旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
練習に明け暮れる帝黒学園とはいえ、休みだってちゃんとある。
それでも下っ端の者たちは自主練習に明け暮れるのが常で、不本意ながら四軍という位置にいる棘田も大抵自主練習に休日を費やすことが多い。
そんな休日のとある日。
「あれ?」
「どないした、安芸」
平良がその声を拾う。
「んー、今棘田が出たから」
部員のほぼ全てが寮生活の帝黒学園では、一軍とそれ以外の居住スペースも格段の差がある。だから普段では四軍と一軍は同じ寮内でもすれ違うことはないのだが、たまたま外を見ていた安芸は気が付いたらしい。
「ふーん?」
見れば寮の出口付近で携帯を取り出し、どこぞへ掛けている。その様子が妙に浮ついているようで、二人は不思議に思う。
よく一軍の花梨に食ってかかる彼の様子では、常に余裕などない感じなのに、今のはその状態とも違うし。
「まさか女と会うとか」
「は?! 一軍にのし上がれもしないのに女か!?」
「一軍と女性は関係ないだろう」
後ろからの声に、二人は振り返る。そこには同じように外をうかがう大和。
通話を終えた棘田が足取り軽く出口へと向かっている。そうだ、と大和が何か思いついたように言う。
「丁度今外にタカと花梨がいるから、後を付けるように言おうか」
楽しげに携帯を取り出す大和に、平良と安芸は上着を取りに部屋に戻る。
おもしろそうなことには全力を尽くすのが彼らのモットーだからだ。
結果、大和を筆頭として鷹・花梨・平良・安芸の5人がこそこそと彼の後をついて行くこととなった。
「うう・・・なんで棘田先輩の跡なんてつけなかあかんの?」
見つかったらまた怒られる、と困った風情の花梨には誰も取り合わない。
「棘田氏、随分苛ついているね」
「彼が苛ついてるなんていつものことだろ」
「誰待ちなんやろうな?」
「この状態だ、絶対女だろ」
わいのわいの言いながらつけられていても棘田は全く気が付いていない様子。
ただ携帯をいじったりイライラと腕時計を見たりと忙しない。
それでも癇癪を起こして立ち去らない彼の、あり得ない程辛抱強い様子に皆してじっと様子を伺っている。
と。
「――――・・・」
彼がほっとしたように誰かの名を呼んだ。
聞き取れなかったが、彼の目の前に小走りにやって来た少女は嬉しげに彼の名を呼んだ。
「キリオ! ごめんね、新幹線のチケットが・・・」
申し訳なさそうな彼女の声を、棘田の声がきっぱりと遮った。
「その前!」
「あ、ごめん」
そしてふわりと彼女が笑った。柔らかい、春の訪れを表情にしたらこんな感じだろうか、という笑みで。
「会いたかったわ、キリオ」
「ああ」
そのまま抱きつく彼女と、抱き留める棘田。さも当然という甘ったるい空気に思わず安芸が叫ぶ。
「ぎゃー、棘田が女とちちくりあってる!!」
「っ?!」
「馬鹿!」
焦って諫めても時既に遅し。
「あああ棘田さんが怒ってこっちに来はるぅう!!」
慌てて彼女を放し、棘田が普段の三割り増しで厳しい顔をしてつかつかと固まってる5人の所まで歩み寄る。
「何! やってんだ!! テメェら!!」
「なんか面白そうだったから」
「棘田氏には彼女がいたんだね」
「この暇人どもが!! 花梨、テメェまでなにやってやがる!!」
「あああごめんなさいごめんなさい!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ面々に、背後からたたっと駆け寄る小さい足音。
「キリオ?」
「あ、悪い」
袖を引かれ、棘田はあっさりと振り返った。その変わり身の早さに皆が吹き出しそうになる。
(悪いって言ったぜ!)
(謝れるんだ?)
(俺様みたいな発言ばっかするくせに!)
(ウチには言ってくれたことあらへんのに・・・)
ぼそぼそと頭を寄せ合う連中に一瞥をくれて、棘田は彼らを置いてさっさと行こうと踵を返し掛ける。
だがそれは目の前に立ちはだかった男に止められる。
「やあ、初めまして。僕は帝黒アレキサンダースの大和猛というんだ」
「触るな!」
握手を求める大和だが、棘田に牽制される。その様子を見ていた彼女は、またふわんと笑った。
「初めまして。薊サラと申します」
ぺこりと頭を下げる彼女に安芸が話しかける。
「初めまして、俺は安芸」
「俺は平良!」
「本庄鷹」
「あ、ウチは小泉花梨っていいます」
わいわいと話しかける連中に棘田はさっと彼女を背後に庇う。
「近寄るんじゃねぇよ! テメェら、なんで人の後つけて来てるんだよ!」
「楽しそうだったから」
「ふざけんな!!」
怒鳴る棘田の後ろで、サラは笑顔を浮かべている。慣れた風情だ。
その騒ぎの合間を縫って、平良が彼女に声を掛ける。
「なあ、薊さん? 棘田と付きおうて長いん?」
「え? ええ、三年・・・かな」
「三年!? えろう長いんやなぁ。何? 東京から来てるんか?」
「はい。だからあんまり会えないんですけど・・・」
「ああ!? 何喋ってんだよ!」
平良に気が付いた棘田が戻ってくる。
「いつも怒鳴ってて煩うないんか?」
「キリオは優しいですよ」
「・・・はあ、ごちそうさん」
あっさりと惚気られ、平良は両手を上げた。
「離・れ・ろ!」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「俺との時間が減るだろうが! 来い、サラ!」
「うん」
「おーっと!」
ざっとその行く手を平良がさっと遮る。まるで悪人の如く道をふさぎ、にやりと笑った。
「せっかく大阪までお越し頂いたんやし、案内して差し上げるのが筋っちゅーもんや!」
「あぁあ!? 煩ぇ、いいからどけ!」
「キリオ・・・」
「あ?!」
気が付けばサラの荷物は花梨の手に渡っていた。にっこりと花梨は笑う。
「いつも棘田先輩にはお世話になっとるし、今日はサラさんの荷物持ちさせていただこう思います」
「いや、そんなこと・・・」
戸惑うサラに平良と安芸が声を被せる。
「まあまあ遠慮せんと!」
「飯はタカが奢るから!」
「なんで俺が」
「はっはっは、いいじゃないかタカ」
「なんでお前ら着いてくる気満々なんだよ!!」
ああもう、とぼやく棘田の腕に寄り添うサラの身体。
「・・・たまにはいいんじゃない?」
苦笑する彼女に、棘田は盛大なため息をついた。
「全部そっちのオゴリだぞ!」
「棘田氏の分は自分で出したまえ」
「なんでだよ!? 人のデートの邪魔しておいて!!」
それでも動き出した集団の中で、棘田はもう一度大きなため息をついた。
***
27000HITを踏まれた昂様リクエスト『帝黒学園リク』でした。立ち読みしかしないので帝黒学園メンバーが判らず、今時点で知ってる一軍5人だけと相成りました。安芸、でよかったですよね・・・?(あやふや)
『彼女を登場させて棘田さんにいい目を!(そんないい目でもないけど)』というリクエストに彼女を捏造させていただきました。「いばら」だから「あざみ」という単純さです。楽しく書かせて頂きました♪リクエストありがとうございましたー!!
昂様のみお持ち帰り可。
それでも下っ端の者たちは自主練習に明け暮れるのが常で、不本意ながら四軍という位置にいる棘田も大抵自主練習に休日を費やすことが多い。
そんな休日のとある日。
「あれ?」
「どないした、安芸」
平良がその声を拾う。
「んー、今棘田が出たから」
部員のほぼ全てが寮生活の帝黒学園では、一軍とそれ以外の居住スペースも格段の差がある。だから普段では四軍と一軍は同じ寮内でもすれ違うことはないのだが、たまたま外を見ていた安芸は気が付いたらしい。
「ふーん?」
見れば寮の出口付近で携帯を取り出し、どこぞへ掛けている。その様子が妙に浮ついているようで、二人は不思議に思う。
よく一軍の花梨に食ってかかる彼の様子では、常に余裕などない感じなのに、今のはその状態とも違うし。
「まさか女と会うとか」
「は?! 一軍にのし上がれもしないのに女か!?」
「一軍と女性は関係ないだろう」
後ろからの声に、二人は振り返る。そこには同じように外をうかがう大和。
通話を終えた棘田が足取り軽く出口へと向かっている。そうだ、と大和が何か思いついたように言う。
「丁度今外にタカと花梨がいるから、後を付けるように言おうか」
楽しげに携帯を取り出す大和に、平良と安芸は上着を取りに部屋に戻る。
おもしろそうなことには全力を尽くすのが彼らのモットーだからだ。
結果、大和を筆頭として鷹・花梨・平良・安芸の5人がこそこそと彼の後をついて行くこととなった。
「うう・・・なんで棘田先輩の跡なんてつけなかあかんの?」
見つかったらまた怒られる、と困った風情の花梨には誰も取り合わない。
「棘田氏、随分苛ついているね」
「彼が苛ついてるなんていつものことだろ」
「誰待ちなんやろうな?」
「この状態だ、絶対女だろ」
わいのわいの言いながらつけられていても棘田は全く気が付いていない様子。
ただ携帯をいじったりイライラと腕時計を見たりと忙しない。
それでも癇癪を起こして立ち去らない彼の、あり得ない程辛抱強い様子に皆してじっと様子を伺っている。
と。
「――――・・・」
彼がほっとしたように誰かの名を呼んだ。
聞き取れなかったが、彼の目の前に小走りにやって来た少女は嬉しげに彼の名を呼んだ。
「キリオ! ごめんね、新幹線のチケットが・・・」
申し訳なさそうな彼女の声を、棘田の声がきっぱりと遮った。
「その前!」
「あ、ごめん」
そしてふわりと彼女が笑った。柔らかい、春の訪れを表情にしたらこんな感じだろうか、という笑みで。
「会いたかったわ、キリオ」
「ああ」
そのまま抱きつく彼女と、抱き留める棘田。さも当然という甘ったるい空気に思わず安芸が叫ぶ。
「ぎゃー、棘田が女とちちくりあってる!!」
「っ?!」
「馬鹿!」
焦って諫めても時既に遅し。
「あああ棘田さんが怒ってこっちに来はるぅう!!」
慌てて彼女を放し、棘田が普段の三割り増しで厳しい顔をしてつかつかと固まってる5人の所まで歩み寄る。
「何! やってんだ!! テメェら!!」
「なんか面白そうだったから」
「棘田氏には彼女がいたんだね」
「この暇人どもが!! 花梨、テメェまでなにやってやがる!!」
「あああごめんなさいごめんなさい!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ面々に、背後からたたっと駆け寄る小さい足音。
「キリオ?」
「あ、悪い」
袖を引かれ、棘田はあっさりと振り返った。その変わり身の早さに皆が吹き出しそうになる。
(悪いって言ったぜ!)
(謝れるんだ?)
(俺様みたいな発言ばっかするくせに!)
(ウチには言ってくれたことあらへんのに・・・)
ぼそぼそと頭を寄せ合う連中に一瞥をくれて、棘田は彼らを置いてさっさと行こうと踵を返し掛ける。
だがそれは目の前に立ちはだかった男に止められる。
「やあ、初めまして。僕は帝黒アレキサンダースの大和猛というんだ」
「触るな!」
握手を求める大和だが、棘田に牽制される。その様子を見ていた彼女は、またふわんと笑った。
「初めまして。薊サラと申します」
ぺこりと頭を下げる彼女に安芸が話しかける。
「初めまして、俺は安芸」
「俺は平良!」
「本庄鷹」
「あ、ウチは小泉花梨っていいます」
わいわいと話しかける連中に棘田はさっと彼女を背後に庇う。
「近寄るんじゃねぇよ! テメェら、なんで人の後つけて来てるんだよ!」
「楽しそうだったから」
「ふざけんな!!」
怒鳴る棘田の後ろで、サラは笑顔を浮かべている。慣れた風情だ。
その騒ぎの合間を縫って、平良が彼女に声を掛ける。
「なあ、薊さん? 棘田と付きおうて長いん?」
「え? ええ、三年・・・かな」
「三年!? えろう長いんやなぁ。何? 東京から来てるんか?」
「はい。だからあんまり会えないんですけど・・・」
「ああ!? 何喋ってんだよ!」
平良に気が付いた棘田が戻ってくる。
「いつも怒鳴ってて煩うないんか?」
「キリオは優しいですよ」
「・・・はあ、ごちそうさん」
あっさりと惚気られ、平良は両手を上げた。
「離・れ・ろ!」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「俺との時間が減るだろうが! 来い、サラ!」
「うん」
「おーっと!」
ざっとその行く手を平良がさっと遮る。まるで悪人の如く道をふさぎ、にやりと笑った。
「せっかく大阪までお越し頂いたんやし、案内して差し上げるのが筋っちゅーもんや!」
「あぁあ!? 煩ぇ、いいからどけ!」
「キリオ・・・」
「あ?!」
気が付けばサラの荷物は花梨の手に渡っていた。にっこりと花梨は笑う。
「いつも棘田先輩にはお世話になっとるし、今日はサラさんの荷物持ちさせていただこう思います」
「いや、そんなこと・・・」
戸惑うサラに平良と安芸が声を被せる。
「まあまあ遠慮せんと!」
「飯はタカが奢るから!」
「なんで俺が」
「はっはっは、いいじゃないかタカ」
「なんでお前ら着いてくる気満々なんだよ!!」
ああもう、とぼやく棘田の腕に寄り添うサラの身体。
「・・・たまにはいいんじゃない?」
苦笑する彼女に、棘田は盛大なため息をついた。
「全部そっちのオゴリだぞ!」
「棘田氏の分は自分で出したまえ」
「なんでだよ!? 人のデートの邪魔しておいて!!」
それでも動き出した集団の中で、棘田はもう一度大きなため息をついた。
***
27000HITを踏まれた昂様リクエスト『帝黒学園リク』でした。立ち読みしかしないので帝黒学園メンバーが判らず、今時点で知ってる一軍5人だけと相成りました。安芸、でよかったですよね・・・?(あやふや)
『彼女を登場させて棘田さんにいい目を!(そんないい目でもないけど)』というリクエストに彼女を捏造させていただきました。「いばら」だから「あざみ」という単純さです。楽しく書かせて頂きました♪リクエストありがとうございましたー!!
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
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