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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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クローズドポジション(8)/完結

+ + + + + + + + + +
「まもり様は無自覚でいらっしゃるから」
やんわりと小馬鹿にした響きに、まもりは俯く。
「まもり様?」
「・・・すみません」
落ち込んだような声に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「何がです?」
「・・・」
色々とこみ上げてきて、まもりは何かを言おうとしたが声にならない。
足も、根が生えたようにぴくりとも動かない。
少々立ち止まってまもりを見ていたヒル魔は、周囲の視線が気遣わしげになったのを敏感に察知した。
客観的に見て、ヒル魔とまもりのこの様子は痴話喧嘩以外には見えないが、変な噂は立てないに越したことはない。
「失礼します」
「ひゃっ!?」
短く断り、ヒル魔はまもりの身体をふわりと抱き上げた。
「な、何」
「まもり様はご気分がお悪いようだ。さあ、そこを通してもらおうか」
人一人抱えているのにまるっきり重さを感じさせない足取りでヒル魔は悠然と人波をかき分けていく。
「ひ、一人で歩け」
「黙れ」
潜めた声で呟けば、まもりはぴたりと口を噤んだ。
ざわめく会場を抜け出て、バルコニーへ出て。
そこでようやくヒル魔はまもりを下ろした。
「ああ・・・いい風ですね」
籠もった室内の空気から解放され、まもりは深く深呼吸した。
冷えた夜空は数え切れない星々がより一層煌めきを強くしている。
「冷えるぞ」
ぐい、とヒル魔に肩を抱かれ、まもりはその暖かさにほっと息をついた。
「もう少ししたら戻って、もう一度踊ってから退出だな」
「ええ? まだ踊るんですか? もういいでしょうに」
「俺に言わせれば高位貴族の一人娘が二回しか踊らねぇってのも相当だぞ」
主役の姫君なんざずっと踊り通しだ、と言われてまもりは末姫の気苦労を思って眉を寄せた。
「まあ、テメェと違って小さい頃から踊り慣れてるだろうからその辺は大丈夫だろうけどな」
「そういうものですか」
「そういうもんだ」
そこまで言葉を交わして、ふとまもりは目元を和ませた。
その変化を見逃すヒル魔ではない。
「何ニヤついてやがる」
「え? 私、笑ってました? ・・・ちょっと、安心して」
まもりは肩を抱くヒル魔を見上げた。
「さっきまでのかしこまった大将の言葉、居心地が悪くてしょうがなかったんです」
「なんだ、普段散々口が悪ィだの態度が悪ィだのこき下ろすくせして」
「そうなんですよね。あんなに改めて欲しいって思ってたのに、自分でも不思議ですよ」
無意識にか、寒さを避けようとまもりはヒル魔に身体をすり寄せる。
ヒル魔は彼女に知られないように天を仰ぎ、小さく嘆息した。

それにしても、とまもりは身動ぐ。
「本当にドレスの紐がきつく感じます。早く帰りたいですね」
心底煩わしい、という口調で唇を尖らせるまもりに、覆い被さりたい衝動をそれこそ必死になってどうにか抑えたヒル魔は。
「だから、そういうこと言うなっつったろーが!」
「痛ッ!!」
彼女の額に、せめてもの意趣返しとして悔し紛れのデコピンをかましたのだった。


***
社交ダンスの漫画を読んで思いつき、モダンダンス一級の腕前を持つ弟に取材して書いた話。
私は踊りなんてからっきしなので、踊る人を見るのが楽しいです。
無自覚にヒル魔さんを振り回すまもりちゃんの話は書いててホント楽しかったです。
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