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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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男達の憂鬱

(ヒル魔とムサシ)


+ + + + + + + + + +
ヒル魔は目の前の男を苦々しい気持ちで見つめていた。
あの時の義父がこんな気持ちだったのだろうとは思うが、それよりも更にこちらの方が悪いと自負出来る。
なにしろ娘が選んだ男が、自分の親友だから。
ムサシは二十年前からさほど変わらない外見のまま、深みだけ増してその場に座っていた。
初めてアヤがそう口にしてから実に十年以上。
夢を本当にしやがったという感心少し、後は不満で満ちている。
「なんで外に呼び出しやがった」
落ち着いた雰囲気の喫茶店で二人して顔を合わせている。
「家に行ったらお前は俺を中に入れないだろう」
淡々とコーヒーを啜りながらそんなことを言われて、ヒル魔はなお一層険しい顔になった。
「糞ガキどもがそこまでさせねぇよ」
「どうだか。俺からの電話だって最初出なかったじゃねえか」
ヒル魔は舌打ちする。
結局連絡が取れなかったムサシは、まもりに電話したのだ。
実は、と切り出そうとしたところで唐突にヒル魔が電話に出た。
(ちょっと、私が先に話してたのに!)
(煩ぇ、糞ジジィが用があるのは俺なんだよ!)
電話口でぎゃーぎゃー騒ぐ二人に、大きめの声で声を掛けたのはつい二時間程前の話だ。
「姉崎でもよかったんだぞ」
母親にだけ説明したお前と同じように、とムサシは意地悪く笑う。
「姉崎ならダメとは言わないだろう」
「その前に倒れる。アイツは何も考えてねぇからな」
「そうか」
「そうだ」
昼下がり、穏やかな天気の中で会話するにはあまりに似つかわしくない二人組。
それでも馴染んだ雰囲気に、店員は時折目をやる程度で干渉することはない。
「アヤが俺のところに住みたいと言ってな」
ぴん、とヒル魔の眉が上がる。
「高校在学中はダメだ、とは言っておいたんだが」
「抱いたか」
すっぱりとヒル魔が切り込んだ。
それにムサシは少し眉を動かし、それから苦笑する。
「生憎と、そこまで若くないんでな。手は出してない」
安心したか、という一言にベツニ、とヒル魔は嘯く。
「付き合うな、とは言わないんだな」
「阻止したところで聞くようなタマじゃねぇんだよ」
げんなりした口調に、既に彼はアヤに何度も勧告したが暖簾に腕押し糠に釘だったと知れる。
両親のどちらにも似た娘の頑固さはヒル魔でも呆れる程だ。
「そこに糞ガキどもの援護も入るしな」
すっかり悪者扱いなのだろう。そこはかとなく拗ねた風情にムサシは苦笑する。
「正直なところ、俺には遠慮がある」
「ア? 年か? それとも俺らにか?」
「どちらもだな。あれだけ若くて綺麗なら、何も好きこのんで俺のところでなくても、とは思う」
嘆息するムサシをヒル魔はじろりと睨んだ。
「アヤは普段、滅多に笑わねぇ」
「は?」
ムサシはカップを手にしたまま固まる。
「誰に対しても素っ気ねぇし、表情も少ない上に身内以外の男には近寄りもしねぇ」
「え・・・おい、何の冗談だ」
ヒル魔の言葉に、ムサシは戸惑う。
アヤといえば、母親の姉崎のように常に笑みを浮かべて、ムサシの側にいたがった。
戯れにでも触れたら、それだけで顔を赤くして喜ぶような女だ。
「俺にすら滅多に笑わねぇんだぞ」
「そりゃ・・・」
なんと言えばいいのやら。娘に素っ気なくされて拗ねる父親、とは少し違うようだけれど。
けれどそうなのか、と初めて知った事実にムサシは純粋に驚く。
同時に、あの笑顔を独占しているのが自分一人なのだと言われて嬉しくないはずがない。
「気色悪ィぞ糞ジジィ。思い出し笑いなんざするんじゃねぇよ」
「ああ、すまん」
不満そうなヒル魔には悪いが、ムサシはもう笑みを消す事が出来なかった。
「ということは、お前は俺がアヤと付き合うのに賛成なんだな?」
「非常に消極的にして残念な結果、だ・が・な!」
ぴしりとヒル魔はムサシを指さした。
「同棲は認めねぇ。一緒に住むなら結婚してからにしろ」
思いがけない言葉に、ムサシは二度、三度瞬きをした。
「何故だ?」
「テメェの家とウチは近いし、距離は同棲させる理由にならねぇ。それに」
「それに?」
ヒル魔はまた渋い顔をし、それから嫌そうに口を割った。
「変に焦ったり思い詰めたアヤがテメェの上に乗る事態は避けてぇんだよ」
「ぶっ!!」
ムサシは冷めかけたコーヒーを吹き出した。ゲホゲホと噎せる。
「な、ヒル魔、・・・そりゃ・・・」
苦しい息の下でもなんとか言葉を紡ごうとするムサシに、ヒル魔は嫌そうな顔のまま冷静に補足した。
「同棲なんざ生ぬるいことじゃ満足しねぇで、さっさと既成事実作ろうと躍起になるだろうよ」
何しろ俺と姉崎の娘だぞ、と言われてムサシは納得したようなしないような。
腕に抱きしめただけで赤くなるあのアヤが上に? 考えられない。
「一服盛るとか当たり前だからな。そんなことさせるくらいなら結婚させちまった方がマシだ」
「おい・・・」
「それともやめるか?」
にやにやと笑う悪魔の手にプレイカード。
懐かしい光景だ。
「アヤなんて面倒な奴を選ばないで、もっと適当なところで手を打つか?」
「―――生憎と、それができてないから今も独り身でな」
するりとヒル魔の手からカードが引き抜かれる。
「ああ、そうだ。一つ命令だ」
「命令・・・」
ヒル魔を義父と呼ぶ関係になるなら、彼の命令は多少聞かなければならないのだろうか。
「ガキを作るならアヤが大学卒業してからにしろよ」
「? そりゃ構わねぇが・・・」
何故、という問いかけにヒル魔は口を割らなかった。

さてその後。
改めてちゃんと挨拶を、ということでヒル魔家に出向いたムサシが結婚を前提に、ということを口にした途端、姉崎が悲鳴を上げた。
「アヤ! お願いだから子供はすぐ作らないで!」
「なんで?!」
「どうしてそんなこと言うの!?」
息子二人が驚くのを尻目に、アヤが呆れたように口を開いた。
「三十代でおばあちゃんになりたくないのね?」
「ああ、なるほど」
そういうことか、と視線を向ければ、固まる姉崎を抱き寄せる悪魔と視線がぶつかり、彼はにやりと笑って見せたのだった。

***
ムサシとヒル魔さんの二人で語らせたくてこんなことに。
なんとここに至るまでムサシさんはアヤが笑いかけるのが自分だけだと知らなかった模様。
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