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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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クローズドポジション(1)

(ヒルまもパロ)
※軍人シリーズ。『深淵と小箱』の後です。

+ + + + + + + + + +
この国には王子が存在しない。
王妃は数年前に亡くなり、王妃を心底愛していた王は後添えを貰うことも、愛妾を囲うこともない。
これからもそうするつもりらしい。
残された王室の血筋は全て女。
二人の間には娘の他に息子も存在したが、生来病弱で既にこの世を去っている。
その姫君達も上から順に他国へと嫁いでいる。
王家の血筋を保つべく残されたのは末の娘・小春。
彼女はこの冬、十六の誕生日を迎える。
その誕生日を祝う祭典が彼女の公式なお披露目の場となるのだ。
よって、当日は立派な祭典が催され、国内外から賓客があることが予想されている。
そのため、秋口から軍部は当日のスケジュール調整に余念がない。

姉崎まもり元帥は集めたデビルバッツ隊の隊員達を見回した。
会議室の机には王都の全体図が置かれている。
「城そのものに術師による結界が張られますから、城内の警備は比較的少人数で済みそうです。近衛兵たちが中心になって行うので十分足りるでしょう」
「では我々は王都に配備されるのですか?」
「いえ、我々は王都外周の警備をします」
まもりが指さした箇所は王都の外れ。
「ここに臨時で小屋を建て、全体統括はホワイトナイツ隊が行います。我々は正門を守る位置に配備されます」
「ホワイトナイツ隊が?」
それに周囲はざわついた。
この国の軍には複数の隊が存在する。それぞれの特性を生かし、活動の場こそ違えどくくりは同じ。
ホワイトナイツ隊は軍の中でも特に防御力が優れている。警備にはうってつけのはず。
対してデビルバッツ隊は攻撃が重視の、正反対のタイプだ。
そうして何より、姉崎元帥を擁してヒル魔大将が率いるデビルバッツ隊は今現在、各隊の中で最も位が高いのだ。
本来であれば統括こそデビルバッツ隊、防御はホワイトナイツ隊が行うべきではないか。
その疑問が隊内を駆け巡ったのである。
けれど。
「今回は仕方ないんです」
まもりが嘆息した。その顔が憂鬱そうなのを見て取って、全員に不安が広がる。
もしやデビルバッツ隊が何か粗相をしでかして、今回の異例な配置が発生したのではないか。
もしやこのことが切っ掛けで、元帥や大将に何か迷惑が掛かるのではないか。
その成り行きを見ていたヒル魔大将がここでやっと口を開いた。
「ンな顔すんな。責任者が当日不在だから統括が出来ねぇって話だ」
「不在?」
疑問符を浮かべた隊員達にまもりはこくりと頷いた。
今回の祭典に、まもりとヒル魔の二人は祭典への招待を受けているのだという。
高位の軍人だから、あり得る話ではある。
「だから第二位のホワイトナイツ隊に統括をお願いしたんです」
まもりはまた嘆息した。
「あちらの隊にもあなたたちにも本当に申し訳ないと思ってます」
疑問は解決したが、なんだかその場に崩れ落ちてしまいそうなくらい陰鬱なまもりの様子に、隊員達はおろおろと顔を見合わせる。
「大丈夫ですか? 元帥」
「調子がお悪いのなら無理なさらない方が・・・」
労る隊員達に対し、ヒル魔が舌打ちする。
「コイツの調子が変なのは、当日祭典に出なきゃなんねぇっつーのが嫌だからだ」
途端にまもりが顔を上げる。
「嫌って!」
「事実だろうが」
「・・・そうですけど」
まもりはじろりとヒル魔を睨め付ける。
「貴方も参加するのに随分と平然となさってるじゃないですか」
「俺は別に参加して困るような事はねぇからなァ。それとも何か困ったことでもあるんですか?」
ニヤニヤと笑われて、まもりはむっと口を引き結んだ。
「・・・とにかく! 当日不在の私と大将を除き、全員正門警備にあたりますから、そのつもりでいてください。具体的な予定は後日他の隊とも調整して足並みを揃えます」
『はっ!!』
「では解散。各自持ち場に戻りなさい」
一礼して出て行く隊員達を見送り、全員が出て行った後でまもりはもう一度嘆息した。
「・・・祭典・・・ドレス・・・ダンス・・・最悪」
「最悪とまで言うか」
一人背後で気配を消していたヒル魔を振り返り、まもりは不機嫌に問いかける。
「何で残ってるんですか」
「随分ですね」
ヒル魔はぴん、と片眉を上げて彼女を見下ろす。
「俺がエスコートするんだから心配なんざする必要ねぇだろーが」
「・・・本ッ当に! 心底! 嫌でしたけれどもね・・・ッ!!」
ぎりぎりと歯がみするまもりににやにやと口角を上げて見せるヒル魔。
どうしてこんなことになってしまったのか、とまもりは祭典の知らせが届いた日から今までのことを思い返していた。


<続>
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