今度は何ですか」
父親の笑みに気づいた一気に不機嫌さを増したアヤが尋ねる。
それを受けてヒル魔はぐるりと部員を眺めた。
「テメェらの志気を上げるのに手っ取り早い方法を思いついたんでナァ」
「嫌な予感がしますが、何ですか」
妖介が嫌そうに問いかける。
「試合に勝つごとに、アヤがスカートの丈短くするぞ」
「マジっすか!?」
「うっそ、俺チョー頑張る!!」
「生足ですか!?」
「それって下だけなんですか!? 上は!?」
「どこまで短くなるんですか!?」
鼻息荒く盛り上がる部員を背に、アヤは苦虫を噛み潰したような顔で父親を見た。
「勝手に決めたんですか」
アヤの非難には取り合わず、ヒル魔は楽しげに口を開く。
「最初はロングスカートからだが、最終的には当然・・・」
「と、当然・・・?」
思わせぶりなヒル魔の言葉に、ごくり、と部員達の喉が鳴る。
「それは勝ってのオタノシミだナァ」
「おっしゃ次も絶対勝つぞー!!」
「「「「おー!!」」」」
妙な結束感で声を上げる部員達を尻目に、アヤと妖介がヒル魔ににじり寄る。
「なんでそんなこと言い出すんですか」
「判りやすいゴホウビがあれば頑張りやすいだろ」
「それにしたって! アヤが晒し者みたいじゃないですか!」
憤慨する妖介にヒル魔はにやにや笑っているだけだ。
「そもそもは姉崎から頼まれたことだからナァ」
「ええっ?! 母さんと護が!?」
「何故?」
「アヤをもっと飾れ、っつう希望だったぞ」
大分当人の趣旨からはずれた言葉だが、行き着くところは一緒だろうと気にもしない。
「私は人形じゃない」
眉間に三本皺を寄せたアヤにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「テメェがもう少し外見に気を配って装えばいい話だ」
くい、とヒル魔が盛り上がっている部員達を顎でしゃくる。
「あいつらの期待を裏切るか?」
「勝手に期待されても迷惑」
ムサシ以外の男は眼中にない。どうでもいい、と言いたげなアヤの苦情などさらりと流される。
「単純で扱いやすいだろ」
ヒル魔は笑みを浮かべて続ける。
「外見は武器だ。あるものは使え。手段を惜しんで結果を逃すことほどバカな事はねぇんだぞ」
「母さんが言い出したなら助け船は見込めないね」
何を言っても無駄だ、と妖介は早々に文句を言うのを諦めた。
どうせ護も一枚噛んでるんでしょ、そう妖介が尋ねればさも当然、という風に返事が返ってくる。
「妙な格好をさせようとするのはお断りします」
二人の脳裏にまもりが若かりし頃の数々のコスプレ写真が思い浮かぶ。
どれもこれも大抵ヒル魔の差し金には違いないのだ。
「そこら辺は護がうまくやるだろ」
これから先は勝利しても素直に喜べないようになるのだろうか。
次から試合後にロッカーで鞄を開けるのが怖くなったアヤなのだった。
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
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