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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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クローズドポジション(6)

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夜の帷に包まれ、あちらこちらで灯される光が暖かく城を染め上げる。
昼日中は町中で様々に催し物が行われていたが、これからが本番。
王族と限られた招待客による、城内で行われるダンスパーティーが始まる。
馬車から降り、ヒル魔に手を取られしずしずと進むまもりは、その場にいる者全ての視線を独占した。
ゆったりとした動きが彼女の空気をより優雅に彩っている。
感嘆の声でさざめく中を歩くまもりだが。
「・・・歩きにくいです」
実際のところ、その声など全く聞く余裕はなかった。
「ゆっくり行きゃいい。焦ンな」
「なんでドレスなんて着ないとならないんでしょうか。息苦しいし動きづらいし」
ドレスの紐がきついです、と嘆息するまもりにヒル魔は片眉を上げる。
「随分と大胆な発言だなァ」
「? 何がですか?」
「ドレスの紐がきつい、っつーのは『脱がせて欲しい』っていう誘いになんだよ」
「へえ、そうなんですか」
感心した声を上げただけで、取り乱すそぶり一つないまもりに、ヒル魔は少々沈黙した。
「・・・そうなんですよ。だから迂闊なこと言わないでくださいね」
「? どうしていきなり敬語なんですか」
「そういう気分なんです」
はて、と首を傾げるまもりに、ヒル魔は心中この糞ニブニブ元帥め、と毒づく。
が、口には出来ない。
今の会話の全容を、まもりが正確に理解して積極的に近づいてくるのならいいが、絶対に悪い方へ悪い方へと考え彼と距離を置こうとするのが目に見えている。
それだったら、この距離を保とうと思っても罰は当たらないだろう。
まずまもりの方が位の高い元帥であり高位貴族の一人娘。
ヒル魔がまもりを立てるような話し方をするのが普通なので、他人に口を挟ませないよう口調を改めたのだ。
「会場に入ったら私は両親の側に行きます。大将はどうします?」
無防備に見上げてくる青い瞳に、ヒル魔は眸を細めて笑みを浮かべる。
「勿論ご一緒しますよ」
途端、まもりの瞳が周囲を彷徨った。
「でも」
この国の跡継ぎを娶る姫君の誕生日、ということで貴族の中でも姫と年の近い青年が多く参加している。
そうして、そんな青年を狙ってか貴族の若い娘たちも数多く見られる。
壁際に並び笑いさざめく女性達はこの場を華やかに彩る花そのもの。
せっかく綺麗な女性がこんなに沢山いるのに、自分の側にいるのでは勿体ないだろう、と。
そう口にしようとしたまもりの右手を、やや強くヒル魔が引いた。
「せっかく特訓したのに、お披露目もしないのはどうかと思います」
「別に無理に踊らなくてもいいのでは」
私は両親の方へ、と言うまもりにヒル魔はくるりと彼女の前に立ちふさがった。
会場の中は雑多な人の喧噪と楽隊の奏でる音楽が入り交じり、沈黙とはほど遠い。
けれど、その一瞬。
まもりは全ての空気が消え去った感覚を味わった。
つい、と。
まもりの捕らえられた右手が引き上げられ、ヒル魔の薄く笑みを掃いた唇に触れる。
「私と踊ってください、まもり様」
妙に芝居じみた動き、声、顔。
その全てに飲まれたまもりは、ただ茫然としたままこくりと頷くのがやっと。
「じゃあご両親のところに参りましょう」
「え、・・・あ、はい」
するりと手が解け、代わりに隣に立ったヒル魔がまもりの腰を抱く。
先程触れられた右手が熱くて仕方ない気がして、まもりはこっそり触れて火傷をしてないか確かめてしまった。

無事姉崎家の当主夫妻と合流して王と姫君へ祝辞を述べる最中も、ヒル魔はまもりの隣に立ち続けていた。
周囲との距離を保てるようごく自然に間に立ってくれているヒル魔に、まもりは申し訳なさそうに礼を述べる。
「お付き合いしてくださってありがとうございます」
「このくらいのこと、礼には及びませんよ」
そう飄々と言いながら、ヒル魔は周囲に視線を向け、ふんと鼻で笑う。
途端、悔しそうな嫉妬混じりの視線を感じて内心口角をつり上げた。
まもりはその名を知らぬ者でも声を掛けたくなるほどの美しさだが、そこに姉崎家の名が重なれば魅力は倍増する。
どうにか挨拶をして出来ることならその手を取って踊りたい、と願う貴族は数多いのだ。
けれどその全てをヒル魔が隣にいることで打ち消してしまう。
公式な場でも離れず隣にいるのは婚約者かそれに相当する親しさの者でなければならないのが一般的な考えだ。
もう既に姉崎家の一人娘であるまもりはあの男のお手つきなのだ、と思い込ませるには十分な演出となった。


<続>
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