旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
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そうして、祭典の日が来る。
日が落ちてから夜半にかけて行われる祭典なので、まだ日のある時間帯から準備するデビルバッツ隊にはどこかのんびりした空気が漂っている。敵や魔物が相手ではないし、ましてや責任者が不在ともなればそれを窘める者もいない。
一応中将のムサシと栗田はいるが、やはり大将と元帥の不在は大きい。
野営テントを張り、時間までそこでのんびり各自武器を手入れしている状態だ。
「はぁ、せっかくだから元帥と大将の格好見てみたかったな」
「ハ、そうだな」
「はぁあああ、すんげぇ笑える格好かもよォ」
「ムキャアアア! 元帥に限ってそんなことはない!」
「大将は・・・どう、だろう?」
「フゴ」
「うん、僕もそう思うなぁ。きっとヒル魔も格好いいよ」
「アハーハー! ムッシューヒル魔とマドモアゼルまもりならお似合いの二人に決まってるさ!」
わいわいと賑やかな隊員たちを見守っていたムサシと雪光が、外を走る馬車の音にふと顔を上げた。
「馬車? 何か備品で足りないものでもあったか?」
「いえ。僕からは特に指示してないです」
誰が来たのか見てきますね、と雪光が野営テントから顔を出した。
途端。
「うわっ!?」
その悲鳴に、皆が緩んだ空気をぴんと張り詰めさせ、一斉に武器を手に野営テントから飛び出した。
この辺りは軍一位の隊の面目躍如だ。
だが、その動きも一様にぴたりと止まった。
『・・・』
豪奢な馬車を背に立っていたのは、目が覚めるような美女だった。
繊細なレースをふんだんに使った光沢のある紫のドレス。
きらきらと輝くアクセサリーを胸元・耳元・腕へと惜しげもなく纏い、美しい茶色の髪は複雑にけれど豪華に結い上げられている。
瞬く青い瞳、抜けるような白い肌、整った顔立ち。
それが元帥である姉崎まもりであることは一目瞭然。
けれどその出で立ちがあまりに美しすぎて、彼らは揃いも揃って言葉を失い、ただ見惚れることしかできない。
「あの・・・」
困ったのはまもりである。
参加出来なくても今回の警備に落ち度があればそれは全てヒル魔の責任になる。
同時にまもりの監督責任もあるので、最終確認くらいは、と様子見がてら姉崎家を抜け出してきたのだ。
だが、こちらを見るなり全員が硬直するとは思わなかったので、一体どうしたらよいのか見当も付かない。
「だから言っただろ、見に行くんじゃねぇって」
まもりの背後にあった豪奢な馬車から降りたのは、言わずと知れたヒル魔大将。
・・・のはずだが、ますます隊員たちは言葉を失う。
いつも天を突く金の髪は撫でつけられ、その毛先が僅かに跳ねるだけ。
まもりの紫のドレスに合わせたのだろう、濃い紫の衣装をすっきりと着こなしている。
留め具一つ見ても繊細な彫金の代物だし、靴も完璧に磨き上げられている。
どちらも見るからに高そうな衣装だが、二人とも衣装に着られることなどなく、むしろ堂々としていた。
けれど、隊員たちの反応はまもりにあらぬ誤解をさせたようだ。
「士気が下がりました・・・ね」
見苦しいものを見せるなんて軽率なまねをしてすみません、と俯いたまもりに、隊員たちはそこでやっと我に返った。
「ちちち違います! 元帥があんまりにも綺麗なんで・・・!」
「そそそうっス! ききき綺麗すぎてムキャアアア!」
「ハァ?! 発狂すんなサル! 気持ちは分かるが!」
「ハ、美男美女ってこういうことか。スゲェ」
「ハァアア、ホントにいるんだなァ。スゲェ」
「フゴ!!」
「小結くん、すっごく二人とも似合ってますって言ってるよ。僕もそう思うよ!」
わあわあと一度に話掛けられ、まもりはぱちぱちと瞬くばかり。
「こりゃあ祭典でも囲まれて大変だろうな。しっかり護衛してこいよ、ヒル魔」
「元帥、踊りすぎたりなさらないようにご注意くださいね」
どちらかといえば冷静な方に分類されるムサシと雪光の言葉に、ヒル魔はにやりと笑ってまもりの肩を抱く。
「俺がついてるんだから大丈夫だろ」
そうヒル魔が自信満々に請け負ったのだが。
「大将が言うのが一番信用ないですよね」
あっさりとまもりに突っ込まれ、その場に微妙な空気が流れた。
咄嗟に吹き出すのを堪えた部下達をヒル魔が苦々しい顔で見回す。
まもりは自らの発言の含め、全く気にした様子がないのがまた笑いのツボを刺激する。
「・・・とりあえず、もう戻られては。祭典に出る前にもまだ準備がありますよね?」
咳払いをして呼吸を整えた雪光に促され、まもりは頷いた。
身なりは整えたが、祝いの品を運ぶ段取りなどまだやるべきことは多いのだ。
「俺たちは祭典に出てくる。が、何かあったら即座に連絡を寄越せ」
このときばかりは鋭い目つきになったヒル魔に、隊員たちも先程までのゆるい空気を払拭して背筋を伸ばした。
「お任せを。ここはしっかり守ります故」
笑みを浮かべて敬礼したムサシを筆頭に、全員が同様に敬礼する。
それにまもりは僅かに笑みを浮かべ、ドレスの裾を摘んで優雅に応じたのだった。
・・・馬車が走り去った後、モン太の鼻血が止まらず一騒ぎあったのはここだけの話。
<続>
日が落ちてから夜半にかけて行われる祭典なので、まだ日のある時間帯から準備するデビルバッツ隊にはどこかのんびりした空気が漂っている。敵や魔物が相手ではないし、ましてや責任者が不在ともなればそれを窘める者もいない。
一応中将のムサシと栗田はいるが、やはり大将と元帥の不在は大きい。
野営テントを張り、時間までそこでのんびり各自武器を手入れしている状態だ。
「はぁ、せっかくだから元帥と大将の格好見てみたかったな」
「ハ、そうだな」
「はぁあああ、すんげぇ笑える格好かもよォ」
「ムキャアアア! 元帥に限ってそんなことはない!」
「大将は・・・どう、だろう?」
「フゴ」
「うん、僕もそう思うなぁ。きっとヒル魔も格好いいよ」
「アハーハー! ムッシューヒル魔とマドモアゼルまもりならお似合いの二人に決まってるさ!」
わいわいと賑やかな隊員たちを見守っていたムサシと雪光が、外を走る馬車の音にふと顔を上げた。
「馬車? 何か備品で足りないものでもあったか?」
「いえ。僕からは特に指示してないです」
誰が来たのか見てきますね、と雪光が野営テントから顔を出した。
途端。
「うわっ!?」
その悲鳴に、皆が緩んだ空気をぴんと張り詰めさせ、一斉に武器を手に野営テントから飛び出した。
この辺りは軍一位の隊の面目躍如だ。
だが、その動きも一様にぴたりと止まった。
『・・・』
豪奢な馬車を背に立っていたのは、目が覚めるような美女だった。
繊細なレースをふんだんに使った光沢のある紫のドレス。
きらきらと輝くアクセサリーを胸元・耳元・腕へと惜しげもなく纏い、美しい茶色の髪は複雑にけれど豪華に結い上げられている。
瞬く青い瞳、抜けるような白い肌、整った顔立ち。
それが元帥である姉崎まもりであることは一目瞭然。
けれどその出で立ちがあまりに美しすぎて、彼らは揃いも揃って言葉を失い、ただ見惚れることしかできない。
「あの・・・」
困ったのはまもりである。
参加出来なくても今回の警備に落ち度があればそれは全てヒル魔の責任になる。
同時にまもりの監督責任もあるので、最終確認くらいは、と様子見がてら姉崎家を抜け出してきたのだ。
だが、こちらを見るなり全員が硬直するとは思わなかったので、一体どうしたらよいのか見当も付かない。
「だから言っただろ、見に行くんじゃねぇって」
まもりの背後にあった豪奢な馬車から降りたのは、言わずと知れたヒル魔大将。
・・・のはずだが、ますます隊員たちは言葉を失う。
いつも天を突く金の髪は撫でつけられ、その毛先が僅かに跳ねるだけ。
まもりの紫のドレスに合わせたのだろう、濃い紫の衣装をすっきりと着こなしている。
留め具一つ見ても繊細な彫金の代物だし、靴も完璧に磨き上げられている。
どちらも見るからに高そうな衣装だが、二人とも衣装に着られることなどなく、むしろ堂々としていた。
けれど、隊員たちの反応はまもりにあらぬ誤解をさせたようだ。
「士気が下がりました・・・ね」
見苦しいものを見せるなんて軽率なまねをしてすみません、と俯いたまもりに、隊員たちはそこでやっと我に返った。
「ちちち違います! 元帥があんまりにも綺麗なんで・・・!」
「そそそうっス! ききき綺麗すぎてムキャアアア!」
「ハァ?! 発狂すんなサル! 気持ちは分かるが!」
「ハ、美男美女ってこういうことか。スゲェ」
「ハァアア、ホントにいるんだなァ。スゲェ」
「フゴ!!」
「小結くん、すっごく二人とも似合ってますって言ってるよ。僕もそう思うよ!」
わあわあと一度に話掛けられ、まもりはぱちぱちと瞬くばかり。
「こりゃあ祭典でも囲まれて大変だろうな。しっかり護衛してこいよ、ヒル魔」
「元帥、踊りすぎたりなさらないようにご注意くださいね」
どちらかといえば冷静な方に分類されるムサシと雪光の言葉に、ヒル魔はにやりと笑ってまもりの肩を抱く。
「俺がついてるんだから大丈夫だろ」
そうヒル魔が自信満々に請け負ったのだが。
「大将が言うのが一番信用ないですよね」
あっさりとまもりに突っ込まれ、その場に微妙な空気が流れた。
咄嗟に吹き出すのを堪えた部下達をヒル魔が苦々しい顔で見回す。
まもりは自らの発言の含め、全く気にした様子がないのがまた笑いのツボを刺激する。
「・・・とりあえず、もう戻られては。祭典に出る前にもまだ準備がありますよね?」
咳払いをして呼吸を整えた雪光に促され、まもりは頷いた。
身なりは整えたが、祝いの品を運ぶ段取りなどまだやるべきことは多いのだ。
「俺たちは祭典に出てくる。が、何かあったら即座に連絡を寄越せ」
このときばかりは鋭い目つきになったヒル魔に、隊員たちも先程までのゆるい空気を払拭して背筋を伸ばした。
「お任せを。ここはしっかり守ります故」
笑みを浮かべて敬礼したムサシを筆頭に、全員が同様に敬礼する。
それにまもりは僅かに笑みを浮かべ、ドレスの裾を摘んで優雅に応じたのだった。
・・・馬車が走り去った後、モン太の鼻血が止まらず一騒ぎあったのはここだけの話。
<続>
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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