旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
アヤが無口になった理由を知ったとき、俺は渋い顔になった。
俺がそういう顔をしたと聞いた姉崎の父親はそりゃあ喜んだそうだ。
その後に理由を聞いて、やっぱり同じ顔になったらしいが。
アヤはある日を境に、ぱったりと喋らなくなった。
たまたま俺が不在だったので、姉崎はアヤが病気になったと大騒ぎし、俺の携帯はしばらくあいつからの着信とメールばかりで履歴が埋め尽くされた。
あまりに煩いので早々に仕事に区切りをつけて戻れば、確かにアヤは口数が少なくなっていた。
だが、全く喋らないというわけでもない。
食事が済むとアヤはすぐに自分の部屋に下がってしまって、直接話を聞くことが出来ない。
俺はなんでだ、とリビングのソファで妖介を抱き上げ聞いた。
母ではあるが大人の姉崎には判らなくとも、同じ年の弟なら判るかもしれない、そう思ったからだ。
妖介はやはり理由を知っていた。
「あのね、アヤちゃんはね、すきな人ができたんだって」
「ホー」
思わず俺の眉が上がったのを、隣で護を抱いて座っている姉崎が見咎めて、吹き出しそうになっていた。
後で覚えてろ。
「その人ね、あんまりおしゃべりな女の子はきらいなんだって」
「ふーん」
妖介はよく喋る。嘘を言っている感じではない。
まあ、こいつが嘘を言ってるかどうかは色で判るんだけどな。
「だから、アヤちゃんはあんまりしゃべらないようにするって言ってた」
「そいつは、俺が知ってるヤツか?」
「うん」
妖介はそれも知っているらしい。
口止めはされていないのかと思ったが、おそらくしても無駄だろうとアヤは悟っているのだろう。
実際、声は聞こえているだろうにアヤは顔を出さない。
「・・・誰だ?」
アヤと妖介の二人は今年から小学生だ。学校で出会いでもあったか。
妖介はぱちぱちと瞬きして、口を開いた。
「ムサシのおじさん」
「アァ?!」
「ええ?!」
俺は思わず妖介を取り落としそうになり、姉崎は護を落としそうになった。
妖介はある程度予測していたようで、咄嗟に俺の胸元にしっかりしがみつく。
姉崎は慌てて護を抱き直していた。
「妖介、本当なの?」
「うん」
「・・・なんでムサシくんなの?」
「俺に聞くな」
こっちが聞きたいくらいだ。唯一当人以外で知っているのは俺の胸元に変わらずしがみついてる妖介だけ。
「糞ジジイとはそう会ってないだろ」
「うん、でもすきになったんだって」
「ホー?」
俺は妖介の頭を撫でる。
「こないだ日本に行ったときにきいたんだって」
「何を」
「どんな人がすきですか、って」
「ホー」
ヒル魔くん、顔が怖いよ、と隣で姉崎が呟く。
安心しろ、この中で怯えるのはお前一人だ。現に妖介は全く動じない。さすが俺の息子。
「そしたら『うるさいのはこまるな』って言ってた」
「そうだろうな」
ついでに年下の女はアイツの範疇外だったはずだが。
「糞ジジイは俺や姉崎と同じ年だぞ」
「しってるよ」
「ムサシくんとアヤか・・・ま、憧れみたいなものかしら」
姉崎は気分転換にコーヒーでも淹れてくるわ、と護を置いて立ち上がる。
妖介は俺の膝から降りて護の隣に座った。
護の面倒を見る気らしい。このあたり、顔は俺に似たが気質は間違いなく姉崎寄りだ。
そしてアヤは俺寄り。俺はこうと決めたら譲らないところがある。
そのために手段は選ばないし、努力も惜しまない。
しかもアヤには姉崎にも似て変に頑固なところまである。
果たして、子供の戯れ言と片づけていいのだろうか。
姉崎に言えば子供の言うことだ、とあっさり笑い飛ばすだろうが。
俺は何年経っても年を食ったと思えない糞ジジイの顔を思い浮かべる。きっと20年経ったってあいつは老けた顔のまんまだ。
糞ジジイが神妙な顔をして俺の所に挨拶に来る、というのまでついうっかり想像してしまって、俺は甘い物でも喰った後みたいな心地になった。
最悪だ。
思考を巡らす俺の隣で、護をあやしながら妖介が言った。
「おとうさん、アヤは本気だよ」
「・・・そーか」
ますますよろしくない。今電話してやる。時差なんざ気にすることはない。
「アヤはムサシのおじさんとやくそくしたって言ってた」
俺が立ち上がろうとしたが、妖介は服の裾を握って離さない。
「アヤが大きくなるまでまってるってゆびきりしたよ」
ちらりと視線を向けると、妖介はにっこりと笑った。
「やくそくは守るためのものだよね?」
「・・・」
俺は無言でもう一度ソファに腰を下ろし、アヤがいる部屋を見る。
・・・とりあえず、今度日本に帰ったら糞ジジイに一発、銃弾を見舞わせようと心に誓った。
親馬鹿上等。
同じ年の息子なんて、死んでもごめんだ!
***
アヤが無口になった理由を想像してたらこんなことに(笑)
ヒルまも一家初のヒル魔さん視点がすごく楽しかったです♪
俺がそういう顔をしたと聞いた姉崎の父親はそりゃあ喜んだそうだ。
その後に理由を聞いて、やっぱり同じ顔になったらしいが。
アヤはある日を境に、ぱったりと喋らなくなった。
たまたま俺が不在だったので、姉崎はアヤが病気になったと大騒ぎし、俺の携帯はしばらくあいつからの着信とメールばかりで履歴が埋め尽くされた。
あまりに煩いので早々に仕事に区切りをつけて戻れば、確かにアヤは口数が少なくなっていた。
だが、全く喋らないというわけでもない。
食事が済むとアヤはすぐに自分の部屋に下がってしまって、直接話を聞くことが出来ない。
俺はなんでだ、とリビングのソファで妖介を抱き上げ聞いた。
母ではあるが大人の姉崎には判らなくとも、同じ年の弟なら判るかもしれない、そう思ったからだ。
妖介はやはり理由を知っていた。
「あのね、アヤちゃんはね、すきな人ができたんだって」
「ホー」
思わず俺の眉が上がったのを、隣で護を抱いて座っている姉崎が見咎めて、吹き出しそうになっていた。
後で覚えてろ。
「その人ね、あんまりおしゃべりな女の子はきらいなんだって」
「ふーん」
妖介はよく喋る。嘘を言っている感じではない。
まあ、こいつが嘘を言ってるかどうかは色で判るんだけどな。
「だから、アヤちゃんはあんまりしゃべらないようにするって言ってた」
「そいつは、俺が知ってるヤツか?」
「うん」
妖介はそれも知っているらしい。
口止めはされていないのかと思ったが、おそらくしても無駄だろうとアヤは悟っているのだろう。
実際、声は聞こえているだろうにアヤは顔を出さない。
「・・・誰だ?」
アヤと妖介の二人は今年から小学生だ。学校で出会いでもあったか。
妖介はぱちぱちと瞬きして、口を開いた。
「ムサシのおじさん」
「アァ?!」
「ええ?!」
俺は思わず妖介を取り落としそうになり、姉崎は護を落としそうになった。
妖介はある程度予測していたようで、咄嗟に俺の胸元にしっかりしがみつく。
姉崎は慌てて護を抱き直していた。
「妖介、本当なの?」
「うん」
「・・・なんでムサシくんなの?」
「俺に聞くな」
こっちが聞きたいくらいだ。唯一当人以外で知っているのは俺の胸元に変わらずしがみついてる妖介だけ。
「糞ジジイとはそう会ってないだろ」
「うん、でもすきになったんだって」
「ホー?」
俺は妖介の頭を撫でる。
「こないだ日本に行ったときにきいたんだって」
「何を」
「どんな人がすきですか、って」
「ホー」
ヒル魔くん、顔が怖いよ、と隣で姉崎が呟く。
安心しろ、この中で怯えるのはお前一人だ。現に妖介は全く動じない。さすが俺の息子。
「そしたら『うるさいのはこまるな』って言ってた」
「そうだろうな」
ついでに年下の女はアイツの範疇外だったはずだが。
「糞ジジイは俺や姉崎と同じ年だぞ」
「しってるよ」
「ムサシくんとアヤか・・・ま、憧れみたいなものかしら」
姉崎は気分転換にコーヒーでも淹れてくるわ、と護を置いて立ち上がる。
妖介は俺の膝から降りて護の隣に座った。
護の面倒を見る気らしい。このあたり、顔は俺に似たが気質は間違いなく姉崎寄りだ。
そしてアヤは俺寄り。俺はこうと決めたら譲らないところがある。
そのために手段は選ばないし、努力も惜しまない。
しかもアヤには姉崎にも似て変に頑固なところまである。
果たして、子供の戯れ言と片づけていいのだろうか。
姉崎に言えば子供の言うことだ、とあっさり笑い飛ばすだろうが。
俺は何年経っても年を食ったと思えない糞ジジイの顔を思い浮かべる。きっと20年経ったってあいつは老けた顔のまんまだ。
糞ジジイが神妙な顔をして俺の所に挨拶に来る、というのまでついうっかり想像してしまって、俺は甘い物でも喰った後みたいな心地になった。
最悪だ。
思考を巡らす俺の隣で、護をあやしながら妖介が言った。
「おとうさん、アヤは本気だよ」
「・・・そーか」
ますますよろしくない。今電話してやる。時差なんざ気にすることはない。
「アヤはムサシのおじさんとやくそくしたって言ってた」
俺が立ち上がろうとしたが、妖介は服の裾を握って離さない。
「アヤが大きくなるまでまってるってゆびきりしたよ」
ちらりと視線を向けると、妖介はにっこりと笑った。
「やくそくは守るためのものだよね?」
「・・・」
俺は無言でもう一度ソファに腰を下ろし、アヤがいる部屋を見る。
・・・とりあえず、今度日本に帰ったら糞ジジイに一発、銃弾を見舞わせようと心に誓った。
親馬鹿上等。
同じ年の息子なんて、死んでもごめんだ!
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アヤが無口になった理由を想像してたらこんなことに(笑)
ヒルまも一家初のヒル魔さん視点がすごく楽しかったです♪
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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