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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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クローズドポジション(7)

+ + + + + + + + + +
同時に女よけにもなる、とヒル魔はそこら中から向けられる秋波をことごとく無視し続ける。
彼自身浮き名はかなり流れているが、実際に貴族の女たちに手を出すことはほとんどない。
貴族ではないにしろ高位の大将職にあるわけだから、引く手数多の彼の人気はまもりに負けず劣らず高く、その気になればよりどりみどりなのに手を出さないのがストイックに見えて更に評判が上がっているのが実情。
彼には心に決めた女がいるから放っておいて欲しいというのが正直なところなのである。
「でも、大将は色々な女性と踊りたいんじゃないんですか? ほら、姫君もいらっしゃるし」
が、全く無自覚なまもりはいとも容易くヒル魔を落ち込ませる。
だが落ち込んでいてもまもりがそれを汲み取るはずがないので、ヒル魔はわざと大仰に肩をすくめる。
「とんでもない。私はただ、まもり様と踊れれば満足です」
「・・・はあ」
まったく気のない返事である。いかにヒル魔とはいえ、誰か慰めろ、と言いたくなる。
ふ、と。
楽隊が演奏を止めた。
「いよいよですね」
す、とヒル魔がまもりの手を引く。
「うう・・・どうしても、ですか?」
「人間、諦めと開き直りが大事だそうですよ」
にっこりと笑って見せたヒル魔に、まもりはきゅっと眉を寄せた。
「あなたの辞書にはない言葉でしょうに」
「そのとおり。よくご存じでいらっしゃる」
「馬鹿にしてますね」
「滅相もない」
二人は軽口を交わしながらダンスフロアに足を踏み入れる。
そうしてごく自然にポジションについた。
もう触れ合っても驚いたり戸惑ったりする時期は過ぎている。
楽隊の指揮者が静かに指揮棒を振り下ろして、ゆったりとしたワルツが空気を鮮やかに彩る。
その中を、息を合わせた人々の足が軽快に進んでいく。

「あら、まもりも踊れたのね」
「ああ、あのヒル魔大将に特訓して貰ったそうだよ」
「あの子がねえ・・・」
同じようにダンスフロアで踊りながら、斜め前にいる二人を眺めて会話を交わすのは、姉崎家の当主夫妻だ。
こちらは危なげなく、美しい動きで踊りそのものは勿論、会話を楽しむ余裕がある。
「随分と仲のいい」
口笛でも吹きそうな当主に、妻は口角を上げて肩をすくめるだけ。
「嬉しそうね」
「ああ。やっと出てきたからね」
それが公の場所に出てきた娘と、そんな娘を引きずり出した男の両方に向けられた言葉だと彼女はすぐ気づいた。
ふふふ、と笑みを浮かべて彼らを改めて見つめる。
こちらの会話や周囲からの視線などなどお構いなしに踊る二人はまるで絵のように美しく、けれどどこかとても楽しそうな雰囲気を醸し出していて、見ていて心地いい。
「ヒル魔大将、うちの娘を貰ってくれないかしら」
「貰う気はあるようだよ。それよりも、まもりに自覚させるような手を打った方がいいんじゃないかい?」
「そうねえ。我が娘ながらどうしてって思うくらい鈍いものね」
くるくると踊りながらひそひそと算段を立てる両親のことなどつゆ知らず。
どうにか一曲踊り終えたまもりは、上がった息もそのままに、ようようドレスの裾を摘み、頭を下げる。
「・・・ありがとう、ございました」
ぜいぜいと息切れするまもりに、ヒル魔は苦笑して手を差し伸べる。
「あちらで飲み物でも頂戴しましょう」
すい、と手を引かれながらまもりはもの言いたげな周囲の女性の視線に気づいた。
その視線の先を辿れば、それはヒル魔に向いていて。
ちらりと見れば楽隊は次の楽曲の準備に入っていて、入れ替わったりそのまま残ったりした人々が踊るべく待ちかねている。
今、踊り終えたヒル魔に声を掛けたい女性が沢山いるのだろうと、いかに鈍いまもりであっても気づいたから。
「あの、私なら大丈夫ですから」
まもりはヒル魔から離れようと声を掛けたが。
「駄目ですよ」
ヒル魔の目がまっすぐにまもりを射貫く。
「私から離れてはなりません」
「なんでですか?」
「私がこの手を離したら、まもり様は延々あそこやそこらやここらの貴族連中と踊り続けることになるからです」
まもりはヒル魔の話しながらちらりちらりと視線を向けた先を同じように見た。
そうして、どれも違わずまもりを見ていることに気づいて困惑する。
「なんで私なんかと」
先程の踊りにより、まもりが到底上手とは呼べないレベルであることは知れているだろう。
それなのにまもりと踊りたがるとは意味が分からない。


<続>
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