旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
私の体調がすっかり回復した後、妻と娘は無事に帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま帰りました。ありがとう、あなた」
お土産を手に微笑んでくれる妻の存在がいかにありがたいかをしみじみ思う。
「あら、随分台所片づいてるわね」
「ああ、妖介が来てくれてたんだ。テスト期間とかで部活がなかったそうだよ」
「そうなの・・・。じゃあ、お礼にご飯でもごちそうしなきゃね!」
「そうだね」
笑顔で提案する妻に賛同していたら、電話が鳴った。
「はいはい、ちょっと待ってね~」
妻が足取り軽く電話に出た。
「はい、姉崎です。・・・あら妖一くん?」
「何っ?!」
まるでタイミングを計ったような電話に、私は眉を寄せるが、妻はお構いなしで会話を続けている。
「こちらこそありがとう。え? それはいいけど・・・」
ちら、と妻がこちらを見る。何か悪い予感がする。
「何・・・」
「大丈夫よ! じゃあ後でね!」
私の返事を待たず、妻は電話を切ってしまった。
「何だったんだい?」
「妖一くんが手料理振る舞ってくれるって」
「なっ?!」
「あなた、風邪引いたから妖介くんが来てくれてたんですってね」
「あ、ああ。だが回復したぞ!」
「あらやだ、それを責めてるんじゃないですよ」
ころころと妻は笑う。
「その時に夕飯を誘ったのに来て貰えなかったから、今度はお二人で、って言ってくれたのよ」
「断る!」
「って言うと思ったから、迎えに来てくれるって」
「何?!」
目を剥く私に妻は笑顔のままだ。
「私もまもりも帰ってきたばかりで疲れてるでしょうから、って。優しいわよね、妖一くんは」
「う・・・」
「何か嫌なの?」
まさか毒なんて入れるはずもないし? と笑いかけられて私も腹をくくる。
多分食べられないことはない、はずだ・・・多分・・・。
「こんばんは」
やって来たのは悪魔一人だった。
妻は私を問答無用で助手席へと座らせる。
「なんでだ! 二人とも後ろでいいだろう!」
「オヤ俺の隣はダメですかお義父サン」
「気分の問題だ!」
喚く私を無視し、エンジンを入れる。
彼の運転は意外な程に丁寧だから不安はないが、助手席に座る必要がないのに、という葛藤の方が大きい。
「今日の夕飯は何なのかしら?」
「海外の食事は脂っこくて大変だった、と言ってたので和食です」
「あら! それは嬉しいわ。楽しみね、あなた」
「味がどうだかね」
ふん、と横を向く私ににやにやとヒル魔は笑うばかり。
「それは召し上がって頂いてからのお楽しみデスヨ」
妖介やまもりはともかく、他三人は激辛好きだと聞いている。
とんでもなく辛い煮物や辛い焼き魚なんて出てきたらどうしようかと思う。
なんだか理不尽な食卓を想像し、私は一人不安を抱えていた。
「いらっしゃい! おじいちゃん、おばあちゃん!」
中から扉を開けてくれるのは護。黒目がちでこの家唯一の黒髪の彼が笑顔で私たちを案内する。
さっさと先に上がった悪魔を余所に、私たちはリビングへと通された。
「お父さん、お母さんいらっしゃい」
「ありがとね、まもり」
「ううん。ヒル魔くんが是非、って言ってくれたから」
「アヤと妖介は?」
「向こうで手伝ってるわ」
噂のアヤが顔を出す。そうして、薄く笑みを浮かべた。
「こんにちは、おじいちゃんおばあちゃん。さ、座って」
椅子を勧められ、席に着くと手早く箸が並べられる。
湯気の立つ皿を持った妖介が笑顔でやってくる。
「今日のおかずは鯖の味噌煮、イカと里芋の煮物、ゴボウとさやいんげんの牛肉巻き、けんちん汁でーす」
どんどんと置かれる料理は、彩りこそ地味だが、見た目も香りもごく普通の和食だ。
「これ、ヒル魔が作ったのかい?」
「そうよ。たまに作ってくれるの」
美味しいのよ、と言われて半信半疑で茶碗を受け取る。
家族7人で囲んでも窮屈ではないテーブルで、賑やかな食事が始まった。
「ん! すごく美味しいわね!」
「ありがとうございます」
にこやかな妻との会話に恐る恐る鯖の味噌煮に箸を付ける。
煮くずれることなく柔らかい鯖を口に入れると、甘い味噌の味と生姜の風味が広がって、確かに美味しい。
「むむ・・・」
「お味はいかがですかお義父サン」
「そんな風に呼ばないでくれ!」
「じゃあオジイチャン」
「もっと嫌だ!」
ぶぶっ、とあちこちで笑いが起きる。
「喰わせてやろうか。ハイアーン」
「断る! なんだその色は!」
鯖の味噌煮にあるまじき赤。
おぞましさに震える私に彼はにやりと口角を上げる。
「何って、唐辛子デスヨ」
食べさせるのを早々に諦めて自分の口にそれを放り込んでいる。
いかにも辛そうだ。見ればアヤと護の皿も赤い。
「相変わらず激辛好きだよね~。なのになんで鯖味噌とかちゃんと味付けできるんだろ」
俺がやってもあんまり上手に煮えないんだよ、と妖介が鯖をつついている。
「里芋も味が染みてるし、イカも堅くなくておいしいわ」
妻は上機嫌で久しぶりの和食をつついている。
まもりも箸が進むようで、おかわりを所望していた。
「おかわりいる人は?」
アヤが代表して立ち上がり、まもりと妻、妖介と茶碗を持っていく。
「おじいちゃん、食べる?」
微笑んで手を伸ばされ、私はきれいに空になった茶碗を差し出す。
「どうぞご遠慮なさらず召し上がってクダサイ」
まだけんちん汁もおかわりあるよ、という勧めに私は悔しがりながらもお椀も差し出したのだった。
***
まもパパが書きたくて。全員で食卓囲んだら絶対ヒル魔さんは「はい、あーん」はやるよな、と思って書きました。このときにはまだあかりはいませんので7人で間違いないです♪
「おかえり」
「ただいま帰りました。ありがとう、あなた」
お土産を手に微笑んでくれる妻の存在がいかにありがたいかをしみじみ思う。
「あら、随分台所片づいてるわね」
「ああ、妖介が来てくれてたんだ。テスト期間とかで部活がなかったそうだよ」
「そうなの・・・。じゃあ、お礼にご飯でもごちそうしなきゃね!」
「そうだね」
笑顔で提案する妻に賛同していたら、電話が鳴った。
「はいはい、ちょっと待ってね~」
妻が足取り軽く電話に出た。
「はい、姉崎です。・・・あら妖一くん?」
「何っ?!」
まるでタイミングを計ったような電話に、私は眉を寄せるが、妻はお構いなしで会話を続けている。
「こちらこそありがとう。え? それはいいけど・・・」
ちら、と妻がこちらを見る。何か悪い予感がする。
「何・・・」
「大丈夫よ! じゃあ後でね!」
私の返事を待たず、妻は電話を切ってしまった。
「何だったんだい?」
「妖一くんが手料理振る舞ってくれるって」
「なっ?!」
「あなた、風邪引いたから妖介くんが来てくれてたんですってね」
「あ、ああ。だが回復したぞ!」
「あらやだ、それを責めてるんじゃないですよ」
ころころと妻は笑う。
「その時に夕飯を誘ったのに来て貰えなかったから、今度はお二人で、って言ってくれたのよ」
「断る!」
「って言うと思ったから、迎えに来てくれるって」
「何?!」
目を剥く私に妻は笑顔のままだ。
「私もまもりも帰ってきたばかりで疲れてるでしょうから、って。優しいわよね、妖一くんは」
「う・・・」
「何か嫌なの?」
まさか毒なんて入れるはずもないし? と笑いかけられて私も腹をくくる。
多分食べられないことはない、はずだ・・・多分・・・。
「こんばんは」
やって来たのは悪魔一人だった。
妻は私を問答無用で助手席へと座らせる。
「なんでだ! 二人とも後ろでいいだろう!」
「オヤ俺の隣はダメですかお義父サン」
「気分の問題だ!」
喚く私を無視し、エンジンを入れる。
彼の運転は意外な程に丁寧だから不安はないが、助手席に座る必要がないのに、という葛藤の方が大きい。
「今日の夕飯は何なのかしら?」
「海外の食事は脂っこくて大変だった、と言ってたので和食です」
「あら! それは嬉しいわ。楽しみね、あなた」
「味がどうだかね」
ふん、と横を向く私ににやにやとヒル魔は笑うばかり。
「それは召し上がって頂いてからのお楽しみデスヨ」
妖介やまもりはともかく、他三人は激辛好きだと聞いている。
とんでもなく辛い煮物や辛い焼き魚なんて出てきたらどうしようかと思う。
なんだか理不尽な食卓を想像し、私は一人不安を抱えていた。
「いらっしゃい! おじいちゃん、おばあちゃん!」
中から扉を開けてくれるのは護。黒目がちでこの家唯一の黒髪の彼が笑顔で私たちを案内する。
さっさと先に上がった悪魔を余所に、私たちはリビングへと通された。
「お父さん、お母さんいらっしゃい」
「ありがとね、まもり」
「ううん。ヒル魔くんが是非、って言ってくれたから」
「アヤと妖介は?」
「向こうで手伝ってるわ」
噂のアヤが顔を出す。そうして、薄く笑みを浮かべた。
「こんにちは、おじいちゃんおばあちゃん。さ、座って」
椅子を勧められ、席に着くと手早く箸が並べられる。
湯気の立つ皿を持った妖介が笑顔でやってくる。
「今日のおかずは鯖の味噌煮、イカと里芋の煮物、ゴボウとさやいんげんの牛肉巻き、けんちん汁でーす」
どんどんと置かれる料理は、彩りこそ地味だが、見た目も香りもごく普通の和食だ。
「これ、ヒル魔が作ったのかい?」
「そうよ。たまに作ってくれるの」
美味しいのよ、と言われて半信半疑で茶碗を受け取る。
家族7人で囲んでも窮屈ではないテーブルで、賑やかな食事が始まった。
「ん! すごく美味しいわね!」
「ありがとうございます」
にこやかな妻との会話に恐る恐る鯖の味噌煮に箸を付ける。
煮くずれることなく柔らかい鯖を口に入れると、甘い味噌の味と生姜の風味が広がって、確かに美味しい。
「むむ・・・」
「お味はいかがですかお義父サン」
「そんな風に呼ばないでくれ!」
「じゃあオジイチャン」
「もっと嫌だ!」
ぶぶっ、とあちこちで笑いが起きる。
「喰わせてやろうか。ハイアーン」
「断る! なんだその色は!」
鯖の味噌煮にあるまじき赤。
おぞましさに震える私に彼はにやりと口角を上げる。
「何って、唐辛子デスヨ」
食べさせるのを早々に諦めて自分の口にそれを放り込んでいる。
いかにも辛そうだ。見ればアヤと護の皿も赤い。
「相変わらず激辛好きだよね~。なのになんで鯖味噌とかちゃんと味付けできるんだろ」
俺がやってもあんまり上手に煮えないんだよ、と妖介が鯖をつついている。
「里芋も味が染みてるし、イカも堅くなくておいしいわ」
妻は上機嫌で久しぶりの和食をつついている。
まもりも箸が進むようで、おかわりを所望していた。
「おかわりいる人は?」
アヤが代表して立ち上がり、まもりと妻、妖介と茶碗を持っていく。
「おじいちゃん、食べる?」
微笑んで手を伸ばされ、私はきれいに空になった茶碗を差し出す。
「どうぞご遠慮なさらず召し上がってクダサイ」
まだけんちん汁もおかわりあるよ、という勧めに私は悔しがりながらもお椀も差し出したのだった。
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まもパパが書きたくて。全員で食卓囲んだら絶対ヒル魔さんは「はい、あーん」はやるよな、と思って書きました。このときにはまだあかりはいませんので7人で間違いないです♪
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鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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