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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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保護者来襲!

(十文字とまもりとヒル魔+α)

※4/22アップ『一人にもしてくれない』の続きです
※15000HITお礼企画作品

+ + + + + + + + + +

どうしてこんなことになったんだ・・・。
十文字は針のムシロというものを初めて体感した。

「はい、十文字くん!」
渡される弁当がとても旨いということは知っている。
目の前の女が料理上手だとは幼なじみのセナからよく聞いているし、現在進行形で恩恵を受けているからだ。
姉崎まもり。アメフト部マネージャー兼主務。最近キャプテンと付き合いだした。
「・・・ありがとうございます」
他に言いようがなくて、俺は渋々弁当を受け取る。嬉しそうに笑うマネージャーの顔は屈託無い。
「大丈夫よ、お弁当が今更一つ二つ増えても」
にこにこと笑うマネージャーの手には大きな包み。きっと弁当が二つ入っている。
「糞マネ!! さっさと来い!!」
廊下に響く怒号に、マネージャーは笑顔で応じてそちらに向かう。
恐怖に凍結した廊下も柔らかい笑顔で解凍しながら。
ちらりとこちらを見る我らが悪魔のキャプテンに、俺は顰めっ面を向けることしかできない。
俺は別にマネージャーをどうこうしようという気持ちは全くない。
確かに顔もスタイルも抜群、料理の腕もいいし裁縫の腕もいい。その上気が付いて頭もいい。
これ以上ないくらいの女かもしれない。
だが俺がこの女に抱いていたのは幼い頃から馴染みの薄かった母親への憧れに近い。
だからアイツが睨む必要なんてない。
断じて!
「ハァアア、あいつら相変わらず熱々だなァ」
「ハ、今日のママ弁はなんだ?」
後ろから諸悪の根元がにょっきりと二人揃って顔を出す。
「てーめーえーらー!!」
があっと怒鳴っても、奴らはにやにや笑っているだけだ。
同じライン同士、力も体格も似通っている俺たちに圧倒的な差なんてない。
二人の顔を見ながら、こんな状況に陥った日のことを俺は思い出していた。

そもそもは。
俺がコンビニ弁当に飽きて何か他がないか、とぼやいたのを聞いた二人が発端だった。
「ハァアア? コンビニ弁当以外だとホカ弁かパンくらいなもんだろォ?」
「ハァ、そうなんだよなぁ」
「ハ、家でもコンビニ弁当か?」
「ああ」
「そりゃ身体に悪いよなァ」
「せめて昼飯くらい真っ当なもん食えりゃなあ」
ぼやく十文字の隣で、セナが明らかに手作りと思われる弁当をつついている。普段は購買なので、珍しい。
隣でモン太が恨めしそうに眺めていることから、作り手は明白だ。
「セナ、それ・・・」
「これ? まもり姉ちゃんの手作り」
「ハァアア?! テメェまだマネージャーに弁当もらってんのか?!」
「いやいやいやいや! 普段は違うよ!」
慌ててぶんぶんと頭を振って、その後セナは苦笑する。
「久しぶりにお弁当二人分作ろうとしたら、量が多過ぎちゃったし勿体ないからって」
「あー・・・」
久しぶりの二人分。すぐ判った。
あの悪魔の分だ。アイツも昼飯はコンビニ弁当がほとんどだといつか聞いたことがある。
マネージャーのことだ、つきあい始めたのならそれくらいしそうだ。
俺のその相槌をどう取ったのか、トガと黒木は二人して顔を見合わせる。
そして俺の背後でにやりと悪巧みの顔をしていた、らしい。
とはセナの言葉。
そして放課後、練習が終わって帰ろうとしていたときのことだ。
洗った弁当箱をマネージャーに返しているセナの背後から黒木とトガが口を出したのだ。
「マネージャー! ちょっとお願いがあるんスけどぉ!」
「十文字にも弁当、作ってやれないっスか?」
「なっ!」
慌てる俺を無視して、きょとんとこちらを見るマネージャーに二人は更に続ける。
「実は十文字ィ、こいつの家母ちゃんいないんスよ」
「で、普段の食事はコンビニ弁当三昧で、飽きた飽きたっつーんス」
「母親の愛情に飢えてるんスよ!」
「そうなの・・・」
嫌な予感。俺は二人の口を塞ぎたかったが、2対1じゃ分が悪い。
セナに目配せしたが、セナもなんだか哀れんだような目でこちらを見ている。
・・・ちくしょう!
「俺はそんな・・・」
慌ててフォローしようとした俺の前で、マネージャーは決心したように拳を握ってこちらを見た。
ヤバイ。
これはヤバイ。おい止めろよ、そんな顔―――
「判ったわ! 私のこと、お母さんだと思って甘えていいから!!」
その時にタイミング悪く、悪魔のキャプテンがその場に姿を現した。
「ア?」
最悪だ。
俺は必死になって止めた。下手すりゃ生死に関わるんだからな!
そんなことはいいから、やめてくれ、と何度も言ったのだが、マネージャーは聞き入れてくれなかった。
・・・そういえば相当頑固だったっけ、この人・・・。
がっくりと肩を落とす俺の後ろでは黒木とトガがげらげら笑い倒しているし、セナは引きつった顔でマネージャーとキャプテンの間に立っている。
「・・・ホー」
悪魔の目は笑っていない。俺は明日からの地獄を思って背筋を震わせた。
「十文字くん、寒いの?」
・・・見当違いのマネージャーの一言で俺は更に落ち込んだ。

放課後。
ここのところ二割り増しぐらいで機嫌が悪い悪魔のせいで、俺たちは地獄の特訓を受けていた。
オイオイあいつはもう引退するんだろ、なんで毎日来てて、挙げ句バックスじゃなくてラインの練習に口出しするんだ・・・。
「きっちィー!」
「ハ! いい加減辛ェ!」
諸悪の根元二人も一緒にしごかれているから、多少溜飲を下げる。
日もとっくに沈んでから、今日の練習は終わった。
トガと黒木はセナと用事があるとかで、着替えてすぐ出て行ってしまった。
一人だと思うと急ぐ気も起きない。毎日の疲労が完全に取りきれず溜まっていく感覚。ほぼ精神的な疲れ。
のろのろと着替え、ぐったりとして部室を出ようとする俺の背後から、心配そうな声。
「大丈夫? 十文字くん・・・」
部室にはマネージャーと悪魔だけが残っていた。これもいつもの光景だから気にならない。
俺は無言で手を挙げた。声を出すのも億劫だ。こんなに疲れてるのはデスマーチ以来かもしれねぇ。
ところがそこで無精したのが不味かった。
「そうだ! 今度お家に行ってもいい?」
「ハァ!?」
俺は慌てて振り返る。悪魔のキーを叩く音も止まっている。いいことを思いついた、というマネージャーの背後から絶対零度の冷たい視線が・・・。
「そんなに疲れてたら、家に帰ってもお家のこと、できないでしょ? お弁当もいいけど、お家であったかいご飯があると嬉しいと思うの!」
「いや・・・その・・・」
純粋な好意からのことだとはいえ、男の家でご飯作ってあげる、なんて言ったら普通は誤解する。
俺はそんなつもりはないし、マネージャーもそんなつもりはない。
だが、背後の悪魔はどう思うかくらい考えたらいいんだよこの天然マネージャー!
俺は意を決して言おうと思った。
あんたのそれは、俺にとっちゃありがた迷惑以外の何物でもないと!
その台詞は彼氏である後ろの悪魔にでも言ってやれと! 
が。
「ホー、楽しそうだな、糞マネ」
こちらに歩み寄ってきたヒル魔の無言の圧力で俺はとっさに口を閉ざしてしまった。
「そうよ、十文字くんは息子みたいなものだから!」
胸を張ってマネージャーはそう宣言する。
・・・せめて弟にしてくれ・・・。母親代わり、っつったからか?
俺の内心のツッコミをどう思ったかは知らないが、悪魔はにやあと笑った。
でも。目が。
目が笑ってないんだよテメェ!!
「母親一人が奮闘してもナァ」
「どういう意味よ!」
俺も悪魔の意図を計りかねて、ヤツの顔を見た。
「健全な子供の育成には父親の協力も必要だよナァ?」
「――――!!」
マネージャーの肩を抱き寄せながら、ヒル魔は目が笑っていない笑顔のまま言った。
「俺が父親役をやってやろう。ありがたく思え糞長男!」
アメフト部に入ってから未だかつてこれほど俺が硬直したことはない。
どういうことだ。
なんでこんな話になった?
母親代わりと世話を焼くマネージャー、まあこれはいい。
だが父親役?! バカ言うな、俺の親父は健在だ! ・・・親子仲はともかく。
「ヒル魔くんがお父さん? ふふ、いいわね、それ!」
よくねぇよ。
「今から行って家庭環境を見てやる。つぶさにな」
なんでだよ。
「じゃあ私、準備するわね! 十文字くん、家に食材はある?」
「ねえだろ。じゃなきゃ自炊くらいするだろうし」
「そうか、じゃあ途中で買って行かなきゃ。今帰る準備してくる!」
鼻歌交じりで荷物を取りに行ったマネージャーを呆然と見送る俺の後頭部に冷たい感触。
「さっさと親離れしやがれ。それともこの世と永遠に離れるか?」
それよりももっと冷たい絶対零度の声。 ガチャ、という劇鉄を上げる音。
「―――・・・その選択肢、極端すぎ、だ」
ようやく発せた声は、自分のものとは思えないくらい疲れ切っていた。

***
fumika様リクエスト「まもちゃんが十文字くんの母になる話」でした。 何度書いてもうちの三兄弟たちはまもりちゃんを仲間とか身内としてしか見ないので、恋愛対象にはならないという不思議さにいつも首を傾げます。まもりちゃんには勿論、ヒル魔さん・戸叶・黒木たちにも運の良さでは負ける十文字くん。そんなプチ不幸体質な彼が結構好きですw
リクエストありがとうございましたー!!

fumika様のみお持ち帰り可。

リクエスト内容(作品と合っているかどうか確認のために置きます)以下反転してください。
『黒木たちがからかって「十文字は母の愛に飢えている」といったのを真面目に受け取って心を痛めたまもが「じゃあ私をお母さんだと思って」と言って、甲斐甲斐しく十文字の世話をあれこれしだす。日に日にヒル魔の機嫌が悪くなり出し、十文字は戦々恐々。その上突然ヒル魔が「俺が父親役をやってやる」と言い出し、十文字パニック状態。』まもりの天然っぷりに拍車が掛かっていてこの子頭いいはずなのに、とちょっと申し訳なくなりました(苦笑)

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ついうっかりブログ作成。
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