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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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クローズドポジション(4)

+ + + + + + + + + +
「え・・・いやいやいやいや。私、運動関係全然駄目なんで、ほら、その、踊り覚えるなんてそんな・・・きゃっ」
「踊りなんざ単純なステップの繰り返しだ」
ほら立て、と強引に立たせられ、まもりはつんのめりながらヒル魔にしがみつく。
「ちょっと、危ないじゃないですか!」
「支えてやるから、危ねぇことは一切ねぇよ」
す、と。
まもりの右手を取り、ヒル魔の左手へ。
まもりの左手をヒル魔の右上腕の上に。
まもりの左腕の下に、ヒル魔の右腕。
まもりの背中に、ヒル魔の右手。
そうして、仰け反る身体を引き寄せるようにして、腰が触れ合う位置へ。
「・・・なっ」
思わずまもりが距離を取ろうと仰け反ったが、ヒル魔の手はびくともしない。
「コレが基本姿勢。テメェ反りすぎだ」
背筋をまっすぐにするようヒル魔に支えられ、まもりは困惑しきった顔で見上げる。
近い。
「ステップは三拍子。テメェは右足を後ろに下げるところから」
「え? え?」
「おら1、2、3」
「あ、え?! うぅわっ」
ヒル魔が全くぶれないのに対し、まもりはよろよろと言われるがままに下がったり進んだりを繰り返す。
言われるがままにステップを踏み、ほとんど引き回されるような勢いで五種類の足捌きを教えられる。
「これさえ覚えりゃ後は繰り返しだ。こら、下見るんじゃねぇ」
「簡単に言ってくれますね!」
たったそれだけで息が上がるまもりに、にや、とヒル魔は笑う。
「毎日やりゃ嫌でも覚えんだろ。さー続きやんぞ」
「え?! ちょっと、仕事・・・」
「そんなの後でどうとでもなる。時間が足りねぇ、今から毎日やったって遅いくれぇだ」
さっさと言えばいいものを、と言いながらヒル魔の顔は至って楽しげだ。
「ええー!?」
まもりが眉を寄せて非難が滲む声を上げても、それは崩れない。
「最初からいくぞ。1、2、3」
「ちょっ、待って!」
強引に引かれてどうにか足を動かし、まもりはくるりくるりと促されるがままに回り続ける。
そうやってしばらく必死に踊り続け。
何度目かに回って、扉の前でまもりははたと気づいた。
扉がほんの僅か、細く開いている。その向こうに人の気配があったのだ。
「・・・何やってるんです、あなたたち」
ぴたりと動きを止め、その隙間から覗き込んでいたいくつもの目に声を掛ける。
「・・・えと」
「書類、届けに来たんです」
「なんだか入りづらくて」
「・・・すみません」
やけに恐縮したような声に、まもりが口を開く前に。
「覗き見たぁ随分糞暇な野郎共が多いみてぇだ・な・ァ!」
おどろおどろしい声でヒル魔が告げながら扉を勢いよく蹴り開いた。
「ぐえっ!」
「ぎゃっ!」
バランスを崩した覗き見していた者たちが音を立ててその場に折り重なる。
まもりから手を離し、ヒル魔はゆったりと彼らに歩み寄る。
「テ・メ・ェ・ら」
じゃきん、とどこからともなく取り出した拳銃を突きつけて。
「・・・ンなことにしか使わねぇ目なら、必要ねぇよなァ?」
ゆったりとした口調が更に恐ろしさを助長させる。
「ヒィイイイ!!」
「す、すみませんゴメンナサイ!!」
慌てふためく連中の尻を蹴り飛ばして扉を閉めようとするヒル魔に、どうやら先程から廊下で一人傍観者を気取っていたらしいムサシがのんびりと口を開いた。
「男の嫉妬はみっともないぞ」
「煩ェ糞ジジィ!! さっさとこいつら連れて仕事に戻れ!」
それを否定しないヒル魔に、ムサシは肩をすくめて折り重なった部下をひょいひょいと立ち上がらせていく。
「あー、わかったわかった。お前もほどほどにしろよ」
「ケッ!」
苛立ちながら今度こそ扉をしめたヒル魔に、まもりが近寄る。
「すみません、大将」
「ア?」
眉を寄せたヒル魔に、まもりは眉尻を下げた。
「私がふがいないばかりに、部下にみっともないところを見せてしまって」
それにヒル魔は僅かに眉を寄せた。
どうやらまもりはヒル魔が彼女と踊っているところを見られて怒ったのだと思ったらしい。
どうしてこの女は壊滅的に鈍いんだ、と誰にともなく内心呟く。
「ベツニみっともないなんてことはねぇだろ。おらさっさと続きやんぞ」
俯くまもりにヒル魔は小さく舌打ちした。
「え? まだ踊るんですか?」
「テメェまだ全然覚えてねぇだろうが。来い」
「ええ!?」
焦るまもりを再び捕まえて、ヒル魔はその距離にこっそりと息を吐く。
とりあえず踊りを覚えさせるのはいいけれども、その後祭典の場で寄りつく害虫をどう駆除するかが今後の課題だな、と。
自らに無理矢理すぎる課題を出して、この距離以上に近づこうとしないよう自制している努力が報われる日を願わずにはいられない。
そんなことを考えてどうにか日々をやり過ごすヒル魔なのだった。


<続>
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