旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりはよいしょ、と抱えていた荷物を持ち直した。
今日は煮物にしよう。いい筍が手に入った。炊き込みご飯も作って、お吸い物もいい。
ヒル魔くんは和食より洋食派みたいだけど、和食もそれなりに食べる。
派手な色してるから派手な色味のものばかり食べたがるのかしら。
でもやっぱりそれは身体に悪いと思うの。ちゃんと季節のものを食べなきゃ。
結婚して、まだ子供は授かってないけれど、それはこれからのお楽しみだ。
「まもり姉ちゃん」
「あら、セナ! 久しぶり」
鼻歌交じりで家までの道を歩いていたまもりの前に、セナが立っている。
久しぶりに会ったセナは、背も伸びて、体つきもしっかりしていて、精悍な顔立ちだった。
その顔が硬く強ばっている。
「セナも一緒に来る? 筍沢山買ったの。これから煮物とか、色々作ろうと・・・」
「まもり姉ちゃん」
まもりの声を、セナが遮った。低い。あの声変わり前の声、好きだったのになあ、とまもりはぼんやり考える。
「どうしてまだあの家に住んでるの」
「え? やだ、何言ってるの、セナ」
まもりはころころと笑う。
「ヒル魔くん、あの家が気に入ってて棲む場所変える気はない、とまで言ったのよ」
よっぽどお気に入りなんじゃない、となおも笑うまもりの手を、セナが掴んだ。
震えている。
「僕の家に行こう、まもり姉ちゃん。鈴音も待ってる」
「いやよ、何言ってるの、セナ。ヒル魔くんが待ってるの」
「ヒル魔さんは!」
セナがこちらを見る。酷く辛そうな顔で。
なんでそんな顔をするの?
こんな風に手を握った。
「細っせえ」
「ヒル魔くんだって太いとは言えないでしょ」
「いいんだよ俺は」
左手を弄ぶ。左手の薬指も。
その指がするりと指輪を抜き取った。
「あら、やめてよ、もう」
悪戯な手を引き留めようとして―――阻まれた。
「これは俺が貰っていく」
「何言ってるの」
「テメェはまだ若い」
「なによ、同じ年じゃない、なんの冗談―――」
ピッ、ピッ、ピッ・・・
途切れることなく響く音が不意に耳に入った。
ここはどこ?
白い部屋。白い服。白いシーツ。
白に包まれて、何もかもが白くて。
それに熔けそうなくらい白い腕が、私の手を掴んだ。
「細っせえ」
同じ台詞を。
同じように。
けれどあの時とはまるで覇気の違う、弱い声で。
私よりもっと細いかもしれない腕で。
いやよ。
いやよいやよいやよ、嫌―――――――――――――――
「じゃーな」
口調だけはいつも通りで。顔、は。
・・・笑ってた、よう、な。
指輪を握った手は、どうやっても解けなかった。
なによ、それ。
返してよ指輪。
触れた手の冷たさに周囲が白くなる。
何もかもが見えなくなる。
セナが私を連れ去ろうとする。
思い出の中から私を。
酷く辛い外へ。
現実へ。
「ヒル魔さんは、もう」
「言わないで!」
私は、悲鳴を上げ荷物を投げ出して耳を塞ぐ。
この左手に、指輪なんて、ない。
――――――――もう何年も前から、ずっと。
***
というわけで死にネタでした。書く分には得意な分野です。リクエスト消化終了して次の一発目がこれか・・・!
今日は煮物にしよう。いい筍が手に入った。炊き込みご飯も作って、お吸い物もいい。
ヒル魔くんは和食より洋食派みたいだけど、和食もそれなりに食べる。
派手な色してるから派手な色味のものばかり食べたがるのかしら。
でもやっぱりそれは身体に悪いと思うの。ちゃんと季節のものを食べなきゃ。
結婚して、まだ子供は授かってないけれど、それはこれからのお楽しみだ。
「まもり姉ちゃん」
「あら、セナ! 久しぶり」
鼻歌交じりで家までの道を歩いていたまもりの前に、セナが立っている。
久しぶりに会ったセナは、背も伸びて、体つきもしっかりしていて、精悍な顔立ちだった。
その顔が硬く強ばっている。
「セナも一緒に来る? 筍沢山買ったの。これから煮物とか、色々作ろうと・・・」
「まもり姉ちゃん」
まもりの声を、セナが遮った。低い。あの声変わり前の声、好きだったのになあ、とまもりはぼんやり考える。
「どうしてまだあの家に住んでるの」
「え? やだ、何言ってるの、セナ」
まもりはころころと笑う。
「ヒル魔くん、あの家が気に入ってて棲む場所変える気はない、とまで言ったのよ」
よっぽどお気に入りなんじゃない、となおも笑うまもりの手を、セナが掴んだ。
震えている。
「僕の家に行こう、まもり姉ちゃん。鈴音も待ってる」
「いやよ、何言ってるの、セナ。ヒル魔くんが待ってるの」
「ヒル魔さんは!」
セナがこちらを見る。酷く辛そうな顔で。
なんでそんな顔をするの?
こんな風に手を握った。
「細っせえ」
「ヒル魔くんだって太いとは言えないでしょ」
「いいんだよ俺は」
左手を弄ぶ。左手の薬指も。
その指がするりと指輪を抜き取った。
「あら、やめてよ、もう」
悪戯な手を引き留めようとして―――阻まれた。
「これは俺が貰っていく」
「何言ってるの」
「テメェはまだ若い」
「なによ、同じ年じゃない、なんの冗談―――」
ピッ、ピッ、ピッ・・・
途切れることなく響く音が不意に耳に入った。
ここはどこ?
白い部屋。白い服。白いシーツ。
白に包まれて、何もかもが白くて。
それに熔けそうなくらい白い腕が、私の手を掴んだ。
「細っせえ」
同じ台詞を。
同じように。
けれどあの時とはまるで覇気の違う、弱い声で。
私よりもっと細いかもしれない腕で。
いやよ。
いやよいやよいやよ、嫌―――――――――――――――
「じゃーな」
口調だけはいつも通りで。顔、は。
・・・笑ってた、よう、な。
指輪を握った手は、どうやっても解けなかった。
なによ、それ。
返してよ指輪。
触れた手の冷たさに周囲が白くなる。
何もかもが見えなくなる。
セナが私を連れ去ろうとする。
思い出の中から私を。
酷く辛い外へ。
現実へ。
「ヒル魔さんは、もう」
「言わないで!」
私は、悲鳴を上げ荷物を投げ出して耳を塞ぐ。
この左手に、指輪なんて、ない。
――――――――もう何年も前から、ずっと。
***
というわけで死にネタでした。書く分には得意な分野です。リクエスト消化終了して次の一発目がこれか・・・!
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鳥(とり)
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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